株式会社アイネット
~軌道上サービス実現に不可欠な技術において大きな前進~
独立系データセンタープロバイダーであり、宇宙事業にも半世紀近くの経験を有する株式会社アイネット(東証プライム上場、本社:神奈川県横浜市、代表取締役:坂井 満、以下「アイネット」)が直接出資し、衛星開発、地上局運営面でも重要なパートナーである株式会社アストロスケールホールディングス(本社:東京都墨田区、創業者兼 CEO 岡田 光信、以下「アストロスケール」)は、この度宇宙デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」による、模擬デブリ(クライアント)への誘導接近の実証に成功しました。アイネットはデータ解析・ソフトウェア検証・運用支援の実施により、この実証実験をサポートしています。
「ELSA-d」=End-of-Life Services by Astroscale – demonstration
<本件に関するアストロスケールのリリース内容はこちら>
https://astroscale.com/ja/astroscales-elsa-d-mission-successfully-completes-complex-rendezvous-operation/
画像左部分:捕獲機(サービサー) 画像右部分:模擬デブリ(クライアント)
1. 実証実験プロセス
(1)2021年8月25日まで(既報・関連リリース)https://www.inet.co.jp/news/2021/-elsa-d.html
2021 年3月22日にカザフスタンのバイコヌール基地より両衛星を固定した状態で打ち上げて550kmの軌道に投入され、同年8月 25 日に「試験捕獲」の実証に成功しました。
(2)2021 年8 月25以降
1.2022年1月25日から「自律捕獲」の実証運用を開始。サービサーからクライアントを分離後、サービサーへ搭載の Low power radio(LPR)センサを駆使し、自律的な軌道維持アルゴリズムによってクライアン トから 30mの距離を維持することに成功しました。
2.その後サービサーに異常を検出、搭載した8つのスラスタのうち4つが機能喪失していることが判明しました。ミッションの安全のため、異常を解決するまで捕獲の延期を決定しました。いくつかの問題を調査できるよう、サービサーとクライアントの間に安全な距離を確保。 ゆっくりと離れ続けることにより最大約 1,700 km の距離がありました。
3. サービサーによるクライアントへの誘導接近に備えるため、過去 2 か月間、複数回にわたって軌道制御を実施。そして 4月7日、「ELSA-d」 チームは残存するスラスタを駆使し、サービサーを誘導接近させ、クライアントから 159m の距離にてクライアントを探索・検出したことで、GPS と地上からの観測値を用いる絶対航法から、衛星搭載センサーを駆使する相対航法へ切り替えました。この測位手法の切替えは、これまでの 「ELSA-d」 ミッションにおいて最も困難な運用であり、また軌道上サービスの運用において実現することが最も 難しい機能の 1 つとして広く認識されています。
2.実証できたコア技術
現時点で「自律捕獲」の実証の完了には至っていませんが、これまでの 「ELSA-d」 ミッションにおいて、以下を含むデブリ除去のためのコア技術を実証することができました。この知見は、次なる「ELSA-M」(軌道上ミッションを終えた人工衛星を除去する衛星、英国宇宙庁などを主要パートナーに軌道上実証を予定)の設計・開発に活かすことになっています。
(1)自律制御機能と航法誘導制御アルゴリズム
(2)航法センサー群を駆使した閉ループ制御
(3)スラスタによる自律的な接近マヌーバおよび姿勢制御
(4)絶対航法の技術(GPS と地上観測)を活用したサービサーの誘導航法(クライアントから約 1,700km の距離より159mへの接近)
(5)絶対航法から相対航法への切替え(サービサー搭載のLPRセンサを活用)
(6) 1 年以上にわたる軌道上でのミッション運用経験
(7)ドッキングプレートと磁石を用いた捕獲機構
3.今後のミッション遂行
重要な運用の完了後にサービサーを再度クライアントから遠ざけており、数か月間はこのまま安定した距離
を保ちます。この間 「ELSA-d」チームは、クライアントの安全な再捕獲の可能性を含め、ミッションの次の
段階について分析する予定です。
4.宇宙環境の持続可能性確保を目指す世界初の民間企業アストロスケールとの連携によるESG経営実践
https://www.inet.co.jp/news/docs/20200518.pdf
ESG経営の観点からも、アイネットは「ELSA-d」プロジェクトにおいても衛星開発、地上局運営等で
アストロスケールと密接に連携することで、引き続き宇宙環境の持続可能性を追求してまいります。