行ったことはあるけれど、ただ「きれい!」で終わってませんか? チームラボボーダレス――この新感覚ミュージアムが目指す「共創社会」について、子どもたちと一緒に考えてみます。
【アートで共創教育 連載vol.1】デジタルアートは「インスタ映え」だけじゃなかった!
家で冷静に子どもと振り返ってみた
子どもたちとチームボーダレスを訪れた様子は、前2回の記事で紹介させていただきましたが、帰宅後、“映える写真”を見返しながら、改めて“心に響いたこと”を子どもと一緒に考えてみました。じっくりと思い返すことって大事ですね!
家でも話し合うことで、館内ではわからなかった、お互いの発見の違いが見えてきました。
オトナになって見えなくなった子どもならではの感覚や見方。
逆に、親になったからこそわかるつながりの奥深さ……。
アートって、答えがないぶん、思考が深くなるのかも!
私がわからなかった発見。子どもが教えてくれたのが、まずコチラ。
娘「あの滝の滑り台のとこね、座った時のデコボコが気持ち良いんだよ」
私「滝は滑り台じゃないから(笑)。斜面で滑って、滑り台みたいになっただけ! デコボコか……」
おぉ! そんなことも感じていたんだ。確かに「岩」の部分にあった、デコボコ。
滝が流れる岩なので、カクカクしていないんです。水の流れで角がとれ、丸くなっているのも考えられた岩でした。座った時に、妙にフィット感がありました。
カラフルな花や澄んだ水のビジュアルだけに、心を奪われていてはいけないんだなと。子どもはカラダが小さいために、少しのデコボコでも感じ取れる。
そして、滑り台が楽しいのは滑るからだけでなく、“ナナメ”というカラダ全体の感覚が楽しいから。
ですが、ここでは、滑り台のように滑らないで下さいね。滑るものではないので、安全面において、危険を伴います。滑り台は別のスペースにあります ↓ ので、そこで楽しんで下さいね。(運動の森にあるその場所については、別の機会でぜひご紹介したいと思います!)
オトナは、まっすぐだったり、平らだったり、整理されて安定したものを好みます。
でも子どもたちは、不安定なものと接する体験を妙に楽しかったものとして記憶しているんです。「デコボコだから気持ちいい」。そんな感覚を持っているんですね。
子どもたちは〈カラダ全体が触覚みたいなものなんだ!〉と感じました。
オトナにはわからなかったことが見えてくる
思い出してみると、私にとって印象的だったのは、先ほどの滝のスペースの反対側の壁でのこと。
ここでは壁に漢字が降ってきます。
子どもたちに、いい漢字の勉強になるなぁと思っておりました。
「花」の漢字を触ると「花」の絵に変化し、「嵐」の漢字に触れると嵐に変化する。
嵐、蝶、金、識、火……いろいろですが、勉強になることはそれだけではなかった!
双子の娘と息子「疲れた~」「写真撮って」
漢字に飽きたのか、ボーッと向こう側を眺め始めました。
そこで、私もその傍で横になって座ってみると……。
素晴らしい!
滝の全景が、視点を変えた光景で広がっていた!
即座に2人の写真と、滝の全景を撮影!
そうなんです。
子どもの目線になってみると、世界が広がります。
アート作品というと、オトナはとにかく近づいて観賞しようとしますよね?
絵画展では下に座って反対側から眺めて写真撮る……なんて、ないですよね。
子どもたちに教えられました。大人の目線では体験できない世界を。
アートに言葉はいらない。言葉で説明しなくていい。自分の感覚がすべて。
――子どもたちを見ていて、そう思いました。
思ったこと、考えて行動したこと、考えなくても自然にカラダが動いちゃったこと、やらかしちゃったこと。
それは、ひとりひとり違うもの。
答えがないものに正解を求めない。
そこに気持ち良く生きてゆくためのヒントがあるかもしれない。
私「どうだった?」
娘「混沌としてる。情報量の多さ、すごい(笑)」
私「『混沌』って!(笑)」
思わず、そんな言葉を知っていたことも笑いましたが、デジタルネイティブな世代だからこそ、情報量の多さに惑わされそうになることがあるのかもしれません。
毎日のようにYouTubeを見てる子どもたち。
でも、そこから自分に必要な情報を学び取って感じ取ってほしい。
ウソの情報に惑わされないで自分の体験や感覚、直感でいいので信じてほしいです。
すべてのものはつながっているんだ。
アートを通して自分が主役になれる!
光りと闇、たまには目をつぶって音や雰囲気だけを楽しんだり、
感覚を堪能することも大事。なんだか「無」になれる。
「無」になれば、アタマがスッと開放的に楽になる。
これこそがアートから学べることなのかと。
ここであわよくば漢字を覚えさせよう、と思うのは邪道だったかしら(笑)。
私自身、絵を描くことも苦手で美術も「1」だったけど、感覚で生きてたから、アートを見るのが昔から好きだったのかも……。
そう。子どものためにと思ってチームラボボーダレスに来たのに、結局は、私自身が見つめ直さなければならないことが詰まってる。
思春期の子育てって、そういうものなのかも……。
次回は、そんなチームラボボーダレスを作り上げている人に、この新感覚ミュージアムに託した思いを語ってもらいます!
【アートで共創教育 連載vol.1】デジタルアートは「インスタ映え」だけじゃなかった!
【アートで共創教育 連載vol.2】触れたり近づいたりすることで子ども自身が作品に関わる
撮影/西 あかり 取材/東 理恵
https://borderless.teamlab.art/jp/