Lifestyle男の子の育て方【令和男子のミライ地図を描こう】

【男の子の育て方 対談連載vol.1】「うちの子が競争社会で勝ち抜けなかったらどうするの?」が問題です

男の子は自分と性別が違うからわからない……と感じているSTORYママに向けて、「男の子の教育で気をつけるべきことは何か」について、ともに2人の男児を育てている専門家が語り合います。

【男の子の育て方 対談連載vol.2】「子ども部屋に鍵は必要?」

【男の子の育て方 対談連載vol.3】「あなたは暴力の定義を更新していますか?」

太田さん(以下敬称略) 以前、田中さんとはSTORY本誌およびSTORYwebの「『男の子の子育て』どうする問題。」の企画で、ともに取材を受けました。

「男の子の子育て」どうする問題。

 掲載後、読者の方々からさまざまな感想をいただきました。「日ごろ自分の中で引っかかっていたものが掌握できた」「モヤモヤしていたものが何なのかわかった」といった声が非常に多いんです。

田中さん(以下敬称略) そうでしたか。世代的にはどれぐらいの方々ですか?

太田 私はいま長男が中1、次男が小4ですが、やはり同世代や、あるいはもう少し下のお子さんがいる女性が多かったですね。自分自身も<女らしさ>に縛られてきたという思いはあって、やっぱりそれを次世代にそのまま適用していいとは思ってない人が多い。
でも実際にはもどかしいところがあり、例えば、よくある話で夫との間に温度差がある場合。
夫が息子に対して「男らしくない」とか、「さすがは男だ」と言うので、その表現をやめるように言うと、「お前は女だから、わかってないんだよ、この子は気が弱いだろう。そういうのは男の世界では苦労するんだよ」と……。夫も子どものためを思っていっているから、むやみな否定もしづらいし、その気持ちも分からないではない。
また、夫とは足並みを揃えていても、自分の親、夫の親族が息子に対して気になる声がけをするとか。

田中 そうですね。親族の話ではないのですが、最近こういうことがありました。
うちは5歳と2歳の2人の息子がいるのですが、来年小学生になる息子はいま、食事をたくさん食べることをとても誇らしく思ってるんですよ。ごはんを何膳食べたとか、ラーメンを何人前食べたといって自慢します。僕はたくさん食べること自体悪いことではないと思うし、以前は好き嫌いもあって食が細かったので「たくさん食べていいね」って答えます。思い返すと僕自身も小さい頃にたくさん食べることを褒められた経験がありますから。
でも一方で、知りあいの女性は、親戚のおばさんが知人のお母さんに「〇〇ちゃんは、すごいガッツいてたね」と話してたというんですよ。お母さんも悪気はないのですが、「ガッツいてるって言われちゃったよ。恥ずかしい」みたいなニュアンスで言われたものだから、その女性もちょっと気にしちゃって。そうなるともう普通に人前でご飯を食べることすら遠慮がちにしなきゃいけない。ジェンダーだなと思って……。男の子だったら、他にもそういうことはめちゃめちゃあるなあと思います。

“ジェンダーバイアス親”が再生産されている

田中 さっき太田さんが言っていた<気が弱い>というのは、男の世界では苦労するという話と地続きです。「できる」とか「強い」の延長に「たくさん食べられる」がある。一方で女の子には「人の分も考えて食べなさい」とか「ガツガツ食べちゃダメ」のように周りと協調することが求められる。結局、男は競争で、女の子は協調という感覚が今も残っている。仮にうちの子どもが娘だったとしても、ご飯はいっぱい食べたほうがいいと思うから、僕は褒めました。
子どもが駆けっこ競争している時に「負けるな」とか「男だから頑張れ!」と言うパパはいっぱいいます。男の子は競争して上に立たなきゃいけないし、負けたら悔しがらなきゃいけない、というのは今の幼稚園や保育園でも感じます。

太田 やっぱり親が子供にジェンダーバイアスにまみれたことを言ってますよね。愛情をこめてやっていることだから、当然悪意はないけれど、悪意がなくてもジェンダーバイアスはある、ということは結構あると思います。自分が親に言われてきたジェンダーバイアスがひそむ言葉を無自覚に子どもに言ってしまうような、世代を超えた “ジェンダーバイアスの再生産”が結構あると思います。ママもパパも。「女性がこれを言うの?」というママだってたくさんいます。

田中 <男は強くなければいけない>という……。

太田 そして、<社会的に成功者にならなければならない>
私の子どもは中学受験の機会がなかったのですが、中学受験をすごく頑張ってる教育熱心なママが、「女の子はいいけど、男で勉強できなかったらシャレにならないじゃん」ってさらりと言ったりします。「男は社会の成功レールに外れてはならない」、「男の子はかくあるべし」というプレッシャーが明らかにあると思う。裏返せば、「女の子は勉強はそこそこでも、お金持ちの男を捕まえればなんとかなるかもしれないし」という気持ちがあるんですよね。

田中 そうなると受験先も変わってきますね。

太田 中学受験準備中の友人から、男の子に比べると、女の子の場合は、より難関の学校を狙えるような学力があっても、家から近い学校とか、災害時に帰宅しやすい場所などほかの要素を優先して受験校を決める傾向があると聞きました。
読者からは、受験に失敗した時「いいのよ、女の子はお勉強できなくても大丈夫よ」と「慰められた」話を聞いたことも。友人の女性弁護士が、他の弁護士から「どうして弁護士になったんですか、弁護士の奥さんになればよかったじゃないですか」と無邪気に言われたそうなのですが、こういう「女性はそんなに仕事を頑張らなくてもいい」と翼を折りにくるメッセージは子どもの世界にもあるということですね。子どもの社会も大人が発するジェンダーバイアスにまみれまくっているんです。
大人が自分の中にバイアスを自覚して、それを少しでも減らそうとしながら、同時に子どもにもバイアスを少なくするために心がける――この難しさというのを私は日々感じていました。そして、そんなモヤモヤをまとめてみたら本が1冊ができたという……(笑)。

『これからの男の子たちへ』著・太田啓子

男の子は利他的な生き方に変わっていくべきなのに……

田中 はい。だからぜひ、この連載を通じて太田先生と一緒に考えていきたいと思います。
女の子は「みんなと仲良くしなさい」とされてきたわけだから、これからはもっと利己的になっていい。ディズニープリンセスだって、最近は<自分>を前面に出すプリンセスが多いわけですが、そこにあるのは「女の子は虐げられてきた側なんだから、もっと自分を押し出していい」というメッセージなんです。それはとても明快で分かりやすい。
一方で、男の子はというと、利己的の反対は利他的だから、男の子もこれからは利他的でいいはずなのですが、それこにビビってるのが親なんですよね。

太田 全くそのとおりですよ。そうです。

田中 それでうちの子が競争社会で勝ち抜けなかったらどうするの? みたいな感覚があるわけなんですよ。だから<男の子は利他的に>というメッセージは、とおりが悪くて。

太田 そのとおりですね。

田中 そのジレンマをどう考えていくか。この連載で考えていきたいですね。

太田 私自身、やっぱり女性の抑圧に苦しんでたことがあるから、女の子が男の子と同じようにしなさい、というのは、とてもわかりやすい。それと同じように、男の子が今までの女の子のようにあることも全く抵抗なく受け入れられないといけないんですよね。でも、今の社会を前提にすれば、「らしさ」を求めて、息子に成功してほしい親の気持ちもわかる……。
それに、例えば現状、共働きでもパパの収入のほうが高い家庭が多いでしょうから、世帯収入を下げるリスクを少しでも避けようと思えば、ママが育休を取ったほうが、育休期間については「経済的合理性がある」ということになるなど、今の社会の規範に合わせるなら、女性が子育てをしたほうが経済的な観点以外でもいろいろな意味で「無理が少ない」選択になってしまうところがある。
まだまだ、社会全体が変わってもいない状況で、「無理が少ない」選択をあえてとらずに新しいチャレンジをすべきか。新しいチャレンジという選択をすることで生きやすくなるかわからない現状では、既存の社会に適応するほうが安心だと考えるのも、もっともです。それが親心かもしれません。親が怖がってるということがよくわかります。不安なんですよね。

でもやっぱり、それではいつまで経っても変わらないし、短期的には合理的であるかのように見えても、中長期的には絶対に違うと思います。むしろ今のままではリスクが大きい気がします。親も、変革を恐れない勇気と、社会をいい方向に変えていこうという気概を持たなければいけない――そういうふうに感じるママとパパが増えてほしいという思いが私にはあります。

田中 本当におっしゃるとおりで、まずこの問題は中長期的なビジョンを持たないといけませんね。そのうえで、いまできることから始めていかなければなりません。

取材/東理恵、奥村千草

太田啓子
弁護士。中1と小4男児の母。離婚問題やセクハラ事件などに多く関わる。数々の経験を基にした、ジェンダーにまつわるSNS投稿が反響を呼ぶ。昨年出版した『これからの男の子たちへ』が話題に。

田中俊之
社会学者。大正大学心理社会学部人間科学科准教授。専門は男性学。『男子が10代のうちに考えておきたいこと』など著書多数。男性学の視点から男女とも生きやすい世の中を研究。私生活では5歳と1歳男児の父。
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