STORY本誌3月号「中学受験、思い切ってやめました」(P.196~)では、過熱する中学受験の中で、子どもの自己肯定感をどのように育めばいいのか、さまざまな方々に話を聞きました。
この記事を担当したSTORYライターの松葉恵里が取材を振り返ります。
広末涼子さんの決断と勇気
39歳の今、2人の娘の母になって、30年前に親から言われた言葉や、そのときの親の気持ちなどが少しづつ腑に落ちていく瞬間があります。
受験の中でも、中学受験は親子ともに精神的にいちばん大変だと思っています。
親が頑張ったからといって結果に結びつくわけではないし、その頑張り方を一歩間違えると子どもはむしろ反発していく――そんな時期の受験なのです。
でも、主役はまだ10年ちょっとしか生きていない子どもなので、親のサポートは必須。
そして、子どもの側から中学受験を提案してくる例もありますが、親の勧めがきっかけで開始するご家庭が多いのかと思われます。
親主導で始めた受験で、子どもが明らかに乗り気でない様子を眺めながらも、今までかけてきたサポートの大変さ、お金、時間などを損得勘定すれば、親は一度乗ってしまった船を簡単に降りることはできないもの。
そんな受験世界の中、子どもの本音を引き出して、すっぱりと受験をやめたという広末涼子さんに私は感心したのでした。〈内部進学の道があるから、やめることができたんじゃないか〉と言う人もいるでしょう。しかし、“偏差値が出て、志望校を決めたりする最後の段階”でやめる決断をするのは、かなりの勇気だと思います。
都内で公立小に通っているのであれば、エリアによっては一定数が中学受験をする流れが多いため、高学年になると塾通いが増えて、公園で遊ぶ子も減ります。
一方、内部進学であれば、本来は受験がないので皆が自分の好きなことや習い事に打ち込むことができる。そんな時期に、あえて進学塾に通って頑張っていたわけですよね。同級生にも受験をすることが知られていたかもしれない。途中でやめるという決断は、親子ともに相当悩んだことが想像できます。
外野の人間はさまざまなことを言うかもしれませんが、当事者である親子が悩みに悩み抜いた決断であれば、それはもうベストな決断だと思うんです。実際にこの企画で取材した教育ジャーナリストの鳥居りんこさんも、そう語っていました。
受験とは努力の仕方を学ぶこと
かつて私自身も中学受験をしましたが、受験を経験するメリットについて、大人になってから気がついたことがあります。
ひとつはその学校に入ったことで得られる人間関係の広がり(大人になって改めてありがたく感じています)。
そして、もうひとつ。こちらのほうが大事なのですが、「目標を乗り越えるために自分なりの努力の仕方を学ぶことができた」ということ。
勉強に限らず、スポーツでも趣味でも、成し遂げたいことがあれば、そのための努力の仕方を見出すことが大切。その力こそ、大人になって社会で生きてくると思うんです。
親が受験を主導し、何もかも親がサポートする先に志望校の合格があると思っている人がいるかもしれませんが、「先回りしすぎて子どもを置き去りにしてしまうことで、子どもは勉強が楽しいと思う機会を逃してしまう」と、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表の矢野耕平さんも言っていました。
受験の後の中学校生活も高校生活も……そして大人になっても勉強は続いていきます。
自らの中に〈学びたい!〉という心が生まれた際に、子どもは底知れぬ力を発揮すると思います。
「子のタイミングを待つ」って、大事ですね。
子どもの自主性や考える芽を潰さないために、私自身も随時、わが子の意思や希望を尋ねながら、柔軟に行く先を話し合っていこうと思いました。
STORY本誌3月号の「中学受験、思い切ってやめました」(P.196~)もぜひご覧ください。