皆さん、こんにちは。教育ジャーナリストの鳥居りんこです。「子育てを目一杯、楽しもう!実は楽しい【中学受験】」。前回は「学校説明会で個別相談をしてみよう!」という話をしました。
今回は、更にディープにその学校のことを知るために「生徒さんに話しかけてみよう!」ということを語ります。
取材のために中高一貫校にお邪魔することが度々ある私ですが、自慢じゃないですが迷子になること多しです。完全無欠の方向音痴であるためと「地図が読めない女」であるがゆえの哀しき習性。驚くことに、何回もお邪魔している学校さんであっても、素直に行き着ける自信はございません(スマホも持っているんですけどね…泣)。
しかしでございます。何事も良い悪いは表裏一体。迷子になるがために起こる良いことも沢山、経験しております。 それは、ズバリ!生徒さんの様子がよく分かる!ということ。
先日も、ある女子校さんにお邪魔しようと最寄り駅に降り立ったはよいのですが、案の定、街を彷徨い出しました。「このままでは定刻に間に合わない!」と焦り出した私。
その女子校は男女別学校なのですが、その時、たまたま男子部の生徒さんが歩いて来るのを発見したわけです(ワタクシは制服フェチなので、制服には詳しいんですの)。
「おお!こりゃ、ええ!」とばかりに、そこの高校生と思しき青年に「女子部校舎までの道のり」を尋ねました。するとですね、駅に向かって歩いていたはずの彼なのですが「口で説明するよりも、分かりやすいところまでご案内した方が早いので」と言うなり、オバさん(私です)を連れて、道案内をしてくれたんですね。結局、女子部校舎の正門近くまで連れて行ってくれました。
ものすごい好感度!感謝感激です。
「他者のために生きる」という教育方針を貫いている学校なんですが、咄嗟に出た行動が「人に優しく」そのものだということが分かったわけです。(もちろん、このことは後日、その男子部の偉い先生たちにチクりましてよ。「ウチの子たちは女性には特にやさしいです」って笑っておられました(笑))
これとは別にこういうこともございました。
こちらも、ある男子校に行こうとしていた時のことです。何回も行ったことがある学校なのですが、都会にある学校あるあるで、田舎者の私には景色が行く度に変わって見えるわけです。「はて?どこのコンビニを曲がるんだっけ?」って思うほど、コンビニだらけ。
その時は、丁度、その学校が大切にしている奉仕活動の時間だったらしく、歳末助け合いだったかの募金箱を手にしたその学校の生徒さんに遭遇しました。
もちろん、親切に学校までの順路を教えてもらえたのですが、あまりに道案内がうまかったので、ちょっと感動して、そのまましばらく彼らの募金活動を見学しておりました。
街行く人が高確率で自主的に募金に応じていることも驚きでしたが、私同様、彼らに道を聞く人が多いので、危うく「交番かっ!?」ってツッコムところでした。
その時です。老婦人がある場所までの道順を彼らに尋ねたのです。そこは、現在地とは反対側らしく、大きな道路を渡らなければいけないようでした。彼らの1人は少し逡巡したのち、こう行動しました。「分かりにくいので、ご一緒に近くまで行きます!」と。
そして、募金箱を仲間に託し、自分はその老婦人の荷物を持って、ゆっくりと老婦人を先導するような形で横断歩道を渡って行ったのです。 (当然、このことは後刻、その学校の偉い先生方にチクりましたが、校長先生が一番、喜んでおられましたね)
この学校は「思いやりの心を持つ」という教育方針を掲げておりますが、生徒さん自身が自らの考えと行動で教育方針を体現していることが見て取れた事例になります。
このように、生徒さんがその学校そのものであるのです。私はせっかくの中高一貫校ですので、その学び舎が大切にしている“心”に触れながら、数年間を過ごしたであろう高校生に話しかけることをお勧めしています。
高校生ともなると、もうかなりの部分は大人です。どう生きるべきか、自分はどうありたいのか、そういう人としての根幹部分が作られ、ほぼ完成に近付いている時期です。彼らが学校の教育方針の元、どのように日々や将来を考えているのかを聞いてみることで、その学校が目指す「人としての在り方」が理解できると思います。
私のように学校説明会に行く途中の道で、生徒さんを呼び止めることも可能かもしれませんし、学校説明会の時、或いは文化祭、体育祭、オープンスクールなどが再開されたならば、その時に実行してみてください。
コツはYES/NOでは答えられない質問をすること。
「学校は楽しいですか?」ですと「楽しいです」で終了になりがちなので「学校生活のどういうところが楽しいと思いますか?」と聞く方が、生徒さん達からより生の情報がもらえますよ。その際、出来るだけ多くの生徒さんから話を聞いてみると、大体の雰囲気が掴めてきます。
「生徒さんの迷惑になるのでは?」ということを心配される方もおられるかもしれませんね。もちろんTPOはありますが、中高一貫校の生徒さんは学外の訪問者には慣れているんです。意外と、どの学校でも、一生懸命、真面目に素直に来場者をおもてなしするが如く、親切にしてくれます。
「ウチの子が入っても違和感ないなぁ」
「こんな子になって欲しいなぁ」
「なんか雰囲気が好き」
こういう言葉では言い表せない自分の感情をよく観察してみてください。
ちょっとだけ勇気を出して、話しかけてみる。
このことが、未来の我が子を想像するヒントになりますので、頑張ってみて下さいね。
次回は9月5日にお会いしましょう。
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香