日高教(にっこうきょう)
文部科学省への署名提出行動から財務省への要請行動までの報告
今回の署名集約期間が短期間であったにも関わらず、日高教に集結する福島高教組、栃木高教組、神奈川県立高教組、静岡県独立高教組、島根高教組、徳島高教組、愛媛高教組、高知独立高教組、福岡教育連盟、大分県公高教の10単組の協力により6,104筆もの署名が集まりました。署名に協力いただいた皆様に感謝いたします。われわれ教職員の現場の声は、組合活動を通してでしか届けられないということを強く実感しました。教育改革を推進していく上で現場が一つになることを切に望みます。今後とも組合活動へのご理解、ご協力をよろしくお願い致します。
今後、日高教は概算要求から本予算決定までの間に機会がある限り教職調整額13%の実現に向けて、各省庁や各県選出議員に要請行動を実施していきます。
文科省の要求に対し、財務相は「文科省施策全体の歳出・歳入の見直しにより財源を捻出し、追加での予算増額をすることは認めない」という見解を示しました。また、教職調整額13%に対して「根拠に乏しい」と厳しく批判しました。財務省の見解として「教員のなり手不足は給与だけが問題なのか」そして「残業を減らすなど、重要なのは学校における働き方改革であり、給与だけ上げればいいという考えは疑問」という内容が新聞報道各社よりなされ、教職調整額13%の実現が不透明な状況となりました。
教員業務には、教科指導、生徒指導、進路指導、キャリア教育、ICT教育、特別活動の指導、部活動指導、高校魅力化推進活動、地域連携活動などがあります。また、これらの業務を遂行する過程で、生徒対応、保護者対応、地域連携対応、特別支援対応、いじめ対応、不登校対応、貧困およびヤングケアラー対応、危機管理対応等の多岐に渡る対応が求められます。そして、これらの対応は、学級担任業務、分掌業務、授業準備、テスト問題の作成、成績処理、学級会計等の業務をしながらの対応です。
ただ、どれも子どもたちの学びや成長を支える上で大切な業務であるため、何かをやめるわけにはいきません。教員には多くの知識と専門性が求められ、それを駆使して、日本の未来を支える人材の育成を行っています。われわれ教員は、時代の当事者として、子どもたちと日本の未来のために教職という尊い役割をしっかりと人生をかけて最後まで責任もって果たしていかなければいけません。
教職調整額13%の実現は、教育が多様化・複雑化し、多くの知識や高度な専門性を必要とされる現代の教師という仕事の特殊性に対し、教師の尊厳とプライドの対価として支払われるものだと考えます。
教職調整額は、教師の残業代として支払われるものという誤った認識がありますが、時間外勤務の代償は、学校における働き方改革の延長線上に、残業手当としてあるものでなければいけないと考えます。「学校における働き方改革」は、今後も更なる推進を図るべく、関係省庁及び政党へ要請行動を通して強く求めていきます。そして、学校における働き方改革が限界を迎えたときに、残業手当の支給を求めていきます。
令和6年10月18日、日高教は文部科学省において、文科省大臣官房学習基盤審議官・森孝之氏、初等中等教育局財務課課長補佐・斉藤健一氏に調整額13%の実現に向けた署名を提出しました。日高教・小野山享宏中央執行委員長(島根高教組委員長兼務)、愛媛高教組から菊池康太委員長、福島高教組から小桧山淳委員長、神奈川県立高教組から早川良夫委員長、栃木高教組から鯉沼正行書記長(委員長代理)の5名が参加し、提出に併せて教職調整額13%の実現の可能性や各県の状況について懇談を行いました。
懇談では、まず、小野山中央執行委員長が教職調整額13%実現の可能性について説明を求めました。森大臣官房学習基盤審議官から「教職調整額の13%への引上げは、総務省、財務省とも賛同しているわけではないということが前提です。そのため現場の強い願いとしての声があることが重要であり、教職員が一丸となって現場の声を届けて欲しいほしいと考えています。現場の思いに応えるべく、総務省、財務省と交渉しています。」との話がありました。
加えて各委員長から次のような現場の状況説明がありました。
森大臣官房学習基盤審議官は「署名とともに日高教からいただいた現場の声をもって、関係省庁と予算の交渉に臨んでいきたいと思います。「処遇の改善(教職調整額13%を含む)」だけでなく「学校における働き方改革の推進」「定数改善」と併せて教育改革を行っていけるよう取り組んでいきます。」と話されました。
11月5日、日高教は、財務省において、財務省主計局文部科学係主計官補佐・柳川純一氏 他2名に対し、教職調整額13%の実現を含む教育予算の確保について申し入れを行いました。日高教から小野山中央執行委員長(島根高教組委員長兼務)、愛媛高教組から菊池委員長、福島高教組から小桧山委員長、栃木高教組から水沼書記次長、島根高教組から仁科ブロック議長の5名が参加しました。
冒頭、小野山中央執行委員長が前日に報道された公立学校の教員にも残業代を支給するという報道に触れながら「教職調整額の議論に残業代の議論が加わることで教職調整額の実現が遅れたり、消滅したりしてしまうと教員の処遇改善が遅れ、離職と教員をめざす若者の減少が加速し、更なる教員不足を招くのではないかと危惧します。即効性がなければ人材不足にも教育崩壊にも歯止めがかからない状況です。教職調整額13%の実現は『チーム学校』を合い言葉に力を合わせて多様化、多忙化するこの難局に立ち向かっている全教職員に勇気を与えるものです。」と話しました。
この後、栃木高教組・水沼書記次長が教職調整額13%の実現の見通しについて質問しました。これに対して柳川文部科学係主計官補佐から「今、まさに、年末の議論に向けて関係各省で議論を行っている最中であり、明確な回答は差し控えるが、教職調整額増額に関する要望は多く寄せられており、財務省としても要望として受け止めている。」との回答がありました。
島根高教組・仁科ブロック議長が「子育て、介護などで学校に残って仕事をすることが難しく、仕事を持ち帰ってやっている実状もあり、残業代はなじまないのではないか。」福島高教組小桧山委員長が「同じ業務でも教員によって時間のかけ方が違う、多岐に渡る教員の業務をどう管理していくのかという課題もある。」と発言し、残業代の支給は、学校における働き方改革の延長線上にあり、教職員の処遇改善と残業代の議論は別であると言うことを伝えました。
11月5日、財務省との交渉を終え、すぐに議員会館に向かい教職調整額13%の実現に向けて、各県選出の国会議員に対して、教職調整額13%実現に関する要望書を提出しました。ある国会議員は「教員の働き方は、労基法に基づかない過酷な実態であることは現状から把握している。本来ならば、労働に対する対価もきちんと支払っていかなければいけないと感じている。」という話がありました。
時間外勤務に対する残業代の支給は当たり前のことです。この議論は学校における働き方改革とともに今後当然行っていかなければいけません。ただ、教職調整額13%と時間外勤務に対する残業代の支給とは別次元の問題であるということを理解していただかなければいけません。
神奈川県立高教組早川委員長は「教育を専門職とした総合力を持つ人材を求めている、プロ教師としての処遇の見直しが急務である。」と話されました。まさに、処遇改善こそが教職調整額13%の実現です。
各県高教組が回った各県選出の国会議員訪問は20人を超えました。教職調整額に対する日高教の考えを理解していただき、国会議員のみなさんが、財務省との交渉、国会での討論を行っていただけることを切に願います。
日本高等学校教職員組合は高等学校及び中等教育学校、特別支援学校教職員で構成される日本最大の職員組合です。(特別支援学校の幼稚部・小学部・中学部は含みますが、小学校や中学校は含みません)
高校・中等教育学校及び特別支援教育諸学校教職員の勤務条件の維持改善、教育諸条件の整備・充実を主要な課題としてあげています。
こうした方針のもと、文部科学省など関係機関との交渉や関係団体への要請行動など労働組合として働き方改革や処遇改善の活動を展開しています。なお、日高教は公務公共サービス労働組合協議会に加盟して全国の公務員の仲間と広く連携しています。
日高教全国ユニオンとは、個人が日高教(組織)に加盟して一緒に活動する制度です。組合に入ると、教育に関する情報提供を受けたり、文科省をはじめとする省庁や自民党、立憲民主党をはじめとする政党への要請行動に参加したりすることができます。
教職員の権利や制度は与えられたものではなく、労働組合と当局との交渉でつくりあげてきたものです。現場の思いを形にするためには、労働組合を通しての交渉はなくてはならないものです。
教育と向きあい、これからの日本の教育について考え、次の世代に少しでも良い教育環境を残していくために、そして、時代の当事者としての責任を果たしていたくためにも、日高教で一緒に活動しませんか。
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