◯ ~茨城県北ガストロノミープロジェクト~ 「岡倉天心 茶の本 fusion DINNER」
STORYライターの高橋奈央です。これまで経験したことのない幻想的なイベント「茨城県北ガストロノミー」プロジェクト「岡倉天心 茶の本 fusion DINNER」に参加しました。
「ガストロミ―ってなに?」という方も多いと思いますが、私自身も初めての体験だったのでその答えを求め、また今回のディナーの着想のもととなる、日本の思想家であり近代日本美術の発展に大きな功績を残した、岡倉天心の世界を知るために茨城県北へ出向きました。
ディナーの前に訪れたのは岡倉天心が明治38年から夫妻で住んだ天心邸。大小の入江からなる五浦で釣りや読書にいそしんでいたそう。
そもそも岡倉天心(1863-1913)とは、というところをおさらいすると。東京美術学校を創立したり、ボストン美術館中国・日本美術部長就任など美術行政家、運動家として名高く、自筆の「The Book of Tea(茶の本)」は、日本美術や文化を欧米に紹介する内容となっています。のちにディナータイムでも詳しく説明しますが、フュージョンディナーのテーマにもなっています。
ガストロミ―とフュージョンというワードがピンときていない私も、岡倉天心のことを知れば知るほど、ワクワクする気持ちが高まってきました。
天心はここに座りどんなことを考えていたのかな、と天心邸の中から庭を眺めました。青い海と空、それからボストンから持ち帰って種を捲いたといわれる芝生。五浦に居を構え思索と静養の場としながら、横山大観など作家たちを呼び寄せ指導したそうです。
庭を散歩しながら海岸に降りると、崖上に六角堂が見えてきました。天心が思索を巡らせたというここは、自ら設計した六角形の建物。2011年3月11日の東日本大震災で津波の直撃を受け、2012年4月17日に再建されたそうです。
茨城県天心記念五浦美術館に移動。ここから「茨城県北ガストロノミー」プロジェクト「岡倉天心 茶の本 fusion DINNER」のはじまりです。
ウエルカムドリンクは常陸太田市・井坂酒造店の「古代さけ紫しきぶ」泡。古代米を使用した日本酒でワインやブランデーのような旨味でスパークリングのような口当たり。この日のために特別に用意されたオリジナルだそうです。
◯ それではメインイベント「茨城県北ガストロノミー」プロジェクト「岡倉天心 茶の本 fusion DINNER」について
まず、ガストロノミーとは食事・料理と文化の関係を考察すること。古代ギリシャ語の「ガストロス(消化器)」と、「ノモス(学問)」が語源とされるそうです。
今回は、岡倉天心の茶の本からインスパイアーされたお料理の食材が、茨城県北産のもので、それを作る料理人たちはすべて茨城県北にあるレストランや旅館、ヴィラのシェフたち。そして、その会場となったのは、食事を提供するのが難しいといわれた茨城県天心記念五浦美術館でした。美術館では空気中の微生物を検査して数値を管理するそうで、プロジェクトはとても慎重に進められたそうです。
世界中で注目されるガストロノミー、今回は茨城県北の文化芸術と食事の融合、それがこのプロジェクトの醍醐味ということです。では、素晴らしいメニューについて紹介していきましょう。
前菜 六角堂~県北6市町をイメージして~
〈大子〉奥久慈茄子の鰹衣におひしょ
〈北茨城〉太刀魚とあん肝のミルフィーユ蒸し
〈高萩〉高萩フルーツほおずきのフリット
〈日立〉常陸牛のブレザオラ
〈常陸太田〉常陸太田けんちんそばの再構築
〈常陸大宮〉フォアグラの生キャラメルと多田錦柚子チョコレート
アルコールペアリングは久慈群大市町・大子ブルワリーの「ヴァイツェン」と「ラオホ(黒ビール)」
それぞれの素材が活かされ、食感も旨味もそれぞれ違うのでひとつひとつゆっくり味わいました。食事のスタートにふさわしいきめ細かい泡立ちの「ヴァイツェン」と香ばしい味わいの「ラオホ(黒ビール)」は6種の前菜にフィット。
御椀 椀の三段階~海と山と己との出会い~
つぶ貝真薯、六角堂人参、たもぎ茸、花びら茸、印元豆、白髪葱、満月柚子、昆布と鰹出汁
(山田屋旅館 小林康昭シェフ)
個人的には昆布と鰹出汁が立役者となり、キノコ類がとても上品な味わいで、スーッと胃袋を優しく刺激してくれます。
野菜料理 常陸の秋の散歩
毛ガニと常陸野菜、椎茸、蓮根、栗、薩摩芋、牛蒡、蕪、銀杏
(うのしまヴィラ 原田広美シェフ)
ほんのりとした甘みある常陸太田市・岡部合名会社松盛「純米吟醸無濾過生原酒」がペアリングされましたが、素朴なお野菜(野菜の味がしっかりわかるので)と、とても相性が良かったです。
魚料理 波の音
北茨城漁港産鮮魚のフリット
久慈浜産伊勢海老とアワビのコンフィ
(クチールナノルドいばらき佐藤協壱シェフ)
すっきりとした味わいの日立市・椎名酒造店富久心「蔵なま」がペアリング。魚料理の味わいと香りを邪魔しないバランスでそれぞれの良さが際立ちました。
肉料理 シンクロニシティ~意味ある偶然の一致~
奥久慈軍鶏のバロティーヌ、地元香茸のソース、軍鶏レバームース添え、卵黄のソース
(雪村庵 藤良樹シェフ)
常陸太田市・井坂酒造店日の出鶴「純米酒」の燗酒、軍鶏の美味しさとソースや付け合わせとも相性が良く、肉の旨味が引き出されて満足度が増したペアリングでした。
御飯
花びらのどぶ汁雑炊リゾット
大津港産のあんこう、あんこうの辛苦フライチップ
(太信 前田賢一シェフ)
日立市・椎名酒造店富久心「大吟醸」がペアリング。お米と日本酒、最高のマッチング、そして視覚が好奇心をそそり心もお腹も満たされました。
フュージョンデザート 雪
奥久慈大子リンゴのミルフィーユ
里美ヨーグルトと十王の日本蜂蜜のジェラード
(雪村庵&クチーナノルドいばらき
甘さと酸味がきいた一皿。デザートというより、メインの逸品と感じる完成度でした。
お茶の御供
娘来たの餡子トリュフ
常陸太田在来小豆「娘来た」
(うのしまヴィラ)
柔らかな食感と優しい甘さがコースの締め役に。
最後は5人のシェフが登壇。拍手がなりやみませんでした。
(左から)
cucina NORD IBARAKI (クチーナノルド いばらき)
シェフ:佐藤 協壱さん
日立市末広町2-1-32
TEL:0294-32-0369
http://www.nord-ibaraki.jp/
五感で楽しむフュージョンディナー、まさに味覚、視覚、嗅覚とさまざまな自身の感覚を研ぎ澄まし、楽しくいただくことができました。5人のシェフが岡倉天心の「茶の本」からイメージを膨らませメニューを考案し、それぞれの腕を振るって、作られた料理の数々。茨城県北の魅力を食材を通してしることが出来た素晴らしいイベントでした。
詳しくは、茨城県北ガストロノミーウェブサイトで。
(https://kenpoku-gastronomy.jp/)
※新型コロナウイルス感染拡大により、フェアの実施期間、各お店の営業時間・定休日が異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
◯ 茨城まで足を延ばせない、という方も
東京都内でガストロノミーを体験できるところがあります。ぜひ訪れてみてください。
Cocktail Gastronomy KYU YASUI TOKYO(カクテル ガストロノミー キュウ ヤスイ トーキョー)
東京都港区西麻布2-10-4 キャッスルたてはる 1F
TEL:03-6433-5149
営業時間:18:00~26:00 不定休
港区にひっそり佇む隠れ家的バー。野菜から果物、ハーブ、お茶、そしてフォアグラまでもカクテルの材料として使用。シンプルに素材の味わいを感じられるから、モダンキュイジーヌな一杯までオーダーメイドにカクテルを仕立ててくれる。
釜津田(KAMATSUDA)
港区麻布十番2-14-4 エタニティー麻布十番 B1F
電話番号:03-6453-7353
営業時間:
ランチ11:30~15:00
ディナー18:00~20:00
水曜定休
「キッチンはステージ」という意識から、7席のカウンターを中心に客席を構成し、ライブ感で盛り上がるダイニングの迫力も魅力のひとつ。能登の旬の食材からインスピレーションを受け、釜津田ならではのスペシャルなフレンチ料理が人気。気軽に頂けるケータリングプランも利用価値あり。
※時短要請により営業時間を変更している場合がございます。各店にお問合せください。