株式会社ナリス化粧品
曖昧な「感性」を数値化することで、ユーザー満足度の高い製品開発へ
2018年9月25日
化粧品技術者のオリンピックと呼ばれる IFSCC 2018 CONGRESSで発表
ふきとり化粧水使用時の「心地よさ」を数値化する手法を確立
曖昧な「感性」を数値化することで、ユーザー満足度の高い製品開発へ
株式会社ナリス化粧品(代表者:村岡弘義 本社:大阪市福島区)は、9月18日~21日、ドイツ・ミュンヘンで開催されたIFSCC 2018 CONGRESS にて、化粧水(ふきとり化粧水)使用時の心地よさを数値化する手法を確立したことを発表しました。関西学院大学 理工学部/感性価値創造研究センター(センター長:長田典子)との共同研究にて、今まで、アンケート手法など、人の曖昧な感覚に頼っていた化粧品の評価を、潜在的な意識を「見える化」することで数値として計測できる新手法を見出しました。
IFSCC CONGRESSは、2年に1度開催される化粧品技術者のオリンピックとも呼ばれる最新研究結果を発表する最も権威ある世界47ヶ国が参加する化粧品国際学会で、ナリス化粧品は、近年、3回連続参加しています。
■研究の背景
当社は、1937年に初めて「ふきとり化粧水」を発売以来、ふきとり化粧水の研究を積み重ね、現在では国内販売シェア第1位となりました。成分の研究以外にも、使用感触研究を専門とした美容研究チームを有し、「使い続けたい」と思う感覚的な研究にも力を入れて来ました。今回の研究は、ふきとり化粧水の肌に及ぼす変化や影響についてあらゆる視点から研究することで、真に使用者の「感性」に訴えられる化粧品の開発に繋げることを目的としています。
■「肌摩擦感」と「ふきとれた実感」の両立が価値実感に重要であることを証明。
化粧品開発において、「使って心地よい」や「使い続けたい」といった価値を使用者に実感してもらうことが重要です。この意識に至る過程を解明するため、まず、適切な評価語を用いて主観評価実験を行い、使用者の心理
構造を可視化しました。その結果、使用者は、ふきとり化粧水使用時の触感が関与する「肌摩擦感」「ふきとれた実感」の2つの印象を潜在的に重要と捉えていることが判明しました。そこで、この「肌摩擦感」と「ふきとれた実感」の良し悪しを機器を用いた計測で推定できないか検討しました。触感の研究でよく汎用される「摩擦力テスター」を用いて、摩擦係数、そして本研究用に自作した専用装置を用いて、振動量の異なる2つの計測値を比
較しました。
その結果、摩擦係数では、うまく「肌摩擦感」と「ふきとれた実感」を区別
することができませんでした。一方、振動量は、周波数の違いによりこの2つ
の印象を明確に区別することが可能であり、「肌摩擦感」と「ふきとれた実感」
の両立がふきとり化粧水の価値実感に重要であることがわかりました。
今後、この振動量の計測手法を用いることにより、真に「心地よい」と感じる化粧品の開発を行います。
■発表内容
タイトル:(和文)ふきとり時の触感が優れたふきとり化粧水の感性評価
英文名:Sensibility Evaluation of an Exfoliating Lotion with Supreme Tactile Impression during Wiping Motion.
発表者:株式会社 ナリス化粧品 浅井健史・山元裕美
関西学院大学理工学部/-感性価値創造研究センター 山崎陽一・谿雄祐・飛谷謙介・長田典子
※本研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援により行われました。
発表者プロフィール
浅井健史(あさい たけし)
株式会社ナリス化粧品
研究開発部 研究課 新技術創出グループ
― 略歴 ―
立命館大学大学院理工学研究科修了後、株式会社ナリス化粧品に入社。
研究開発一筋で17年目を迎える。一貫してスキンケア製品の開発に従事し、
訪問販売、店頭販売、OEM事業などの販売チャネルを問わず、これまで数多くの製品を市場に送り出してきた。近年は研究業務に携わり、「0(ゼロ)から1(イチ)を生み出す」をモットーに従来にない化粧品を目指し、日夜研究に取り組んでいる。
プライベートでは8歳と5歳の双子の女の子をもつ3児の父。残念ながら趣味のガンプラ作りは数年できていない。
― 職務経歴 ―
■2002年: 入社・研究開発部配属。主にスキンケア製品の開発業務に従事
■2008年: リーダー職
■2014年: 研究フィールドに異動
■2016年: 第18回日本感性工学会大会にて研究発表