世界で活躍するスーパーモデルの冨永愛さん。同世代ということもあり、40代のSTORY読者も憧れている方も多いのではないでしょうか?あれから、20年以上たち、ファッションや芸能界だけではなく、社会貢献活動にも力を入れている冨永愛さん。特に、日本が抱えるSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の問題についてを、国際協力NGO団体ジョイセフの事務局次長の小野美智代さんと語って頂きました。全2回の2記事目となるこちらの記事では、冨永さんが息子さんに行っていた性教育や、最近一斉を風靡したあの“男女逆転大奥”についてを語ります。
1記事目もあわせてご覧ください。
17歳でNYコレクションにてデビューし、一躍話題となる。以後、世界の第一線でトップモデルとして活躍し、モデルの他、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティ、俳優など様々な分野にも精力的に挑戦。日本人として唯一無二のキャリアを持つスーパーモデルとして、チャリティ・社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝えるなど、活躍の場をクリエイティブに広げている。2023年7月、モデル、クリエイター、アーティストのキャリアステージのサポートを行う新会社、株式会社Crossoverを設立。公益財団法人ジョイセフ アンバサダー、エシカルライフスタイルSDGs アンバサダー(消費者庁)、ITOCHU SDGs STUDIO エバンジェリスト。
小野美智代さん
国際協力NGOジョイセフ(公益財団法人)事務局次長。国際スタンダードで基本的人権であるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:以下SRHR)の重要性を発信。SRHR意識向上プロジェクト「I LADY.」や国際女性デーのチャリティムーブメント「ホワイトリボンラン」を始動。静岡県三島市在住。プライベートでは娘2人と夫(別姓目的で事実婚)の4人家族。
★ 息子の最初のコンドームは私がドンキで買いましたね
★ 生理休暇、取れるなら取りたいですよね
★ 休業より、復帰するときの方が大変でした
★ 「大奥」はまさに日本のジェンダー問題を浮き彫りにしたと思います
息子への性教育は小学1年生からスタートしました
ーー息子さんがどれくらいの頃から性教育を始めましたか?
冨永さん:結構早くて、小学生くらいからだったと思います。ジョイセフの活動もしていたので、こういう話は小学生のうちから始めたいなと思っていました。恥ずかしがりますけどね、最初は。実際、私がこうやって子ども生まれるんだよって一生懸命説明しても「ふーん」くらいで、半分聞いていなかったりするんですけどね。
ーーでも、一応、頭の片隅にはきっと入っているんでしょうね。
冨永さん:それが、全然、覚えていないんですよ(笑)。だから、何回か同じことをタイミングをはかって伝えますし、大きくなって彼女ができた時とかにも、伝えました。
ーー息子さんが幼少期のとき、性に関することをどのように教えたのですか?絵本など?
冨永さん:絵を描いたりして、説明しました。確実にジョイセフの活動の影響です。
小野さん:「ジョイセフエプロン」ですよね。エプロンに女性の体を描き、下腹部に生殖器や胎児の成長などを描いたカードを差し替えながら妊娠出産の仕組みを説明できるもので、アフリカやミャンマーなどのアジアでは、学校でもジョイセフが育成したピュアエデュケーターが教材として使っています。
息子の最初のコンドームは私がドンキで買いましたね
冨永さん:それからは、日常会話でも「今日は生理が辛いからウーバーね」とか言ったりして、その時に生理ってどういうことか説明しちゃったり。今は、友人みたいになんでも話せる関係性が築けていると思います。性に関することもオープンにしてきたので、何かがあった時に相談してくれると思っています。
ーー自然な感じで伝えたり、コミュニケーションが大切なんですね。
冨永さん:はい、そう思います。避妊の仕方も教えたし、一番初めのコンドームは私が買い与えました。これ、フランスのやり方なんです。
一同:へぇ!
ーー息子さんはどんな反応でしたか?
冨永さん:「え?お母さん買ってきたの!?」って感じでした。お母さんがというより、「『冨永愛』がドンキでコンドーム買ってた!という方がニュースにならない!?」って心配していました。
一同:(笑い)
冨永さん:でも、そういうことも大事だと思いました。当たり前のことだし、別に恥ずかしいことではないし、そんな事が話題になる方が問題だって息子と話したりしました。
小野さん:なるほど〜。
生理休暇、取れるなら取りたいですよね
ーー女性特有の体調管理、特に生理などの問題があると考えられますが、ファッションウィーク中など過酷な現場でモデルさん達はどう対処しているのでしょうか?
冨永さん:激しい仕事をしているとやはり不調は出てきます。免疫力が下がってカンジタになったり、膀胱炎になったり…。生理がすごく酷くなったりしました。基本、モデルは衣装の都合上、タンポンなのですが、ショーの間はトイレに行く時間もなく、過酷でした。バックステージでモデル仲間に「愛!トイレ行っておいで!漏れてるよ!」って言われたことがあります。衣装の後ろが真っ赤になってしまってたり…。
ーー普通の職場でも大変ですよね。「生理休暇」という言葉もやっと最近普及してきたという感じですよね。
冨永さん:本当に必要だと思う。辛いです、生理。特に芸能界は「熱が出ても来い!」(コロナは別として)という雰囲気でとても生理休暇が取れる環境ではないです。
休業より、復帰するときの方が大変でした
――マミートラック*にはまりキャリアと子育ての間で悩む40代の方も多いと思いますが、子育てのために3年間休業したご経験のある冨永さまはどう乗り越えてこられたのでしょうか?
冨永さん:私の場合はファッション業界にいるということもあってとても特殊だと思います。経済的な余裕があったからできたと思います。それまで、とても忙しくて、しっかり働いていて、蓄えがあったからこそ3年間お休みできました。
ーーお仕事は完全に辞めた感じですか?
冨永さん:そうですね、徐々に仕事を少なくしていって、完全に仕事は辞めました。
ーーきっかけは何だったのでしょう?
冨永さん:忙し過ぎて息子との時間が取れなくなってしまったことにあります。小学校の6年間の子供の成長って凄く早いですよね。小学校に入学した時と卒業した時なんて全然違いますよね。多分、親は小学校の卒業式が一番泣くと思います。もう、号泣。あんな小ちゃかったのにって。その時間を逃してしまったら二度と来ないと思いました。
ーー息子さんがどれくらいの時期に休業されたのですか?
冨永さん:息子が小学校3~5年生の時です。
ーー冨永さんがPTAに参加したりって中々、想像できないのですが、普通に過ごしてらしたんですね。
冨永さん:はい、普通に生活していました。もちろん、PTAに参加したり。
ーー冨永さんがPTAに着る服がなくて、息子さんに短いスカートを注意されたっていうエピソードを聞いたことがあるのですが、微笑ましかったです。
冨永さん:そうなんです。それまではパリコレなどのショーやメディアの表舞台にでるような服しかなくて。学校に着ていく服がよく分かんなくて(笑)
ーー子育てで仕事を離れていた女性にとって、仕事への復帰は不安があると思います。10年ぶりのパリコレに復活を決意したきっかけは?
冨永さん:復帰の方が大変でした。業界は流行り廃りがあるし、自分にポテンシャルがあっても受け入れて貰えるか分からない未知の世界なので。少しずつ復帰していって、3年後くらいに満を持してパリコレに出ることを決意しました。自分の人生の転機として、私にとって「できるか」、「できないか」を知ることが大事でした。それを知るためにパリコレに行きました。
ーー結果は「できる」だったんですね。
冨永さん:そうですね。この業界に残ることができたので。
「大奥」はまさに日本のジェンダー問題を浮き彫りにしたと思います
ーーモデル業以外にも俳優など多岐に渡りご活躍されていらっしゃいますが、最近、ご出演された「大奥」は男女の役割が逆転することで「SRHR」問題が浮き彫りになる作品だと思いますが、実際に演じられて、どうお感じになりましたか?
冨永さん:元々、歴史が好きで、時代劇はずっとやりたいと思っていました。身長もあるし、来るなら男の役かなと思っていました。なので殺陣(たて)とか乗馬などもやっていました。そうしたら、女性だけど男性の役割を果たす役という絶妙な役で「これだ!」と思いました。
ーー男女が逆転しているという点がとてもユニークな作品ですよね?
冨永さん:はい、歴史家の磯田道史さんも逆転していることで、見えてくる問題があるとおっしゃっていました。特に女である吉宗が家来の男達に暇(いとま)を出す時なんて特に顕著でしたよね。男の将軍が側室や女中に暇を出しても誰も気に留めないと思うんです。それから、女の将軍が生理がなくなっても子供を産むように強要されたり…。深かったです。
ーー小野さんは作品を観てどうお感じになりましたか?
小野さん:やはり、側室の男性に子種がないというシーンですね。これまで、女性だけが責められることが多かった不妊の問題が男性に向けられるというのが衝撃でしたね。
冨永さん:うんうん、あのシーンがあってよかったと思う。
小野さん:放送後に飲みの席で、男性の友人らが子種がないことがあんなに惨めなことかと切なそうに語るというのを目の当たりにして、あのシーンがあってよかったと思います。
ーーこれまで、男性が目を背けて話題にしてこなかったことですよね。
小野さん:男性が飲みの席でドラマの側室について話すほど響くものがあったと思うのです。身近な話題から気づきがあるので、そういった意味では作品として大事だと思いました。
ーー最後に、これからどんなご活動をしていきたいと考えておられますか?
冨永さん:そうですね、できることはどんどんやっていきたいと思っています。社会貢献活動は、ぜひ続けていきたいです。芸能活動はうーん、どうなるか分かりませんが、時代劇はまたやりたいと思っています。
冨永さんご衣装:ジレ¥52,800(コル ピエロ ドットコム/コル ピエロ)インナー¥9,900(カーサフライン/CASA FLINE 表参道店)パンツ¥46,200(J. Someone Precious 自由が丘 八雲店)イヤリング¥6,480 ブレスレット¥3,780 リング¥9450(すべてアビステ)小野さんのご衣裳は私物です。
撮影/吉澤健太 モデル/冨永 愛、小野美智代 ヘアメイク/Mio(SIGNO)スタイリスト/福田美和 取材/太田梨奈