晩婚化や女性の社会進出により、40代で「親になる」選択をする人が増えている昨今。出産に関するリスクの高さや体力低下に伴う子育ての不安よりも「どう家族をつくるか」という考えが、彼女たちの心を悩ませています。今回は、元プロテニスプレーヤーの杉山 愛さんにお話を伺いました。
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杉山 愛さん(46歳・神奈川県在住) 元プロテニスプレーヤー
不妊治療で第一子を出産したのち
第二子は自然妊娠。
どんな壁にぶつかっても
夫婦で子育てを楽しんでゆきたい
第二子は自然妊娠。
どんな壁にぶつかっても
夫婦で子育てを楽しんでゆきたい
10代から30代前半まで、プロテニスプレーヤーとして世界を舞台に第一線を駆け抜けてきた杉山愛さん。選手引退後、36歳で走(そう)さんと結婚。3年間の不妊治療を経て、40歳で第一子を出産し、約6年経過した今年、46歳で第二子を出産されました。
「不妊治療を行いながら流産も経験し、授かった第一子の妊娠は、大きな喜びでした。そして45歳での予想もしていなかった自然妊娠。喜びよりも驚きが大きかったです。本当に? と騒いでいるのもつかの間、強烈なつわりが始まり、本当だと実感しました(笑)」。
何かとデメリットばかりがクローズアップされがちな高齢出産。しかし、杉山さんと夫の走さんは徹底的に〝話し合う”ことでデメリットを楽しむことへと変化させていったそう。
中でも「つわりメーター」は走さんが生み出した良案の一つ。「妊娠初期と後期に襲ってきたつわりが重く、コロナ禍ということもあり、不安も募りました。初期は気持ち悪さと眠気、そして後期には胃酸が逆流して食道に炎症を起こす逆流性食道炎のような症状に襲われ、喉が枯れてしまうほど。そんな苦しい状態を夫婦で共有できるよう数値で表したんです」。
「話すのも辛いとき、彼女の表情や行動から状態を探るのは至難の業。そこで楽な状態は数字の1、数字が多くなればなるほど、ひどい状態を表してもらいました。『今いくつ?』の短い質問に対して7や8だったら、横になりたいくらいぐったり。2だったら『気分転換にスーパーにでも行こう!』と誘える状態。僕からしたら見た目は2くらいなのに、確認したら7という回答も。思いのほか点数が高く、『え~そうなんだ!』と驚いたこともありました(笑)」と、走さんは語ります。
◇ 高齢出産にはリスクがある。でもプラスの面にも目を向けたい
また、子どもが産まれる前に、夜の〝授乳シフト制”や家事負担、何をどうするべきかについても、とことん話し合ったそう。
「夫婦ともに、自分がやるべきこと、できることがわかっていればスムーズに動けます。高齢出産は、勢いだけではやり通せないと思いますが、代わりに年齢を重ねたからこその余裕があります。何かに迷ったときも焦らず、解決策を見出しやすいというのも利点かもしれません」。
しかし、年齢を重ねたからこその余裕はあるものの、医学的エビデンスにより紐づけられたリスクだけは自分たちで解決することはできません。その現実にどう対応するか。起こりうる可能性に対しても、2人は話し合いを重ねたそう。
「妊娠した喜びと同時に、リスクを考えなければならないというのは、高齢出産では誰もが避けられないこと。お腹に宿った赤ちゃんを万全の準備で迎えるために出生前診断の検査も受診。そして、こういうことがあったときには何が必要なのか、徹底的に話し合いました」。
お互いの考えを〝杉山家の考え”としてまとめることは、問題があったときに2人で乗り越えるためには、必要なことでした。
また、サポーターは多ければ多いほうがいいと語る杉山さん。「わが家も出産前から親や友人などに〝サポーター要請”を出していました。今は〝チーム杉山”体制で子育てができていて心強いです。もし若かったら、自分たち2人が頑張ればいい、と無理をしたかもしれない。でも、年齢を重ねた今は肩の力が抜けて、人に弱さを見せられるように。その状態がいい方向に働いているような気がします」。
かつて言われた高齢出産のマイナス面。しかし、実際、産院でも杉山さんの周りにも同年代のパパやママは多く存在するそう。「女性が産むタイミングや、どういう形で子どもを授かるかの選択肢が広がっている今、もっとプラスの面に目を向けるべきではないのか」と杉山さんは言います。
「プロテニスプレーヤーとして〝自分のため”に生きてきた20代、30代。母をはじめ周りの人が自分を全力で支えてくれて、それを受けて結果を出す、という人生でした。そろそろ私が誰かの人生を支えたい……と思っていた頃に夫という存在ができて結婚し、そして子どもを2人も授かることができました。今は誰かのために尽くす幸福感を嚙みしめています」。
撮影/BOCO スタイリスト/ミズグチクミコ 取材/上原亜希子 衣装協力/レスピーギ ※情報は2022年8月号掲載時のものです。