あなたは、配偶者と死別した後の自分を思い浮かべたことはありますか? 今回は、早くして夫との別れを経験した女性たちにお話をうかがいました。
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夫の死が教えてくれた “本人が望む生き方”。共有した「終活」が今の私の役割に
山本由美子さん(56歳・千葉県在住) 山本文郎事務所 会社代表
夫 山本文郎さん 1934–2014年(享年79歳) 元TBSアナウンサー
夫が私へ残してくれた人脈は宝物
人との繫がりを大切に
私も夫のように誰かの役に立てるよう
生きていきたい
人との繫がりを大切に
私も夫のように誰かの役に立てるよう
生きていきたい
’08年、31歳の年の差婚として、当時話題となった元TBSアナウンサーの山本文郎さんと由美子さん。実はお二人の出会いは、由美子さんが5歳の頃まで遡ります。
家族ぐるみで親交を深めていたため、知り合ってすぐに結婚(再婚)したわけではありませんが、世間の好奇の目にさらされる可能性があるのは承知の上。それでも、息子2人を育てる由美子さんを前に、文郎さんが「俺は、子どもたちの本当の父親になる」と宣言してくれたことが決め手になり、入籍されました。
結婚当時、すでに文郎さんは73歳。いつまで一緒にいられるかわからないけれど、それはどんな若い夫婦でも同じこと。それよりも「その時お互いが幸せな人生を歩めることのほうが大切だった」と由美子さんは言います。
ちょうどその頃、由美子さんは文郎さんと同じ仕事をするようになっていたため、夫婦は24時間一緒。妻としてマネージャーとして、健康管理には特に気を配っていました。しかし,14年のある夜、文郎さんは突然胸と背中の痛みを訴え、病院に行くと「肺胞血」と告げられ即入院。皆に笑顔を残したまま、わずか5日後、息を引き取りました。
“本当に逝ってしまうとは……”呆然とする由美子さんを支えたのは、文郎さんの家族や多くの仲間。生前、文郎さんは学生時代の友達との飲み会から同窓会まですべての場所に由美子さんを連れて行き、自身の知人と繫げていたのです。
ブライダルファッションデザイナーの桂由美さんもご夫婦と関係が深く、由美子さんの心を支えた仲間のお一人でした。「夫のお別れ会にいらしてくれた桂先生が、『何か一緒に仕事を』と声をかけてくださった時には号泣。その後、メディア出演のキャスティングなど桂先生をサポートできることが、私の生きる力になりました」。
人は誰かのためなら頑張れる――これは、前妻を亡くし自身の存在価値を見失っていた文郎さんが、再び家族のために生き生き過ごす姿を見て、由美子さんが、改めて気付かされたことだといいます。
「人は一人では生きていけないんですよね。この先の人生も誰かの役に立てるよう生きていきたい。たとえ困難に直面しても、夫が繫いでくれた大切な人たちがいれば、必ず道は開けると信じています」。
撮影/西 あかり ヘア・メーク/庄司愛理(六本木美容室) 取材/篠原亜由美 ※情報は2023年1月号掲載時のものです。