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Lifestyle40代にはまだLOVEもドラマもあっていい!

あの頃はすべて”キング夫”の言いなり。スマホカバーの色だって自分の意思が通らなかったんです

旦那を尻に敷いている40代が大多数かと思いきや、案外「キング夫」に悩まされている人も多いよう。夫婦間の力関係だけに、外野はもちろん、本人同士ですら何が正しくて何がアウトなのかわからないものですが、見事に幸せを勝ち得た、今回の読者さんの例は参考になるはずです。

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とっかえひっかえの浮気が続き、バレては謝るの繰り返し。徐々に仮面夫婦になっていきました。

目次 ★ 夫婦のパワーバランス

夫婦のパワーバランス

◯ 話してくれたのは...仲間幸恵さん(仮名)

福岡生まれ。23歳で結婚後1男1女をもうける。43歳のとき、イラストがきっかけでクリエイティブディレクターとして仕事をはじめる。46歳で別居。47歳で家に戻り、今に至る。仲間由紀恵さん似の知的美人。
夫 東京生まれ。医学部卒業後、都内近郊に勤務する内科医。33歳で結婚。優しく真面目で知性溢れる人柄。料理上手で、アイロンがけや掃除も完璧にこなす。何においてもできる人。

大学卒業後、編集プロダクションで働いていたとき、会社で突然倒れ、担ぎ込まれた病院の担当医が夫でした。仕事が楽しくて、ご飯を食べる時間も惜しんで働いたため、診断は栄養失調。当時は美容院にも行かず、洒落っけもないOLだった私を見て、「今どきこんな娘がいるんだな」と夫は面白がって興味を持ったらしく、お付き合いが始まりました。

私にとっては初めての恋人。10歳年上の夫は顔もスタイルもキレイで、爪の形まで美しいんです。常に落ち着き払っていて、何をやっても絵になるような人。尊敬と愛情が日々募っていきました。

たどたどしいお付き合いでしたが、付き合って半年で、自然な流れで結婚が決まりました。が、夫は結納や結婚式に興味がなく、そのお金をアフリカに寄付したいと言いました。そもそも医者になったのも、貧しい国の子供たちを医療で助けたいという高い志から。そんなところも私は大好きでした。

ところが福岡に住む父に「結納も結婚式もしないような結婚は認めない。勘当する。二度と連絡はよこすな」と言われ、「わかりました」と以降、私は実家に連絡しませんでした。これが父に対する初めての反抗。でも3カ月後に父が折れて、「何があっても家には戻るな。主人の悪口も主人の家の悪口も一切言ってはいけない」と言われました。また「結婚したら、主人を立てなさい。一切逆らうな」。それが子供の頃からの父の教えでした。

そうやって始まった結婚生活でしたが、もともと趣味も育った環境も全然違う私たち。一つ一つ夫から教育を受ける生活が始まったんです。たとえば、ドアの閉め方一つにしても静かに開けて静かに閉める。歩き方も音を立てない……。がさつに育った私のあらゆるところが気になるようで、毎日「君ね」ではじまって、「こうしたほうがいいよ」の繰り返しでした。

私は夫のことが大好きだったし、憧れでもあったので、言われたことは素直に聞いて、改めました。夫の言うことを当たり前のように受け止めていましたね。スマホのカバーを選ぶときすら、私は緑がよかったのに、夫が赤と言えば赤を買っていました

すぐに1男1女に恵まれましたが、子供がいても、常に夫中心。就寝後は静かにしてくれと言われていたので、物音で起きてしまわないよう、夫が寝るときに家族全員寝て、夜中にトイレを使わないように細心の注意を払いました。朝は4時起きで朝ご飯を作り、昼は温かいお弁当を夫の職場に持って行き、夕飯は最低8品を作るという生活を20年続けました。

私の門限は16時で、友達との旅行は一度もなく、常に夫と一緒。でも私は夫の喜ぶ顔を見るのが好きだったので、すべてを夫に合わせ、またそれを苦痛に感じていないと思っていたんです。やがて子供たちはそれぞれ大学で海外留学をし、40歳過ぎる頃には夫と二人の生活が始まりました。

時間に余裕も持てるようになったので、もともと好きだったイラストを描き始めたところ、それが女性誌やさまざまなパッケージに使ってもらえるようになっていったんです。当然忙しくなり、私はOLのときもそうだったように仕事にのめりこんでいきました。最初は門限を守り、今まで通り夫の要求に応えていました。ところがある日、13時スタートの打合わせが16時までかかり、門限に間に合わない日がありました。

これまで一切使ったことがなかったお惣菜を買って帰ると、夫は体中から怒りが湧き起こらんばかりの態度で待っていて、「どうせ君のやっていることはくだらないことだ。夕飯を作らなければならないから帰りたいと、なぜ言わなかったんだ」と怒られました。私はすべてを否定されたような気持ちになり、悲しくて悲しくて。それでも夫には「ごめんなさい」と謝り、夫を怒らしたことに対して心の中でも反省してるんです。

仕事はどんどん忙しくなり、また楽しくもなっていき、多忙な時期は仕方なく親子丼とお吸い物など簡単なメニューにすると、怒るんじゃないかなと夫に出す前から憂鬱な気分になっていました。とはいえ、軌道に乗っていた仕事を辞めようとも思いませんでした。だから夫の期待に応えられない、怒られる、謝るの繰り返しで悪循環。一層夫婦関係はぎくしゃくし、でも私はどうしても夫に対して口答えができず、次第にストレスが体に出るようになってきました。最初はいやな感じの湿疹が上半身に出て、ストレスが原因だと診断されました。

一方で夫は自分の両親兄妹と仲が良く話は筒抜け、ある日夫の兄妹から呼び出され、「あの子は離婚を考えている。最初から私たちはあなたのことが大嫌いだった。すぐ離婚してほしい」と言われたんです。ものすごく傷ついて、もうだめだと思いました。

一層悩みが深くなっていきました。最後は顔面神経麻痺になってしまったんです。夫から「出ていけ」と言われたことをきっかけに家を出ました。実は仕事をするようになってから貯めていたお金を頭金にして、近所にマンションを購入していたんです。まだ離婚まで考えていなかったときに、将来のための投資と夫にも相談して買った家で、ひとり暮らしを始めました。

でも一人になるとどうやって生きていこう……と悶々と悩みました。スパッと離婚できないのはやっぱり夫が好きなのかな、というもやもやした気持ちも抱えつつ、ふっと海外にいる息子に相談してみようと思い立ち、電話で今の状況と別居したこと、離婚も視野に入れていることを話しました。

そうしたら翌日ビーチサンダルのまま、荷物も持たずに息子が帰国。ゆっくり話を聞いてくれました。息子曰く、「両親を見ていて、パパはママに甘えていて、昔からママはパパの召使いみたいだ。でもそれにはママにも責任がある。パパはママが言うことを聞いてくれることが当たり前だと思っているから、嫌と言わないとだめだ」と。私は「パパが機嫌よくいるために良かれと思ってそうしてきた」と言いましたが、物凄く意表を突かれていました。「パパが変わることを期待しているけど、ママが変わらない限りパパも変わらないんだよ」

別居中でも事務的な用事で夫から連絡はよくあり、ある日「書類をすぐに持ってきてほしい」と言われたとき、ドキドキしながら初めて「今はできない」と言いました。すると夫は「わかりました」と。あーこういうことだったんだ、二人の関係を作り上げたのは私だったんだと気づいたのです。

そんなとき、福岡の父が末期のがんになり、余命いくばくもないことを知った夫が、何度も足を運んでくれたのです。結婚時にもめごとがあって以来、私の実家には一切出向かなかった夫にも心の変化が見え始めました。

やがて父は亡くなり、私たちの別居も1年が経とうとしていたとき、夜中に夫からメールが来ました。沖縄の海の写真が添付されていて、「この土地を買おうと思う。ここで君と暮らしたい」と書いてあったのです。雪が解けるようにお互いの気持ちが緩んできました。

私はこの土地を見てみたいと思え、夫と二人で見に行きました。そこは本当に美しい場所で、雲と空気と海が再び夫婦の気持ちをつないでくれました。私は家に戻ろうと決心。夫も帰ってきてほしいと言ってくれました

完璧に妻・主婦をやってきた私。今はすっかり手を抜いて、嫌なことは嫌、できないことはできないとはっきり言うようになりました。あろうことか、私が仕事で遅くなる日は夫がご飯を作って待っていてくれます。以前は夫のことが大好きだとたびたび伝えていた私でしたが、今は夫が「君のことが大好きだ」と言ってくれるんです。

長い年月をかけて、やっと夫婦が対等に向き合えるようになれました。そう、昨日も夫とコーヒーを飲みながら「本当に別れなくてよかったね」と話しました。今がいちばん楽しいですね。何よりも、不器用な私を息子や亡き父、そして夫と、家族みんなが守ってくれたのだと感謝でいっぱいです。

取材/安田真里 イラスト/あずみ虫 ※情報は2023年2月号掲載時のものです。

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