STORY読者にもいま増えている〝子育てロス=空の巣症候群〟――その原因や克服の仕方について、産業カウンセラーの大野萌子さんに伺いました。
◯ 教えてくれたのは…
日本メンタルアップ 支援機構代表理事 大野萌子さん
産業カウンセラー。企業内カウンセリング、及び社員研修、行政や民間の電話相談カウンセリングをしている。人間関係改善に必須のコミュニケーションスキルや、ストレスマネジメントを得意とする。
〜 子ども優先でなく自分の人生を。子の巣立ちは親も巣立つこと 〜
Q. どういうタイプの人が空の巣症候群になりやすいですか? 最近の傾向はありますか?
A.
自分のことより子ども優先、子育てこそ自己実現、と思われている方が多いように思います。また、人とのコミュニケーションが苦手で、人間関係の幅が狭くなっている人や、ひとりっ子、シングルマザーの方も多い傾向にあります。
要するに、そこにエネルギーが集中してしまっていたがゆえに、親としての役割がなくなることへの恐怖や虚無感を覚えてしまうのです。自分が必要とされている達成感が手放せなくなっている。また、仕事をしている、していないにかかわらず「空の巣症候群」になる方はなります。
専業主婦でなく、お子さんが生まれてからもたくさん資格を取得し、ずっとお仕事を続けていて忙しい。そんな大変な毎日でも、お子さんの結婚が決まった時から、寂しさが強まったという方もいらっしゃいます。ちなみに男性がなりにくいのは、女性に比べ、自分の存在意義を子育てに見出していないからではないでしょうか。
最近は昔に比べ、子どもの人数も少なくなってきているため、養育費もかけられ、さらにエネルギーも注げる。ですので、増えてきているのではないかと感じています。
Q. どのように乗り越えていけばいいですか? 周囲の人たちはどう接するべきですか?
A.
乗り越え方として、子育て中にやりたかったな、と思っていたことをやってみる、何をしていいかわからない人は、学生時代に何をしていたか思い出してみることです。
他に、昔聴いていた音楽や好きだった本を読み返すと感情に訴えてきて「これをしたかったんだった!」と思い出させてくれることも。自分の過去を遡ることで糸口が見えますよ。
自分を必要としてくれる場が欲しいなら、ボランティアやヘルパーでお世話をし、そこでもう一度自分の存在を見出すのもいい。
もし「子育てロス」のような状態の方がいても、周りの方は「時間が経てば解決するよ」などと言わないほうがいいでしょう。時間の感覚は人によって違う。他の人に言われると「所詮はひと事でしょう!」と腹が立つようです。
大野さんからメッセージ
親は、子どもが新しい環境で必死に自分の居場所を作ろうとしているのを妨げないで。子どもに「今日も一人でご飯を食べました」「少し具合が悪いです」など心配をかけ、あわよくば来てくれるかもと、気を引くことは言わない。
親がべったりしすぎると共依存から抜け出せず、お互い苦しい思いをする。子どもが巣立つ時は親も巣立つこと。そこからが新しい人生のスタートです。
取材/東 理恵 ※情報は2021年6月号掲載時のものです。