Netflix恋愛リアリティシリーズ『あいの里』に出演し、一躍話題となったトッちゃん。シングルマザーとして参加し、田舎の古民家で35歳以上の男女と共同生活を送りながらパートナー探しに挑んだトッちゃんに、出演のきっかけや、大人の恋愛についてインタビュー。STORY世代ど真ん中だからこその悩みや、価値観の変化などを伺いました。
【前編はこちら】
『あいの里』トッちゃんインタビュー「シンママの恋愛って許されるの?」
STORY編集部(以下同)――「初めまして」から始まった、里での共同生活はどうでしたか?
若かりし頃と違って、ある程度大人になるとみんな距離感がつかむのが早いというか。自分のポジションを考えて行動しているなって感じでした。私の場合は、ユキえもんがいてくれて助かった。でなかったらもっと盛り上げ役に徹しちゃっていたと思います。結構空気を読んで、ここは入っちゃ駄目なんだなとか、女子の方はそれなりにみんなポジションを棲み分けていたので生活の中でぶつからなかったです。このまま住めるんじゃないかっていうぐらい(笑)。大部屋で寝て、寝食を共にするのも意外と平気でした。
――里での生活スタイルはどうやって決めていたのですか?
村長のポジションをひとり決めて、村長が軸になって作業を決めて進めていく感じです。あとは自主的に計画して畑の収穫をしたり、畳からフローリングにしてみたり、誰かの意見を取り入れていくスタイル。意見を出すっていうのも結構人柄が見えますけど、得手不得手もあって面白かったですね。じょにいはずっと完璧な人に見えていたのですが、バトミントンをやったら下手だったから、やっとスキが見えて安心したりしてね。
--参加メンバーそれぞれの第一印象はどうでしたか?
ハリウッドは画面の2、3倍熱い男性で。わかりやすいなっていう感じ。隠さずさらけ出している人。それは自分にとって刺激になりましたね。恋愛対象にはならなかったですけど(笑)。たあ坊はシンプルにイケメンっていう印象ですね。個人的にはムキムキに鍛えている系は苦手なんですが、そこはさておき。じょにいはなんでもできるって印象でした。でも本当のところはどうなんだろうなっていう興味も湧きました。アンチョビはかっこいいのかもしれないのですが特にタイプではなかったのです。これ、誰かを選ばないといけないの? って思ったら、初対面ではビビッと来る人がいなかったので。みんなで手を振って男性陣を迎え入れる時は、ぶっちゃけどうやって帰ろう……って思ってました。
--そこからどうやって恋愛スイッチをONにしていったのでしょうか?
はじめからバッチリの人って、あの中にはいなかった。でも結果、そこから変わっていったんですけど今思うと面白いですよね。全然最初にピンときていなくても暮らしていくうちに気になっていくんです。暮らしってある意味怖い! 自分ができないことをスッとやってくれたりするとすごいなって思うし、タイプではないけれど人としてはすごいみなさん、才能があって本当にいいところがあって尊敬できる人たちで。結局恋愛になった時もそこは大事なポイントだと思うんです。尊敬できてお互いを尊重し合えるかっていうところ。それは育めた気がするんですが、その先のドキドキの部分も恋愛には欲しいですよね。テーマである〝最後の恋〟って、どのぐらいドキドキが必要なんだろうなって、考えたりもしました。
--ドキドキするようなトキメキのポイントはどこにありましたか?
どこでどうときめいたのか。というと、結果私は酒ちゃんを好きになったのですが、酒ちゃんは私とはまったく対局の人で。そういう人生を歩んでみたかったな、っていう人生を歩んできていた人でした。自分のためだけに生きている、私ができなかったことをやっている。酒ちゃんは純粋に、自分がやりたいことをやって生きてきたんだなって思ったら、気になり始めて。酒ちゃんは途中からの参加でしたが、その時は白馬に乗った王子には見えず、最初は正直、ときめかなかったんですよ。見た目でときめかない。イケメンっていう意味ではたあ坊が許容範囲に入っていていたのは本当ですが、人柄を知ってグッとスイッチが入ったのは酒ちゃんだったんです。
--どうやってアプローチ方法を考えたのですか?
今まで一度も告白をした経験がなく、アプローチも積極的にできなかった。恋愛偏差値が低い私。友達偏差値は高いんですけどね。男の人はみんなすぐ仲良くなって友だちになってしまうんです。好きな人にも、そうでない人にも同じように接してしまうので、気持ちが伝わらず気づいてもらえないことが多くて。個人的なアプローチは苦手でした。でも、里に来たからには、これまでやったことのないことをやってみようと! すべてがチャレンジだから、と。さらには特殊な環境なので、できることって料理とか、セラピストをやっているので、特技を活かしてヒーリング券を作って渡してみたりしました。
--新たな挑戦は自分に何を気づかせてくれたと思いますか?
もともと、恋愛は五感をフル活動させるものだと思っていて。その人の匂いだったり仕草だったり、色々敏感になりますよね。最後に酒ちゃんと手をつないだのは、触感を確かめたかった。触れてどういう風に自分が感じるのかって、彼も何か変わるのかなっていうトライだったんです。参加するのもアプローチもすべてがチャレンジで。酒ちゃんがほかの女性(ゆうこりん)にプレゼント(塩)を渡しているのを聞いた時に、今までだったら「はい、ご縁なかったですね」って終わらせていたんです。執着心がないので、すべてご縁だと思うタイプなので、なければ「はい、では来世で」みたいな(笑)。でも以前の自分と同じことをしていたらここに来た意味ない!
--どうやって恋愛に向き合い自分を奮い立たせたのですか?
「はーっ」て落ち込むときはありました。でもそんな時、ユキえもんとか、おかよの姿を見て、そうだよね、最後まで全力でやろうって思い直して。ご縁がなかったって逃げちゃう自分はダサいよなって。ほかの人を好きな人を追いかけるって辛いしプライドも傷つくし、そんな中で見切りをつけて「どうぞ」てなっちゃう自分のままでは嫌だなって思ったんです。自分をさらけ出して、全力でぶつかったものに後悔はないなと。
--半同棲という共同生活の中で、相手を見極めるポイントはどこでしたか?
それはなにか問題が起こった時、につきましたね。ブレスレット事件にどういう反応をするか、誰かのためを思って作ったのにひとつだけ余ってしまったものに対する反応が、男性陣それぞれで。冷静に見ちゃいました。隼平は余ったものに対してケアをしていたので、優しさがあってちゃんと表現できる人だなって感じました。酒ちゃんは、余るだろうと予測して、下手なことを言っちゃいけないと先読みしたようで、頭脳派だから何も言わないのが得策と思った様子でした。
--特殊な環境で恋愛をするときの一番のポイントは?
やっぱり大人になるにつれて、自分の経験値で人を判断するようになっちゃうと思うんです。この人はこうだから、こういう人だって。でもこれって失礼だと思っていて。自分が判断される側だったら、何回か会っただけでこれまでの人生まで決めつけられるのは違うって思いますよね。だから誰にでも可能性を見出したいと思ったんです。見切りをつけるのっていつでもできるけれど、こうなる可能性もあるっていう広い視野で人を見て、相手と向き合おうと思いました。ダメなところはいくらでも探せるから。酒ちゃんに対してもそうだったけれど、すべてが合う人なんていないじゃないですか!
--告白の決断はどのタイミングで?
あの場にいると、仕事とか育児とかっていうミッションから離れて、自分軸で生きないといけない。都会にいると情報に惑わされたり、迷ったりするのが、あそこでは自然と自分と相手。本質しかない場所なので、自分自身に意識を向けて相手と向き合うことで、心と体がリセットされたんです。だから自分に正直になれたし、さらけ出して全力でプライドも捨てて走れたので、恋愛のゴールに向けて進むだけだった。正式に告白するとなると緊張して、鐘を鳴らすのに足が震えてなかなか前に進めなかった。一緒に作業をした。手もつないだ。プレゼントも渡した。やることはやり尽くした。酒ちゃんの反応に変化があったのを感じて、勝算はきっとある! と勇気を出しました。少しずつ目も合うようになっていたし、気づいたら近くにいるっていうことが多くなっていて。ダメでも、いい。もうやり切った! というタイミングで告白を決めました。駆け引きもなく、試すようなこともなく、ストレートに伝えました。酒ちゃんの気持ちは最後までわからなかったけれど、OKしてくれたときは嬉しかったです。大人の恋愛は、見た目はもちろん肩書や年収などから入ることも大事だけれど、その鎧が剥がれた時に、裸の状態になって初めて本当の恋愛が始まるのかなと思いました。それが「里」で得られたこと。そして人生初の告白をできた自分に、よくやったなって思えて、それが一番大きな経験になったと思っています。
--最後に、STORY読者に向けて一言お願いします。
老いって、五感が鈍ることだと思っています。耳とか目とか。人のことをちゃんと見れてなかったり聞けてなかったりしますよね。でも恋愛って五感を使うことだと思うので、恋愛すると「若くなったね」って言われるのはそこだと思う。恋愛だけではなく何かしらのチャレンジをしている、いくつになっても年齢を重ねることを楽しみに感じていきたいです。トライアンドエラーを繰り返してチャレンジし続けることが大切で、それを見て若い人たちも年をとるのを楽しみにしてくれる、そういう世の中になってほしいなと思います。どんなエステやコスメより、挑戦こそがアンチエイジングになると思うんです。
撮影/沼尾翔平 取材/高橋奈央