代々木公園のそばにあるアートレストラン「TREE by NAKED yoyogi park」(ツリーバイネイキッド ヨヨギパーク)に、新たなヴィーガンランチコースが登場しました。いつもはヴィーガン食を選ばない人でも、十分に満足できる味とボリュームのコースに仕上がったということで早速行ってみることに。そこには、見たこともない驚きのヴィーガンメニューが待っていました。
レストランに入ると一階は自然光たっぷりの明るいカフェですが、ヴィーガンランチコースは階段を降りた地下にある薄暗い部屋でいただけるとのこと。まるで会員制のレストランのように秘密めいた扉を開くと、プロジェクションマッピングで彩られたジャングルのような空間が広がっていました。ユーカリレモンのアロマがほのかに香る中でリラックスしながらコースがスタートします。
昨年シェフに就任した上田 美徳(うえだ みのり)氏は、ヴィーガン食のスペシャリスト。マクロビオティックに出会ったのは、食事が摂れなくなった祖父のために栄養学を学んだのがきっかけなのだそう。「単調になりがちなヴィーガンメニューでも美味しく食べていただきたい」という想いのもと新メニューのレシピを開発し、植物性でもいかに美味しく食べてもらえるかにこだわり抜いたと言います。
まずは、マクロビオティック食を代表する抗酸化作用が期待されるスープから。陰性と陽性の野菜を組み合わせ丁寧に作られたスープは、野菜の甘みと旨みが凝縮されています。このコースでは、石川県能登産の有機野菜をふんだんに使用。味や品質には問題がないものの見た目やサイズなどで規格外とされたふぞろいな野菜を使用し、フードロス対策もしています。
次に運ばれてきたのは、大地からの息吹を感じるような美しいアミューズ。パプリカディップの上には竹炭のクランブルが土のように敷かれており、そこから生えている葉っぱを引っこ抜くとラディッシュが現れる楽しい仕掛けです。大豆パテのサンドイッチには、手作りの豆乳マヨネーズが使われており、まるでツナサンドのような味わい。揚げ春巻きのようにカリッとした海苔巻きは軽やかな食感です。
旬を迎えたスナップエンドウのほのかな甘みを引き出したポタージュは、新タマネギのエスプーマが添えてあり、カップの中で見事に調和しています。とろりとした口あたりを楽しめて、彩りも鮮やかな気分が上がる一皿。
コースをいただいているなかで、一番驚いたのはこのプレートです。花ズッキーニで包んだカダイフ揚げは、パリパリとした中にカキのような料理が忍ばせてあり、カキフライのような食感と味わい。長芋と青のりだけで作ったとは思えない美味しさで、本当にカキが入っていないか食べながら何度も確認してしまいました(笑)。
そして、カナッペにはサーモン風の人参が盛りつけてあるのですが、こちらもどう見てもサーモンとしか思えません。見た目だけでなく、味もスモークサーモンとクリームチーズに見立てており、上田シェフの腕が光るメニューです。
有機野菜のサラダは、能登産の新鮮な野菜がたっぷり。奥に見える試験管に3 種の野菜ドレッシングが入っており、好みのドレッシングをかけながらいただけます。旬の野菜の素材そのものの美味しさを感じられるサラダという言葉がぴったりです。
さらに、メインのプレートも驚きの連続です。ビーツをベースにしたナゲットは100%植物性なのに、実際にチキンを食べているかのよう。豆腐の照り焼きをウナギの蒲焼に見立てた一品は、噛みしめるとふわっとした身が本物の鰻のような味わいです。以前、チキンやウナギに見立てた食品を食べたことがありますが、どこかに豆の香りなどが残っており美味しくなかった印象でした。でも、上田シェフの料理は格別。美味しいだけでなく、肉や魚を食べたようなボリュームと満足感があります。プレートには、こごみや百合根、銀杏などが添えられ、トリュフも贅沢にトッピングされています!
料理の〆として出てきたのは、玄米の焼きおにぎりを野菜で取った出汁でいただくお茶漬けです。野菜だけでとった出汁ということですが、沖縄の島胡椒やホーリーバジルを使うことで魚介だし風味になっているから不思議です。メインに出てきたウナギ風の蒲焼を少し残しておいて加えると、ひつまぶし風にいただける粋な演出も。マクロビオティックによる創作和食を得意とする上田シェフならではの圧巻の一品でした。
食後は、食べるアートのようなヴィヴィッドカラーのデザートが登場! ヴィーガンミルフィーユには鮮やかなエディブルフラワーやラズベリーが宝石のようにトッピングされており、目で見て味わって2度楽しめます。また、季節のフルーツをそのまま閉じ込めたフルーツゼリーはゼラチンを使わず仕上げたヴィーガン対応。とろけるような生チョコレートもヴィーガンです。
コースを食べ終わった後は、ヴィーガン食に対するイメージがガラリと変わるほどの満足感。ヴィーガンにありがちな、あっさりしていて物足りない・・・、満腹感がない、味が微妙、といったことがなく、お腹いっぱいなのに罪悪感ゼロ! いつもはヴィーガン食を選ばない人でも納得の味とボリュームです。
上田シェフお手製の酵素たっぷりのノンアルコールドリンクや、ヴィーガンワインなどのアルコールも追加でオーダーでき、コーヒーに合わせるミルクはオーツミルクやソイミルクから選べるなどヴィーガンオプションも豊富。美味しいヴィーガン食を求めて海外からやってくるお客様も多いそうです。プロジェクションマッピングのジャングルで五感をフルに使いながら楽しむ料理は、席についた瞬間から感動の嵐。心までも満たされる唯一無二のコースでした。
【TREE ヴィーガンランチコースメニュー】
食前スープ、デザート含む全7 皿 ¥10,000 *ドリンク別料金
11:15 Open / 11:30 Start / 14:00 Close(金、土、日のみ、完全予約制)
東京都渋谷区富ヶ谷1-10-2
TEL 050-1743-2539
https://tree.naked.works/yoyogi/
取材/本條千春