今治市役所
~引退競走馬と少年たちが織りなす歴史絵巻~
今回は今治市菊間町で600年以上の伝統を持つ、愛媛県の無形民俗文化財「お供馬の走り込み」をご紹介します。
毎年10月第3週の日曜日、菊間町加茂神社の大祭で行われる「お供馬の走り込み」は、地元の少年たちが華やかに飾られた競走馬に乗り、境内の参道を疾走する国内ではここだけでしか見られない勇壮な伝統行事です。乗り子と神馬が見せる息の合った疾走は圧巻。その舞台裏には、競走馬を引退したサラブレッドと伝統文化を受け継ぐ人々の物語があります。地域の想いが紡いできた「お供馬の走り込み」にぜひご注目ください。
お供馬の走り込み
【日時】 2024年10月20日(日)
午前8時から(午前11時頃まで随時走り込み)
【場所】 今治市菊間町加茂神社(今治市菊間町浜1989)
○行事の詳細はこちらから(今治市ホームページ)
https://www.city.imabari.ehime.jp/event/?a=106
今年は13頭のサラブレッド神馬が登場します!!
お供馬が紡ぐ歴史と伝承
■「勇壮華麗」乗り子と神馬が魅せる神事・お供馬の走り込み
お供馬の走り込みは、「菊間町加茂神社大祭」において、“乗り子”の少年たちが煌びやかに飾られた“神馬”に乗り込み、境内参道を駆け抜ける神事です。乗り子と神馬は御旅所まで神輿にお供し、走り込み神事を行うことから「お供馬」と呼ばれるようになりました。
祭り当日は、3歳から15歳までの乗り子が勇ましい掛け声とともに、神社の参道を一直線に疾走し、最後は神社脇の急坂を一気に駆け上がります。神馬は、かつて競走馬として勝負の世界で生きてきた“サラブレッド”。引退したとはいえ、その走りは迫力満点です。鞍上の乗り子もベテランになると両手を手綱から離して走る離れ業を演じ、観客を沸かせます。
参道の距離は300m。当日は見物客で埋め尽くされます。人馬一体となって駆け抜ける姿を目に焼き付けるもよし!写真を撮るもよし!!興奮で湧き上がるお客さんの歓声と拍手が心に響きます。
■家族の想いを胸に、伝統を受け継ぐ乗り子たち
乗り子の少年たちは、落馬をすれば大怪我をするため、神事の1か月前から練習を重ね、1週間前からは古式にのっとり毎日海で禊ぎを行います。晴れ舞台の日には、家族が沢山の“お守り”を少年の体に取り付けます。頭に巻いた黄色い鉢巻きの中にも、お守りが縫い付けられています。家族の想いを胸に、少年たちは地域の伝統を守ります。子どもは地域の宝物。神馬に乗って参道を駆け上がる少年の想いは、これからも子に孫にと受け継がれていきます。
伝統継承と引退競走馬支援のために、人と馬が共生できる場所を
■地域の伝統と引退馬のキャリアを途切れさせないために(サラブレッドのセカンドキャリア)
戦前の菊間町では100頭以上の農耕馬が飼育され、祭りには“神馬”として参加していました。しかし、農業の機械化により農耕馬は消滅。お供馬に参加する馬が2頭にまで減少した時期もありました。
危機感を抱いた馬主たちは、1975年に馬主と有志による団体「愛馬会(あいばかい)」を結成。引退競走馬を支援している現在のThanks Horse platform(サンクスホースプラットホーム)と連携し、2017年から引退馬の受け皿となりました。馬の寿命は約30年といわれていますが、全国で毎年数千頭の競走馬がケガや成績不振により3歳~6歳の若さで引退しています。地域の伝統を継承するのと同時に、競走馬のセカンドキャリアにも貢献しています。
Thanks Horse platform(サンクスホースプラットホーム)とは
競走馬として成功する馬はわずかです。引退競走馬の不透明な現状を打破するために、Thanks Horse platform(サンクスホースプラットホーム)は立ち上がりました。引退馬をトレーニングすることで、セカンドキャリアへの支援を行いながら、馬の殺処分減少を目指すことを目的としています。引退馬が、乗用馬や人を癒すセラピーホースとして生まれ変わり、人と日本を元気にするプロジェクトです。
■全国のUMAJO(うまじょ)集まれ!(アナタの推しは?)
馬も人間と同じように、性格や能力、個性は様々です。競走馬として結果を出せなかったとしても、セカンドステージで違った能力を開花させることが出来ます。現在菊間町では13頭のお供馬が活躍中ですが、その中でも根強いファンが多いサラブレッドを紹介します。
○名前:メーテルリンク(2013年4月28日生♂)
通算成績13戦2勝。地方競馬場で活躍した後、中央競馬場へ戻ってきましたが、思うような結果が出せず能力的に限界と判断され引退しました。お顔を見てもわかるように性格はおっとりでとにかく臆病者。しかし、お供馬の走り込みになると“馬が違ったように”度胸よく駆け抜けます。ファンはそのギャップがたまらないと言います。
“これが俺This is me”JRA(日本中央競馬会)公式チャンネルではギャップ萌えの姿を見せてくれます。
【引退競走馬】This is me ~お供馬・メーテルリンク(YouTube JRA公式チャンネル)https://www.youtube.com/watch?v=U2y7upwGR0w&t=7s
○名前:チルアウト(2014年3月17日生♀)
通算成績5戦0勝。骨盤骨折に伴う右後肢跛行のため競走馬を引退することとなりました。リラックスすることを「チルする」と言いますが、名前の由来も英語の「CHILL OUT 落ち着く」からとりました。しかし、性格は名前とは真逆で全く落ち着きのない“ジャジャウマ娘”です。黒毛の額に走る白いイナズマ。なかなかの“べっぴんさん”で全国に根強いファンが多く、「チルチル様」とファンレターが届く程の人気者です。
○名前:スケッチブック(2013年2月17日生♂)
通算成績9戦0勝。3歳の頃、右前足に不治の病「屈健炎」を発症し引退しました。愛嬌があり皆に愛される性格で人間の指示も素直に聞いてくれて、どんな人でもいきなり乗馬できると言われる程の心優しい馬です。競走馬時代は負けてばかりで注目されず悔しい思いをしてきましたが、生まれ持った穏やかな性格は沢山の人を癒し、今は皆から必要とされる「第二の馬生」を歩んでいます。
○馬主さんから一言
馬はこれまで、私たち人間と深く結びついてきました。そのため社会性が非常に高く、私たちが愛情を持って接すれば馬も理解をして受け入れてくれます。馬の目は本当に綺麗です。触れ合っていると時間を忘れてしまいます。
■人を癒す“ホースセラピー”(サラブレッドのサードキャリア)
Thanks Horse platform(サンクスホースプラットホーム)との連携により馬の頭数は確保できましたが、個人での飼育負担が大きいという課題は残ったままでした。馬主の高齢化や人手不足により、餌やり・小屋掃除などの世話が困難になってきています。地域ぐるみで馬を飼育する仕組みづくりが必要と考えた「愛馬会」の有志は、2020年に地域住民の協力を得て「特定非営利活動法人 菊馬会(きくまかい)」を設立しました。「菊馬会」は馬も祭りも生き残れる唯一の道との思いで、医療・福祉・スポーツなど幅広い分野での活動を展開しています。サラブレッドも人と同じように、いずれ歳をとり参道を駆け上がれなくなる日が来ます。最後を穏やかに過ごし、人を癒す場所としての「ホースセラピー牧場」をつくることを目的として、クラウドファンディングを行うなどして、人と馬とが寄り添える環境づくりを進めています。
“ホースセラピーとは”
乗馬や馬の世話などのふれあいを通じて、その人に内在するストレスを軽減、あるいは当人に自信を持たせるといった効果が期待できるヨーロッパ発祥のセラピー手法です。馬は動物の中でも特に、情緒水準が高度とされているため人との精神的な交流が可能で、また実際に「乗る」ことが可能なため、身体機能の回復効果が著しく高いと評価されています。
菊馬会が過去に実施したクラウドファンディング
「ホースセラピー」でやさしく馬と寄り添うまちづくり!
https://www.furusato-tax.jp/gcf/2159
関係者のコメント
○特定非営利活動法人 菊馬会 岡本誠篤 代表理事
馬の魅力を最大限に
菊馬会を設立したきっかけは、我がふるさと菊間の伝統文化である「お供馬の走り込み」行事をもっと多くの人達に知っていただき永年継続していきたい思いからでした。
永年継続するためには何が必要不可欠か。それは「馬」「人」「情熱」だと考え、この1つも欠かないよう日々邁進しております。
おかげさまで菊馬会も設立より丸4年が経過することができ、少しずつではありますが「馬」を軸に「人」が集い「情熱」の輪が広まりつつあります。
馬の持つ魅力を最大限に引き出し多くの人の笑顔の輪がもっともっと広まる事で600年の伝統が700年800年と継続していくことを信じ、これからもふるさと菊間を思い精進していきます。
皆様、応援よろしくお願いいたします。
○特定非営利活動法人 菊馬会(ホームページ) https://www.kikumakai.com/
高校生TikTokチームが今治の魅力発信!
■「市役所×高校生 TikTokプロジェクト」
市役所と地元高校生がタッグを組み、TikTokで若者の視点から市の魅力やイベントを発信するプロジェクトを立ち上げました。「お供馬」をテーマにした動画を公開しています。ぜひご覧ください。
○今治市TikTok https://www.tiktok.com/@imabaricity
【関連サイト情報】
○今治市公式ホームページ https://www.city.imabari.ehime.jp/
○今治市戦略的情報発信プロジェクト https://prtimes.jp/story/detail/xJQ2GZFz4EB