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奥様は“自分にとってのすべて” 佐藤二朗さん(55)「妻にはのろけるなよって怒られます」

個性派俳優として知られ、歴史番組の司会としても活躍する佐藤二朗さん。演劇ユニット「ちからわざ」を主宰し、脚本家、映画監督としても実力を発揮している彼が書き下ろし、宮沢りえさんらと共演する舞台『そのいのち』が11月に東京、兵庫、宮城で上演されます。インタビュー後半では“負を力に”が自身のテーマだという佐藤さんに、ご家族の話や今後の展望について伺いました。

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佐藤二朗さんprofile 1969年生まれ。愛知県出身。96年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ。数々のドラマ、映画に出演。また脚本家、映画監督としても活動。映画『memo』(08年)と、映画『はるヲうるひと』(21年)で、原作・脚本・監督・出演を務め、『はるヲうるひと』では、韓国の江陵国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞。さらに自身が書いた映画脚本が漫画になり、初の漫画原作となる『名無し』が現在コミプレにて連載中。近年の主な出演作は、映画『変な家』(24年)、映画『あんのこと』(24年)など。12月に映画『聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメンVS 悪魔軍団〜』が公開予定。

 
【INDEX】 自身で立ち上げた演劇ユニット「ちからわざ」
今回の舞台が動き出したきっかけ
役者としても、脚本家としても自分のやりたいことを正直にやっていきたい

自身で立ち上げた演劇ユニット「ちからわざ」

いまや個性派俳優として様々な作品で大活躍している佐藤二朗さんは、愛知県出身で現在55歳。俳優になりたいと思い始めたのは小学生の頃でした。

「ちょっと前までは、小学校4年生の時の学習発表会がきっかけだったというふうに話していたんです。確かに、それもあるとは思うんだけど、考えたらその前から、テレビで山田太一さんとか倉本聰さんのドラマを食い入るように見ていたんですよ。山田さんの作品も、倉本さんの作品も、大人が見るドラマじゃないですか。それを、小学生の時から食い入るように見てたんだから、ちょっとマセたガキですよね。“この時に、このきっかけで役者になろうと思った”というのは覚えてないけど、そういったことも影響しているんじゃないかと思います」

愛知の高校から信州大学経済学部へ進学し、新卒で入社した会社を1日で退職した佐藤さんは、一度帰郷した後、上京して俳優養成所等で芝居の勉強を始めます。けれど、自分には俳優としての適性がないと感じて、小さな広告代理店に再就職。しかしながら俳優になるという夢を捨てきれず、1996年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げしました。

「旗揚げ当初は、僕が作・演出もやっていたんですが、第4回公演から演出は堤 泰之さんにやってもらっています。ただ実は、ちからわざはこの10年、休眠状態だったんです。理由の一つは、全部自腹で公演をやっていたから。2014年に『はるヲうるひと』という作品を再演した時に、下北沢の定員170人くらいの大好きな小屋(劇場)で、思い切って14ステージやったんです。でも、ありがたいことにお客さんはいっぱいだったのに、黒字にはならなかったんです。それまででいちばん少ない赤字ではあったけど、稽古も含めて2ヶ月間、ドラマと映画の話を断って、頭も金髪にしてやって、赤字が10数万円出た。その時は、子供がまだ2歳くらいで、妻からは『次にちからわざをやる時は、少し考えてね』というふうに言われました。それでなんとなく、やらないままになってしまって」

今回の舞台が動き出したきっかけ

今回の舞台の企画が動き出したのは、佐藤さんが脚本を手掛けた関西テレビのドラマ『だんらん』の演出家が、事業部に異動してプロデューサーになり、佐藤さんに連絡をくれたことがきっかけだったそうです。

「その人は僕の脚本を気に入ってくれて、連ドラの企画とかをしょっちゅうくれていたんですけど、連ドラを書く才能は僕にはないと思い、いつも『僕には無理です。僕が書くとしたら、自分が監督をする映画か舞台です』っていうふうに断っていたんです。そしたら、彼がドラマの部署から舞台やイベントをやる部署に異動したその日に、電話を掛けてきてくれたんです。『カンテレと一緒に、ちからわざをやりませんか。好きなことを書いていいですから』って」

ちょうどその頃、佐藤さんが奥様に「これ聴いてみたら」と薦められて聴いたのが、ミュージシャン・中村佳穂さんの「そのいのち」という曲。「この曲が流れる物語を書きたい!」と触発されて執筆したのが、戯曲としては12年ぶりの新作となる今回の作品です。

「いい曲を教えてくれて、妻には感謝しています。そういえば『はるヲうるひと』で、ある重要なシーンについてのヒントをくれたのも妻でした。やっぱり一人で書いていると、どうしても煮詰まっちゃったりすることがあるので、そういう時に違う角度からヒントをもらうと、ふっと道が開けることがあって。まあ、しょっちゅうではないし、箸にも棒にもかからない意見を言われることもありますけど……って、そんなこと言ったら怒られるか(笑)」

愛妻の存在は、「自分にとっての“全て”」だと、佐藤さんはちょっと照れながらも話します。

「もういろんなところで言ってるし、酔っぱらってTwitter(X)にも書いたりするので、妻に『のろけるなよ』って怒られるんですよ(笑)。僕の投稿を読んで『ほっこりしました』ってコメントをくれる方もいらっしゃるけれども、絶対に『けっ!』と思ってる人もいるでしょうから、あんまり言わないようにはしています。でも、自分にとってどういう存在かと聞かれたら、やっぱり“全て”ということになるんですよね。実際、自分が今ここにいるのは、半分ぐらい妻のおかげだとよく言ったりしています。もしかすると半分以上、いや5分の4ぐらいかもしれない(笑)」。

役者としても、脚本家としても自分のやりたいことを正直にやっていきたい

そんな佐藤さんに、役者・クリエイターとしての今後の展望を伺いました。

「ものすごく抽象的なことなんですけど、でも結構本心で言いますと、役者としても、脚本を書く人間としても、なるべく自分のやりたいことを正直にやっていきたいなと思ってます。『これをやりたい』という自分の欲に正直になって、その時やりたいことを本当にやれたら、すごく幸せなことだと思うので、今までもそうしてきたつもりですけれども、この先もそうしていきたいなと。
まだ情報公開はできないんですけど、ありがたいことに今いろんな話をいただいていて、そのどれもが、よくぞ俺のところにそんな話を持ってきてくれた! 是非ともやらせてくれ!と思う話ばかり。楽しみでしかないです。
役者として、やってみたい役ですか? 昔からよく聞かれるんだけど、その時その時に与えられた役を全力でやるということだけですよ。非常にありがたいことに、今は本当にいろんな役をいただけているので、やるとなったら全力でやる、という感じです。

書く仕事のほうも、書きたいと思えるうちは書く。今急に思い出したんですけど、10年以上前にも『書きたいと思っているうちは書き続けようと思います』と言っていて、それから10年経ってもまだ書いている。それでいいんじゃないかなと思います」

これを機に、ちからわざは定期的に公演を打つことになるのかと尋ねると、「いや、どうだろう。ちょっとまだ今回の『そのいのち』の稽古で精一杯ですね」とのこと。

「みんなで力を合わせて『そのいのち』を成功させたいし、楽しみたいですね。ハンディキャップを持ったお二人(佳山明さんと上甲にかさん)に舞台に出てもらうのは大変なことですけど、そういう難しい山のほうが、簡単に登れる山より、なんか楽しいじゃないですか。ぜひともたくさんの人に、負が力へと変わっているところを観ていただけたらなと思います」

佐藤二朗さん書き下ろしの舞台 『そのいのち』

介護ヘルパーとして働く山田里見は、障害を持つ新たな雇い主の相馬花と、花の夫の動物ライター・和清。ある出来事をきっかけに3人の関係は崩れていき……。脚本/佐藤二朗 演出/堤 泰之 出演/宮沢りえ、佳山 明・上甲にか(Wキャスト)、鈴木 楽・工藤凌士(Wキャスト)、福田学人・徐斌(Wキャスト)、日高 響・尾形蓮音(Wキャスト)、今藤洋子、本間 剛、佐藤二朗
11月9日~17日/世田谷パブリックシアター 22日~24日/兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール 28日/東京エレクトロンホール宮城
https://www.ktv.jp/event/sonoinochi/

衣装/ジャケット¥104,500、シャツ¥110,000、パンツ¥71,500、すべてY’s for men(ワイズプレスルーム℡03-5463-1500)

撮影/加治屋圭斗 ヘア・メーク/今野 亜季(A.m Lab)
スタイリスト/鬼塚美代子(Ange) 取材・構成/岡﨑 香

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