Rei Foundation Limited
アナログ写真による旅路と、母国に贈るラブレター 会期:2024年11月2日(土)~17日(日)まで。(場所:みなとみらい線 新高島駅)
ニュージーランドに拠点を置くRei Foundation Limited は、 BankART Station(横浜、新高島駅)にて、2024年11月2日(土)~17日(日)の期間、カンボジア出身のアーティスト、Kim Hak(キム・ハク)による写真展「MY BELOVED」を開催する運びとなりました。
本展は、Kim Hakが生まれ、現在も活動拠点とするカンボジアを、彼自身が10年間に渡り旅をしながら撮影した風景の記録、56点を一同に展示いたします。また、会期初日の11月2日(土)には、本展と同タイトルの写真集も発刊されます。
カンボジアといえば、世界文化遺産アンコールワットや、1970年代の政変とそれに伴う混乱などの歴史が知られています。クメール・ルージュ政権崩壊から2 年後の1981年に生まれたKim Hakは、大きく変化、発展を遂げるカンボジアで育ちました。
本展では、変わり続ける風景の中でKim Hak自身が見出した、自然、人の営み、時の流れによって作られた普遍的で穏やかな美しさを、常に精密にフレーミングし、一切加工しない色でカンボジアの風景の豊かさと多様性を繊細に照らし出された写真作品が紹介されます。
それは、豊かな芸術と文化があり、美しい人々が暮らし、自然に恵まれた土地であるカンボジアのリアルな姿です。
「MY BELOVED」は、Kim Hakが10年に渡り見つめ続けてきた母国、カンボジアに当てたラブレターです。
作家よりメッセージ
カンボジア、それはアンコールワットの神秘や、クメール・ルージュ政権の歴史だけに留まるものではない。 「My Beloved」は、こうした先入観に対する写真家としての私の返答だ。この地は、私の生まれた場所。芸術が息づき、文化が脈打つ。麗しき人々と豊穣な自然が、私に命を吹き込み続ける。
写真に専念する以前、私は旅行業界に身を置き、2003年からの7年間、カンボジアの大地を隅々まで旅していた。その間、アンコール遺跡群を守り伝えるアプサラ・オーソリティ(アンコール地域遺跡整備機構)の考古学チームに2年間身を置き、歴史の息吹を間近に感じ、さらに5年間はプノンペンの旅行代理店で、旅の案内役として人々をさまざまな場所へと導いた。そして2012年、私はカメラを片手にカンボジアの風景を追い求める旅へと出発した。メコン川、果てしなく広がるトンレサップ湖の大地に足を踏み入れ、さらには南の海岸線へと続く土地へ進んだ。時に一人静かに、時に親しい友人や家族と共に、その旅路を分かち合いながら。この旅は、これまでの仕事を通じて培ったカンボジアの深遠なる知識を、私の魂にさらに深く刻み込む貴重な経験となった。
私はカンボジアの移りゆく風景の中に、自然の息遣い、人々の営み、そして時の流れが織りなす永遠の優美さを見つけ出す。変化の中にも、変わらない静謐な美が確かに存在することを知っている。
このプロジェクトに着手した当初から、私は夜明けがカンボジアの新たな時代を象徴すると感じ、柔らかな朝の光に包まれた世界を追い続けた。そこで、撮影はいつも朝早く、夜が静かに明ける瞬間を選んだ。この旅のアルバムは、私自身の内面を映し出す主観的な記録でありながら、極めて正確に切り取られたフレームの中で、エフェクトを施さない自然な色彩が、カンボジアの大地が持つ豊かな表情とその多様性を控えめに、しかし確かに際立たせている。
この作品の完成までに、実に10年の歳月を費やした。その長い時間の中で、私はカンボジアの風景が急速に変貌していく様を目の当たりにした。新たな建設ラッシュや都市化の波が押し寄せ、かつて存在していた場所が消え去り、またはかつての面影を失い、大きく姿を変えていった。
『My Beloved』は、アナログ写真という手法で綴られた、私自身の個人的な旅路であり、同時に私の故郷への深い愛情を込めたラブレターだ。
それぞれの写真には、撮影した場所に対する私の感情や感傷が深く刻まれている。私はただカメラを向けるのではなく、その場に佇み、空気を胸いっぱいに吸い込み、漂う匂いを嗅ぎ、光や風が肌に触れる感覚をじっくりと感じ取っていた。その土地が語りかけてくる声に耳を傾けながら、私はシャッターを切った。
封筒を丁寧に開け、その中からそっと手紙を取り出すように。私の作品は、カンボジアに流れる穏やかな時間と、その豊かな色彩を世界に伝えることを意図している。
この旅は、未来を見つめる新しい世代に希望と夢を届けたいという願いでもある。変わりゆく故郷が、若い世代にとっても希望に満ちた地であり続けるように。
カンボジア、2012 – 2022
Kim Hak
作家プロフィール
Kim Hak | キム・ハク
Photographer, Artist
1981年生まれ。カンボジアの北西部に位置するバッタンバン市出身。
クメール・ルージュ政権崩壊の2 年後に生まれ、両親から当時の記憶を聞いて育つ。クメール・ルージュ政権前後のカンボジアの社会史を記憶・再生・再解釈するプロジェクト「生きる」 をはじめ、土地や建物の記憶や変化する祖国の風景を撮影して記録し、カンボジアの政治的文化的構造に関連するテーマを探求している。
これまで東南アジア、中央アジア、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカで個展を行うほか、世界各地の国際写真フェスティバルや展覧会にも多数参加。「生きる」はカンボジア、オーストラリア、ニュージーランドで制作展示され、アジア、ヨーロッパ、アメリカの都市で紹介されている。
主な展覧会:Photo Quai(パリ、フランス/2011)、World Event Young Artists(ノッティンガム、UK/2012)、OFF_festival Bratislava(ブラチスラバ、スロバキア/2014)、国際写真フェスティバル(シンガポール/2012)、国際マルチメディア・アートフェスティバル(ヤンゴン、ミャンマー/2012)、ASEAN Eye Culture(バンコク、タイ/2014)、フォト・プノンペン(プノンペン、カンボジア/2015, 2017)、アンコール・フォトフェスティバル(シェムリアップ、カンボジア/2014)、フォト・サンジェルマン(パリ、フランス/2017)、オークランド写真フェスティバル(オークランド、ニュージーランド/2017)、第二回フォト・カトマンドゥ(カトマンドゥ、ネパール/2016)、生きる IV(東京・横浜、日本/2022-2023)ほか多数。
ケ・ブランリー美術館「レジデンスプログラム賞」(パリ、フランス/2011)、「ストリームフォト・アジア」2位(バンコク、タイ/2012)、The Advisor紙「 Best of Phnom Penh」ベストアーティスト(プノンペン、カンボジア/2012)。写真集に『UNITY』(2013)、『Alive III』(2018)がある。「Alive III」はオークランド戦争記念博物館に所蔵された。
https://www.kimhak.com/biography/
■ 展示概要
MY BELOVED
会期:2024年11月2日(土)~11月17日(日)
11:00-19:00 会期中無休 入場無料
会場:BankART Station [横浜市西区みなとみらい5-1 新高島駅 B1F ]
https://www.bankart1929.com/venue/station/index.html
読者問い合わせ先→hello@reifoundation.com
主催:Rei Foundation Limited
協力:株式会社テレビマンユニオン、有限会社ルフトツーク、BankART Station
キュレーション:林 琢真
会場音楽:畑中 正人
テクニカルディレクション、会場構成:遠藤 豊
■ 会期中イベント
パフォーマンス & ギャラリートーク ※参加無料
日時:11月2日(土) 14:00~
作家、Kim Hakによるギャラリートークと合わせ、カンボジアより、クメールロバム・ボラン舞踊家のSok Nalys(ソック・ナリス)と クメール古典・現代音楽家のRos Sokunthea (ロス・ソクンテア)をゲストに迎え、パフォーマンスを行います。
■ 書籍情報
タイトル:MY BELOVED
著者:Kim Hak 発行:Rei Foundation Limited
刊行:2024年11月2日 定価:本体価格 10,000円 + 税
ISBN: 978-0-473-72779-6
カンボジアの伝統的な布(クロマー)の布貼り B4変形、上製本、256頁
装丁:林琢真 編集:Rei Foundation Limited
印刷:ライブアートブックス
■ Rei Foundation Limitedについて
Rei Foundation Limited(公益法人レイファンデーション)は、すべての人のウェルビーイングを育む世界というビジョンを持って、2012年に公益法人としてニュージーランドに設立されました。ニュージーランド、日本、トンガ、マラウイ、カンボジアで活動するさまざまなパートナーと連携し、それぞれが自分らしく生き、お互いの価値を認め合うことのできる社会創りに貢献するためのプロジェクトに従事しています。
Rei Foundation Limitedは、この作品が皆さんにとって新たな視点や気づきをもたらすきっかけとなることを願っています。さらに、日本に暮らすカンボジアにルーツを持つ子どもたちが、カンボジアの美しさとそこに宿る誇りを知ることで、新たな「自分らしさ」に目を向け、より自由で力強い生き方を模索するためのきっかけになればと願っています。