〝持続可能な社会を!〟と叫ばれる一方で、後継者不足に悩み、廃業になる企業が後を絶ちません。そんななかで、誇りを持って家業を受け継いだ〝跡取り娘〟を取材してきました。
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新聞記者から転身。家業の「つっぱり棒」の3代目を継いだいま思うことは?
羽田美智子さん(53歳) 羽田甚商店6代目、女優
一度は畳んだ家業を
ネットショップでオープン。
「紀行番組の仕事との出合いのときから
既に運命に導かれていたのかしら…」
ネットショップでオープン。
「紀行番組の仕事との出合いのときから
既に運命に導かれていたのかしら…」
穏やかな笑顔と優しく落ち着いた語りで人々を魅了する羽田美智子さん。女優の姿とは別にセレクトオンラインショップ「羽田甚商店」の6代目店主としての顔も持っています。羽田甚とは慶応元年から宮大工をしていた高祖父の名前から一文字を取った屋号だそう。
「両親が営んでいた駄菓子屋は、高校生たちの憩いの場でした。2人の兄のどちらかが継ぐものと思っていましたが、一人は教師でもう一人はサラリーマンになり、継ぐ人がいなくなりました。両親も『私たちで畳むから』と言っていたので、それでいいと思っていたんです」。
’15年に一旦畳んだ家業でしたが、先祖を辿る番組で観たご両親の姿が、羽田さんの心に深く残ることに。「ご先祖様に両親が申し訳ないと謝っていました。『子どもたちはそれぞれの道を進むことになり、元気でやっていますからお許しください』って。そこで屋号を継がないってそういうことかと初めて知ったんです」。
30代で京都の逸品を紹介する番組のレギュラーに抜擢された羽田さん。「6年間担当して、あらゆる業種の職人さんに成り立ちから現代までのストーリーを学びながら、本質を見る目が培われたんです。この仕事との出合いで運命に導かれたような気がします」。
そういう眼差しで全国を旅したら、日本が宝の山に思えたそう。「地元だけで愛されて、世間に広まっていない。そんな逸品を紹介したいと、お店を持つ夢ができました」。
実際、京都で物件も探したそうですが、仕事とのタイミングが合わずに保留に。「3年前からアロマミストを手掛けるようになり、『そうだ、ネットで家業の羽田甚商店を継承すれば一挙両得で夢が叶う』と気付きました。両親から受け継いだ羽田甚商店も憩いの場であってほしい。生産者さんと消費者さんが気軽に来られるコミュニティの場を作りたい。だから本当に私が心から良いと語ることができる商品だけを取り扱っています」。
仕事で出会った職人さんの言葉が記憶に残っていると羽田さんは言います。「その方は『私は毎日先祖と会話している』と言うんです。先祖の遺した物を見ては、『すごいな、よく考えたな』と会話するのが楽しいって。私も先祖の遺影に話しかけると、『がんばってるね』と喜んでいる感じがするんですよ。何事も辞めることは難しいと言いますが、首を絞めない程度に最後まで全うできたらいいですね」。
ブラウス¥29,700 スカート¥29,700(ともにグレースコンチネンタル/グレースコンチネンタル 代官山本店)イヤリング¥3,080(ハクフルール/ロードス)
撮影/西 あかり ヘア・メーク/木下 優〈ロッセット〉 スタイリスト/入江未悠〈リンクス〉 取材/孫 理奈 ※情報は2022年9月号掲載時のものです。