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【男の子の育て方 対談連載vol.14】例えば「さん」付けを徹底する――私たちは自分の親が教えてくれなかったことに取り組まなければならない

男の子は自分と性別が違うからわからない……と感じているSTORYママに向けて、「男の子の教育で気をつけるべきことは何か」について、ともに2人の男児を育てている専門家が語り合います。

【男の子の育て方 対談連載vol.13】じゃれ合って股間を触るのは、男の子だったらOKですか?

小学校では男女にかかわらず「さん」付けで統一するようになってきた

田中さん(以下敬称略) 今、うちの長男は小学校1年生で、「さん」呼びを徹底しているんですよ。友達同士では男女の関係なく「~さん」と呼び合っていて、いいことだと感じました。

太田さん(以下敬称略) 意識的に「さん」と呼ぶことは本当にいいことですよね。学校の先生も、うちの息子に「さん」付けで呼んでくださっています。

ライター 東 でも、保育園や幼稚園では、まだ「ちゃん」と「くん」が多いです。どこから「さん」で呼んでいくのかという問題にもなってきますよね。

太田 たかが呼び方、されど呼び方、ですからね。ジェンダーレスでニュートラルな名前も工夫したいところですよね。
そういえば、あだ名が禁止の学校もあるとニュースで聞きました。「さん」呼びにしてもあだ名禁止にしても、「なぜそうすることがよいといえるのか」を大人が子どもに丁寧に説明し、子どもが自分の頭で考えられるようにすることが大事だと思います。

編集 川原田 10年~15年ぐらい前は、女性の新入社員が入ってくると「~ちゃん」と呼んだほうが親しみが込もっていていい、という風潮があったような気がします。でも最近は、呼ばれる側としては、どうなんでしょう……。

太田 それを聞いて、25年ほど前のことを思い出しました。
私が大学生の頃にしていた塾講師のアルバイト。そこの室長先生が、女性のアルバイトは「啓子ちゃん」と下の名前+「ちゃん」で男の子は「山田くん」と苗字+「くん」。必ずそう呼ぶので、露骨でイヤでした。下の名前で呼ばれたくないというより、「女性だけそうされる」のが嫌だったんですよね。
呼び方は、関係性を言葉で位置づけしているのだと思います。
うちの子どもたちがいた学童クラブでは、「年上を呼び捨てせず『くん」付けにする』、というルールがありました。でも小さい頃から、“年上を敬え”というのを刷り込まないで、と思っていて……。

田中 不必要な区別を丁寧にチェックして、なくしていくというのは、これから男の子を育てていくのに重要なことだと思います。

東 私の子どもの小学校でも「さん」で呼ぶようになっているのですが、先生だって仲良くなってきた子どもには、男女関係なく「呼び捨て」で呼んでもいいのでは? と思うのですが……。

太田 教師と生徒の関係は対等ではないでしょうが、教師もなるべく対等であろうと意識したほうが良いと思います。先生に対しても呼び捨てで全然OK! という空気があるならまだしも、そうでないのならやはり少し気になります。

男の子だってお風呂でプライベートゾーンを隠すことは大切

東 先日、息子たちの林間学校があったのですが、コロナ禍ということもあって、お風呂は入れ替え制で1グループ10分ぐらいで入らないといけなかったらしいんです。
「グループで一緒にお風呂に入る時どうだった?」と聞いたら、みんな恥ずかしかったみたいでタオルで隠して入っていたそうです。タオルで前を隠して、洗う時だけパッと脱いで洗って、すぐにまたタオルで隠して出ていくような感じ。昔は〈タオルで隠さずに堂々と入るのが男だ!〉みたいな風潮がありましたよね。

太田 息子も以前、修学旅行だったけど何も言っていなかったな・・・・・・。
でも男性同士でも、お互いのプライベートゾーンを尊重することは大切だと思います。じろじろ見たりしないんだよ、と。

田中 股間を隠すようになった風潮はいいことではないでしょうか。シンプルにいい話だと思います。
前回も〈じゃれ合って股間を触るのは男の子だったらOKなのか?〉について話しましたが、男の子でも隠して守る配慮が必要です。小学校高学年でそれができているようだったらとてもいい話です。

太田 ちらっと偶然見えるのはしょうがないでしょうが、それ以前に適切な距離感を持つことが大事なのではないでしょうか。

田中 体が発達する期間ですから、他が気になってしまうのは仕方がないとは思いますが、やっぱりお互いに配慮し合うべきですね。 

太田 気になっていることを、言葉や行動でどう表すかですよね。
例えば「お前、毛が生えてるじゃん!」とか言わずに、心にとどめておけばいいだけです。
それでも男子の間のいじめとして、パンツをおろすようなことが未だにあります。なぜそういうことをしてはいけないのかしっかり教えないといけないのですが、できてないですよね。ちゃんとした性教育は必要ですよね。いつもここに戻ってきてしまいますが・・・・・・。

東 浣腸したり、パンツをおろすようなことをする男の子は、親がもうちょっと教育すべきなのでしょうか。

太田 家庭での教育は大きいと思います。でもどの家庭でも十分にできるわけではないし、学校とか地域とか、いろいろなところで性教育が大事ですね。
6月にAV出演被害防止・救済法が成立しましたが、この法律には、「出演 に係る被害 が一度発生した場合においてはその被害の回復を図ることが著しく困難となることに鑑み」、学校や、地域、家庭などで、AV出演被害発生の未然防止のための教育活動の充実を図る、などという条文があるんですよ(19条)。大事なことですが、包括的性教育が全然普及していない現在の社会で、AV出演被害防止の教育だけが上手くいくはずはないと思います。AV出演被害がどれだけ人の尊厳を傷つけるかを考えることは大事だし、救済策ができたことも周知されたほうがいいのではありますが。

田中 性の尊厳に関わることですし、親子できちんと話ができるといいですね。

東 親が照れないで説明できるようにならないといけないですね。

太田 はい。親は、ついニヤニヤしたり、ごまかそうとしたり、ひるんだりしてしまいがちです。が、「触れてはいけない質問だ」と子どもに感じさせてしまうと、その後、性に関する質問をしてくれなくなってしまうと思います。親の動揺を子どもは覚えているものです。

だから〈子どもから、こういう質問が来たらこう返す〉というように、ある程度の予習をして心構えをしておいたほうがいいかもしれません。質問する立場、答える立場になって、パートナー同士で練習してもいいかと思います。自分がうまく質問に答えられない場合は、無理にその場で答えようと慌てず、「それは大事な話だから、ママがあとでゆっくり説明したい。覚えておいてね」だっていいと思います。
くれぐれも「まだ早いから!」とか「変なこと聞かないで!」と答えないように。そう言ってしまうと、子どもが〈もう聞けない・・・・・・〉とあきらめてしまうから。

田中 僕ら自身が「そんなこと聞かないの!」と親に言われた世代なので、訓練されていないのは当然です。でも、その負の結果、自分たちがどう生きているか、苦労していることはないか、ということです。
その負の連鎖を次世代では止めなくてはいけない。
親が教えてくれなかった、学校が教えてくれなかった、社会が口をつぐんできた、という結果が今ですから。

太田 これは私たち世代の試練ですよね。
全国にいる同士のみなさんに頑張ろう! と言いたい!
親がやってこなかったこと、隠して誤魔化してきたことを言わなければいけない。
今までの参考例がないから、私たちが編み出してチャレンジするしかないのです。たどたどしくても大丈夫!と開き直って説明していくことが大事です。
今は動画などの性教育コンテンツも充実しているので、それらを上手に活用するのもいいと思います。頑張りましょう!

取材/東 理恵

太田啓子
弁護士。中2と小5男児の母。離婚問題や相続問題、セクハラ・パワハラ事件などに多く関わる。数々の経験を基にした、ジェンダーにまつわるSNS投稿が反響を呼ぶ。昨年出版した『これからの男の子たちへ』が話題に。

田中俊之
社会学者。大妻女子大学人間関係学部准教授。専門は男性学。『男子が10代のうちに考えておきたいこと』など著書多数。男性学の視点から男女とも生きやすい世の中を研究。私生活では6歳と2歳男児の父。
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