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【慶應義塾】社会的孤独が動脈硬化を促進する仕組みを解明

慶應義塾

-“絆”によって生まれるオキシトシンの健康メリットの新事実-

慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の高聖淵助教(研究当時)、安西淳専任講師、家田真樹教授らのグループは、内科学教室(腎内分泌代謝)の木内謙一郎准教授、林香教授、先端医科学研究所(脳科学)の田中謙二教授、および自治医科大学の尾仲達史教授らのグループと共に、社会的孤独が脳視床下部でのオキシトシン分泌を減少させ、肝臓における脂質代謝異常を招くことで動脈硬化を促進させる新たな分子機序を発見しました。社会的孤独はヒトにおいて脂質代謝異常や動脈硬化を原因とする虚血性心血管疾患のリスクであることが報告されていましたが、その詳細な機序は明らかになっていませんでした。今回研究チームは社会性のあるマウスでも特に“絆”が深いとされる同胞マウスに限定して実験を行い、社会的孤独ストレスの影響を臓器横断的に検証しました。その結果、これまで推定されていた食事摂取量や体重の増加、交感神経系、視床下部-下垂体-副腎皮質系および炎症の活性化とは無関係に、社会的孤独ストレスが動脈硬化を進行させることを見出しました。またその機序として、脳視床下部で産生されるオキシトシンによる肝細胞を介した脂質代謝制御機構が破綻することが原因であることを明らかにしました。詳細な検討により、オキシトシンは肝細胞において、CYP7A1を介した胆汁酸の生成によるコレステロール排泄とANGPTL4およびANGPTL8を介したリポタンパクリパーゼ(LPL)活性制御による中性脂肪の分解という二つの機能を併せ持ち、全身の脂質代謝を制御していることを見出しました。さらに、オキシトシンを経口補充することで、社会的孤独による脂質代謝異常と動脈硬化が抑制されることを確認しました。

オキシトシンは“幸福ホルモン”として社交性や感情の制御、乳汁分泌、子宮収縮などに関与していることが知られていますが、今回の研究によってオキシトシンの新たな機能だけでなく、オキシトシンが脳と肝臓を結ぶ重要な鍵分子であることも明らかとなりました。現在臨床の現場で主に使用されている脂質異常症の治療薬に胆汁酸生成促進やLPL活性の改善を機序に持つものはありません。オキシトシンが、特に社会的孤独による動脈硬化進展に対する新たな治療標的として期待されるのみならず、社会的つながりや“絆”が動脈硬化の原因となる脂質異常症の予防に重要であることが改めて強く示唆されます。

この研究結果は2024年11月27日(米国時間)にCirculation Research誌で公開されました。

▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/12/16/241216-3.pdf

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