新型コロナウイルス感染症の流行拡大が注目されるなか、今年も花粉症の季節が到来。今年度の花粉の飛散量は昨年の1.5倍という予想も!コロナ禍ならではの花粉症対策をご紹介します。
●実は盲点だらけ? コロナ禍での花粉対策
コロナ禍によるストレスの多い昨今。そんな中、今年も花粉の季節がやってきますが、例年よりマスクをしっかりしているのに、花粉症の症状に悩まされる人や経験したことのない症状を訴える人が増えているようです。
そこでコロナ禍における花粉対策について、私たちが見逃している「盲点」を、みなと芝クリニックの川本徹先生に伺いました。
川本 徹先生 プロフィール
みなと芝クリニック・院長。筑波大学医学専門学群卒業、筑波大学大学院医学研究科修了。「“メスをとれる内科”たる外科医になれ」の教えの元、筑波大学附属病院の消化器外科で、内科医よりも内科的な外科医をめざす。筑波大学臨床医学系外科(消化器)講師、米国テキサス大学MDアンダーソン癌センター客員講師歴任後、現東京女子医科大学消化器病センター外科非常勤講師、東邦大学医学部客員講師。2010年みなと芝クリニック開院。消化器系をメインに内科から外科一般に加え、皮膚科、整形外科、肛門外科まで、幅広い診療を行なっている。日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医。
盲点① コロナ禍ストレスで、花粉により過敏な状態に!
コロナ禍で、手洗いやうがい、マスク着用などの対策を皆さん非常によくされていると思います。これらの対策は、花粉症対策としても良いことばかりのはずなのですが、花粉症の患者数が劇的に減ったという印象はありません。むしろ、コロナ禍で花粉症の症状が悪化しているケースが見られます。例えば、元々花粉症で顔周りがかゆくなりやすい方は、マスクを長時間着用することによって肌が過敏になり、いつもよりかゆみがひどくなってしまうことがあります。
また、コロナ禍での精神的なストレスから、あらゆる刺激に対して普段より過敏になってしまっている方が増えています。これまでの花粉症に加えて、さらに違うアレルギーの症状(違う種類の花粉に対する花粉症も含む)を発症する例が増えました。それから、便秘や下痢などを訴える人が多いことにも注目しています。腸も過敏になっているのです。このように、花粉症だけでなく、複数の悩みを並行して訴える方が増えています。これはコロナ禍での環境の変化によるストレスが影響しているのだと思いますし、家庭での時間が増えることで、飲酒や間食の量が増える、食事や睡眠の時間が不規則になるなどの行動パターンの変化も影響していると考えています。
盲点② マスク着用による口呼吸で、アレルゲンをダイレクトに吸い込んでいる!?
マスクを着用していると、息苦しさを感じて口呼吸になりがちです。鼻から息を吸い込むのであれば、花粉やホコリなどの異物は、繊毛や粘液によりある程度ブロックされます。しかし、口からの呼吸だとアレルゲン(花粉などのアレルギーの原因となる物質)がダイレクトに体内に入ってしまいます。体内に入ったアレルゲンは、腸でリンパ球と反応してアレルギー反応を起します。
実はあらゆるアレルギーが発症する場所は、腸だということがわかっています。ですから、なるべく腸までアレルゲンが届かないようにすることが大切です。アレルゲンをダイレクトに吸い込む量を最小限にすることは有効な対策です。もう一つ重要なことは、腸内環境を整えておくということです。そのために食事にも気を配ってください。
盲点③ 不安、ストレス、睡眠不足で免疫バランスが崩れる!
コロナ禍で、なんだか不安になる、ストレスを感じるという方は多いでしょう。それに伴って、よく眠れないと訴える方がとても増えています。長期間巣ごもりやテレワークが続いているのですから、当然です。子どもにも同様の症状が増えています。これは自律神経の乱れによるもので、このような状態が続くと、免疫システムのバランスが悪くなり、花粉症などのアレルギー症状も悪化してしまうのです。
●コロナ禍での花粉症対策
対策① ストレスマネジメントで自律神経を整えよう!
自律神経を整えることで花粉症などのアレルギーの症状は改善します。それにはまず生活習慣を整えること。家にこもりがちだと思ったら、できるだけ意識して体を動かすこと。そしてできる範囲で人とコミュニケーションをとるなどのストレスマネジメントを心がけましょう。自律神経が整うと睡眠の質もよくなり、免疫バランスも整います。
対策② 口から花粉を吸い込まない&早めの対策を
花粉症対策では、アレルギーの元となる花粉を、なるべく吸い込まないようにすることが基本です。コロナ禍で定期的に換気をするときも、必ずマスクをしっかり着用して行いましょう。できるだけなるべく口から吸い込まないよう鼻呼吸を意識するようにしましょう。また、症状が出てからではなく、早くから取り組むことで効果が期待できます。年間を通じて行うこと(食事、睡眠、運動)に加え、症状を抑えるために早めに薬を飲み始めるなどの対策を併用しましょう。
対策③ 免疫システムのかなめ、腸を整える食事を!
アレルギーの原因は腸内で作られます。ですから腸内環境を整える食事を心がけることは、花粉症対策として大変有効です。腸に良い働きをする菌(プロバイオティクス)をヨーグルトなどの発酵食品でとり、それらの働きを助ける食品(プレバイオティクス)も一緒にとるように心がけましょう。水溶性食物繊維の多いもの(オクラ、山芋、海藻、ごぼうに含まれる)、フラクトオリゴ糖(新玉ねぎ、トマト、バナナに含まれる)などがおすすめです。