「私たちのCHALLENGE STORY」を担当しているライターの孫 理奈です。
8月号は「私と我が子の不登校戦記」というテーマで、不登校に悩みながらも答えを模索し、前に向かって進んでいる親子を紹介しています。
私は、きょうだい2人が不登校になった早川みどりさんと、「勉強するのは日本でなくていい」と発想を切り替え、お子さんを留学させた三嶋香代さんを取材しました。
早川さんの取材で心に残った言葉は、「不登校の意思表示をしてくれてありがとう」でした。不登校というと、学校側は「学校に来ることがゴール」と考え、親は本音では「学校へ行ってくれたらいいな」と思っています。しかし早川さんが不登校に関する講演会へ出向いた際、「(無理に登校させれば)最悪の場合、死に繋がることもありうる。あなたは戦場に行かせるんですか?」と言われ、それが心に響いたそう。早々に「よそはよそ、うちはうち」と考えを変え、その後は子ども達に「あなたはどうしたい?」「それを選んだらどうなる?」と問いかけ、全て本人に選択させました。現在は2人ともやりたい仕事に向かって生きる力をつけるべく、元気に過ごしています。
「私たちのCHALLENGE STORY」の候補者としてお話を伺っても、結果的にはご紹介できない方もいます。今回は裏話として、ご紹介できなかったCOCOさんのことも少し書きたいと思います。私がCOCOさんを見つけたきっかけはインスタでした。不登校の13歳の娘さんのことや、その母であるご自身の経験を漫画にし、漫画日記として2018年9月からインスタで発信しています。フォロワー数は千名近くいて、コメントを見ると同じようにお子さんが不登校の方も多く、いろいろな方と情報を共有したり共感してもらっている様子がわかります。
https://instagram.com/coco.rainbow17?igshid=yi3ty9c8exhn
娘さんは非常に敏感で繊細な子で「HCS(人いちばい敏感な子)」と診断されています。何度も手を洗うなどの症状も見られ、調べると強迫性障害ということがわかりました。「日常生活に支障が出るほどの強い不安やこだわりに囚われる精神疾患だと知りました。浮かんだ強迫観念を打ち消そうと同じ行動を繰り返します。『もっとちゃんと手を洗わないと』という気持ちがエスカレートして汚いことが耐えられなくなり、学校でトイレに行けず我慢して帰ってきてしまうなど、娘には辛いことがたくさんあったことがわかってきました」とCOCOさんは言います。
「不登校は甘えではないか?」といった問いかけもあるといいます。「頑張り過ぎて体調や心のバランスを崩して登校拒否になるのは、甘えではなく辛さだと思います。そんな状況に陥っているのは子どもに限らず、大人にもたくさんいます。私は、本人の我儘でこうなっているのではないと言いたいです。学校に行かないことを選択して笑顔を取り戻し、自分らしく生きられる子もいる。休むことを否定してはいけない。引き籠るのことにはプラス要素もあると思っています。今、娘は犬に関わる何かがしたい、英語も頑張りたいという夢も持ち、大好きなイラストを描いたりして過ごしています。やりたいことを自由に楽しく夢中でやってほしい。その中で将来に繋がる何かを見つけてくれると信じています。それが勉強する意欲や人と関わってみようと思う気持ちに繋がっていくと思っています。こんなふうに思えるようになったのは、学校に通うことを拒否し、必死に辛さを訴えた子ども達のお陰だと思っています」と仰っていました。子どもの意思表示を受け入れ、子どもを信じて親が腹を括ること。母親だからこそ持てる強さが子どもの幸せな未来を作ると、取材を通して思いました。
学校に通うのが当たり前という価値観が、今回のコロナ禍で崩れました。私事ですが先日、三男のケインを亡くして13年目を迎えました。障がいがあったケインとは、“当たり前ではない日々”に感謝して生きてきたけれど、まさか今のような未来が待っていたとは想像もしませんでした。ケインは免疫不全で人混みでのマスクは欠かせなかったのですが、そのマスクが日常に欠かせない世の中になってしまいましたね。自然災害や政治の問題なども含めて、何が起こるかわからない事態に対応する力を備え、家族の絆や人との繋がりなどを大切にしていきたいと思いました。
「ケイン、元気かな? 今はみんながケインみたいにマスクをするようになったんだよ。ママもするようになって、暑い日はケインはこんなに苦しかったんだって今ごろわかったの。『絶対マスクを取っちゃダメ』って言ったこともあったよね。あのときは本当にごめんね。ケインは『薬を作る人になりたい』と言ってたこともあったよね。今、世界中の人たちが新型コロナウイルスに効く薬が開発されるのを待っているんだよ。またみんなが安心して暮らせる日々が戻るように天国から見守っていてね。ケイン、愛してるよ」。