「家に入る」意識の強かった母たち世代とは違い、私たちは結婚で自分を犠牲にしたくありません。でもだからといって、つっぱっていても意味がないことを今月の40代が教えてくれます。
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◯ 話してくれたのは...新田絵利さん(仮名)
気が付けば結婚21年。それは完全同居21年でもあり、よく頑張ったなあと自分をほめたい気分です。
外資系アパレル会社の同僚だった夫とは1年間のお付き合いを経て結婚。恋人時代からとても優しくて真面目な人でした。当時は夫が私の地元の名古屋に転勤で来ていたため、名古屋で結婚生活をスタートしましたが、長女が生まれる頃に東京に戻ることに。
それをきっかけに、夫の両親の家を建て直し、義父母・独身の義兄と同居することになりました。知人も親戚もいない東京での生活は、同居のほうが寂しくなくていい、両親も良い人そう、子供の面倒も見てもらえるかもと軽く考えていました。甘かったですね。
同居と言っても二世帯住宅ではありません。キッチンも玄関もひとつ。リビングは義父母や義兄が占領し、私の居場所は寝室だけ。お風呂も入りたい時間には入れない生活でした。
そんな息苦しい生活の中で、東京に戻ってからの夫は出張族。平日は留守。嫌なことがあってもすぐに夫にぶつけられず、月に1度実家に帰ることでストレスを解消していました。姑は何もできない人で、やがて家事全般任されるようになっていきました。
夫は何の文句も言わないけれど、家族のことに無関心。姑との関係や日々起こる出来事について興味ゼロ。土日も、寝室にこもって音楽を聴いたり、本を読んだり、自由人でオタクなんです。不満はいっぱいありましたが、不満を言っても暖簾に腕押し。私たちのお金で家を建てたので、同居という事実を変えることは無理でしたし、私が我慢するしかなかった。
次第に夫に対して諦めるようになりました。優しい人だったので離婚までは考えませんでしたが、フツフツとした苛立ちを抱えながらも、子育てや家事に翻弄され、日々が過ぎていったのです。
ところが40歳を過ぎた頃、些細なことで夫と喧嘩。私が頑張って替えた蛍光灯の付け方をダメだしされた瞬間に、ぐらぐらと気持ちが煮え立ち、溜まっていたうっぷんが「ブチッ」と爆発しました。夫が平日いない中での同居の大変さを切々と訴えましたが、すっとかわすんです。
手紙を書いて思いをぶちまけても、口先で「ごめん」のひと言だけ。私の気持ちや大変さを一切分かろうとしません。ものすごく冷たい人に思えて、側にいるのも嫌になりました。会話を避け、挨拶もしたくない。土日は一緒の空間にいるのも嫌で、あえてその時間にジムに行ったり。そんな状態が5年ほど続きました。ストレスからか、関ジャニ∞にはまり、娘たちと関西にコンサートに行くことが唯一の楽しみでした。
が、徐々に子育ては落ち着き、大学時代の友人と会うように。友達が夫婦で海外旅行に行ったと。「うちは考えられない」と絶句。すると友人が「将来はずっと一緒だよ。仲良くする努力をしないと。意外と旅行楽しかったよ」と言うんです。
努力という言葉を聞いたとき、夫婦関係で全く努力していないことにはっとしました。趣味も考え方も合わない夫と関わろうとせず、意識して平行で生きていました。女友達の助言は絶大で、夫に対する自分の態度を反省。その時ちょうど結婚20年だったので、勢いで夫を旅行に誘い、何十年振りかにJALパックに2人で出かけました。友人には「リハビリに行ってくる」と旅立ちました。
意外に旅行は楽しかった。自然と腕を組んだり、一緒に写真を撮ったり。夫は私に興味がないものと思ってましたが、私のこと嫌いじゃないんだと分かったんです。異国の地で心が和らぎ、夫を信じて、近づく努力をしようと帰国しました。
しかし人生は甘くありません。現実に戻ると、同居という事実は変わらず、20年も経っても慣れるより、一層姑に嫌気がさす状態。数年前に義父が他界、義兄は独立、平日は義母と2人の生活に耐えられなくなっていました。一緒にいるだけで嫌という感覚です。
そんな頃、義母が倒れ介護が必要に。勝手だと言われても仕方ありませんが、家で姑を介護する気持ちになれません。施設に入れたいと相談したら、夫は反対。お金もかかりますから。しかし、これまでの私なら我慢していたところを、はっきりと夫に「姑か私かどちらを取る? 姑なら私は出て行きます」と断言したんです。夫は仕方なく、有料老人ホームに預けることを了承。
私がずっと我慢すればうまくいくと勘違いしていました。夫婦の幸せ、私の幸せは積極的に見つけないと。夫の性格は同じですが、平行でも間隔を近くして歩いて行こう。ただ横にいるだけで幸せと思えるようになりました。
取材/安田真里 刺繍/みずうちさとみ ※情報は2014年掲載時のものです。