――役作りに関する資料も読まれたのですか？

たまたまなんですが、『鎌倉殿～』をやるにあたって、演出の吉田さんから「ぜひ観てください」と言われて、『ゲーム・オブ・スローンズ』(アメリカのドラマシリーズ)を観たんです。それがすごく勉強になりました。私生児って、こんなに生きるのが大変だったんだな、虐げられていたんだなというのが、よくわかって。私生児フィリップの扱われ方は、ジョン王の親族だと認められたことで、相当変わったと思いますね。同じ場所に居ても視界にすら全く入っていなかったものが、急に眼の中に入ってくる、ぐらいの違い。『鎌倉殿～』でも、嫡男と嫡男以外ではだいぶ扱われ方が違いますから。

――時代劇の経験も生きてきそうですね。今日の小栗さんは、短髪にピアスという『ジョン王』のチラシを思わせるスタイルですが、それはご自身のフィリップに対するビジュアル・イメージだったりするのでしょうか？

いえ、そういうわけではないです。チラシの髪型が短いのは、アメリカでずっと坊主にしていたからなので。楽ちんなんですよ、坊主頭って。仕事がない時はずっと坊主でいいと思っているくらいです。今日こういう格好なのは、もう単純に、鎌倉時代にいたことを忘れるために、とてつもなく現代に寄せている結果(笑)。フィリップのビジュアルについては、最終的に鋼太郎さんと相談するつもりです。

――なるほど。鋼太郎さんからは“秘策”については何か聞いていらっしゃいますか？

具体的にはまだ何も聞いていません。ただ、ウクライナ情勢をはじめ、色々あったこの2年の間に、鋼太郎さんの中でも考えることがたくさんあったみたいで、「2年前とは全然違う演出にしようと思ってる」とは言っていましたね。横田(栄司)さんの降板もありましたし。どこまで本気かわかりませんが、「こうなったら、めちゃくちゃな演出をしてやろうかな」みたいなことも言っていたので、そういう部分がエンターテインメントとして面白くなればいいなと思っています。

――先ほど「愛すべきキャラクターがいない」とおっしゃっていましたが、今回は女性を含む全ての登場人物を男性キャストが演じる“オールメール”公演。舞台巧者の方も多いので、俳優陣の存在感と魅力で面白くなる気がします。

そうしたいですね。この間の『ヘンリー八世』(彩の国シェイクスピア・シリーズ第35弾。コロナ禍によって公演が途中で中止となり、今夏に再演された)も、なかなかむちゃくちゃな話でしたけど、鋼太郎さんの一人芝居が素晴らしくて、それだけでも充分観る価値はあるなと思いましたから。そんな鋼太郎さんの演出を受けることで、『ジョン王』の面白さを見つけられない今の自分が、どう胸を張って初日を迎えられるのか。それが今の僕のいちばんの楽しみです。やってみたら面白味もわかってくるような気がしています。

＜後編へ続く＞

次回は、小栗さんの舞台に対する思いや、40代をどう過ごしていきたいかなどなど。さらなる魅力に迫ります！

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撮影／古水 良　ヘア・メーク／みち子（SUNVALLEY）　スタイリスト／臼井　崇（THYMON Inc.）　取材／岡﨑 香

【衣裳クレジット】
トップス ¥38,000パンツ ¥38,000(ともにJOHN SMEDLEY / Lea mills agency)　その他スタイリスト私物
問い合わせ先／03-5784-1238 (Lea mills agency)

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