44歳、46歳でお子さんを授かった加藤貴子さん。「不妊の経験が自分との付き合い方を見つめ直すことにつながり、豊かな人生にシフトできた」と語る彼女の更年期の乗り越え方にはヒントがあるようです。
○ 加藤貴子さん(52歳・女優)
甘え上手&上手な情報選別を心がけつつ
自分を大事にすることで
更年期に寄り添って
自分を大事にすることで
更年期に寄り添って
今年の春から特に顕著になったメンタルの不調に「これって更年期障害?」と感じ、かかりつけのクリニックに相談に行きました。42歳で不妊治療を始めて44歳、46歳で出産したので、いわゆる45歳くらいから始まるとされる更年期の初期はホルモン治療のまっただ中。注射を打ったり薬を飲んだりしていたこともあり、自分の〝なんとなく不調〟が治療から来るのか更年期症状なのかはわかりませんでした。
ただ、不妊治療や子育ての経験を通して自分が疲労やストレスが溜まりやすく、悪化すると精神的に安定しない傾向があることを学んでいたので、すぐにお世話になっている星子クリニックの星子尚美先生に相談。そこで勧められた、アーユルヴェーダ医学で伝統的に薬として使用されているアダプトゲンがメインのサプリメントを飲み始め、かなり快方に向かっています。
◇ 誰にでも訪れる更年期。自分の弱点を知っているのでアーユルヴェーダのサプリなどで備えています
— 加藤貴子さんはドラマ「温泉へ行こう」などで女優として活躍。不妊治療の末、授かったお子さんは現在8歳と5歳。まだまだ手がかかる子育てとお仕事の両立とともに、不妊治療を通して自分の心身と向き合った経験が更年期の過ごし方にも生きているそう。
ホットフラッシュなどの目立った症状はないのですが、育児の慌ただしさからか、ここ半年は今まで以上に疲れやすく、無理をすると些細なことにもイライラ(*1)したあげく、そんな自分に疲れるというような悪循環なループにはまって、まわりにも影響が出始めました。でも飲み始めたサプリメント「アーユール アシュワガンダ」はストレス耐性を向上させ、精神状態を正常な方向にサポートする効果があるらしく、それが自分には適していたようです。
更年期の症状はホットフラッシュに見舞われたり、倦怠感に襲われたり、やる気がなくなったりと、100人いれば100人症状が違うと聞きます。時期や症状は千差万別だけれど、更年期症状が出たら相談できるクリニックを見つけておくのは、お守りになると思います。一人でモヤモヤ悩んでいるよりも、何か不安なことができたら、信頼できる医師に聞いてアドバイスをもらう、というのも年を重ねていろんなところが変化していくことを恐れずに過ごせる対策の一つかもしれません。
◇ 高齢出産の経験を通して学んだ 「自分を裁く= ストレスを溜める」という思考グセを改善して 更年期に抗わないように
また、不妊治療を通して自分の体と心に真剣に向き合った経験も更年期という不安定な時期を過ごす心構えに生きている気がします。
以前は極端に言うと、努力をすれば結果が付いてくる。結果が出なかったらもっと頑張る余白があるんだ! というような、追い込み型でした。でも不妊治療は、ガッツや努力だけではどうにもならないもの。ホルモン剤の影響もあったのか、感情の起伏も激しくなりましたし、倦怠感に襲われたり、ネガティブな感情のループにはまってしまうことも多々ありました。
以前までは、健康のために行動しようとしても継続できない、いわゆる三日坊主でもありました。でも今までのやり方が通用しないお手上げ状態になったときに初めて、格好つけていられない素の自分と対峙する機会があって「心がついていかないことは続かない」ということに気づきました。
それ以来、少しずつ自分との向き合い方が変わり、特に自分を大切にするようになったのは50歳を過ぎてから。それまでは自分と自分以外とを分けて考えていて、自分以外の人(家族も含めて)に奉仕するのは、自分を愛するよりも尊いという、根強い固定観念があったんです(今も抜けていませんが)。それが家族と生活する思いやりの一環だと思っていたので、親や夫、子どもを優先して自分のことは後回しにして生活していました。できなかったら自分はダメだと裁き、責めてもいました。
でも自分と自分以外の家族を分けて考えていたら、いろんなところで〝ひずみ〟が出ます。やはり自分が楽しく元気に平和に過ごしていなかったら家族も楽しめないし、迷感すらかけてしまうと気づいてからは、私の気持ちいいことを大切にして家族も楽しめそうなことを選んで、付き合ってもらっています。
ここ2~3年は『自然の中でリラックスするのが心地いい!』と心の底から思えるようになったので、休暇が取れると子どもを連れて、なんちゃってキャンプやグランピングをするように。お気に入りは「Roots 猪苗代」。グランピングができ、自然の中で焚火も焚火料理も楽しめる、私を元気にしてくれる場所です。
そこで今年のゴールデンウィークに出合った鎚起銅器 大橋保隆氏の作品に一目惚れ。大橋さんの手でかたちづくられた道具と共に暮らす日々が、これからの暮らしの中で私の愛おしい時間になりそうな予感を感じさせてくれます。世界に一つのパエリア鍋で、今育てている野菜とハーブを使って調理するのも喜び。こういった長く付き合える道具を一つ一つ増やしていく喜びは、自分を大切にしていく一環にもなっています。今はスズを塗らないバージョンのコップとケトルを注文中、できあがりが楽しみです。
また、自宅のベランダで育てている、季節の野菜とハーブからも元気をもらっています。トマト、フルティカ、パプリカ、ピーマン、ラディッシュ、きゅうり、ゴーヤ、なす(水なす)、ブロッコリー、カリフラワー、オクラ、バジル、ローズマリー、パセリ、タイム、オレガノ、セージ、イタリアンパセリなど収穫した野菜で、料理を作るのも楽しいひとときです。旬の野菜にかけるオリーブオイルは「れなり」、お塩は海塩または岩塩、レモンは高知産の無農薬、亜麻仁油もトマトジュースに入れて飲んでます。肝臓が疲れたときは、大さじ1杯の「れなり」オリーブオイルにレモンを半分しぼって飲みます。二日酔いにも効きます。毎日食べるお米も、安全で自分の体質に合うものを選ぶようにしています。無農薬、無肥料で育った自然栽培米ミナミニシキの七分米を2年ほど前から食べています。生産者の前田さんが、昔の日本人が食べていた生命力があふれるお米を追求して自家採種を続けて20年以上作り続けているお米です。
— 「時を戻せるなら若いうちに妊娠・出産のことをちゃんと考えたはず。でも治療を通じて人生を豊かに過ごす心構えも学べた」と語る加藤さんは自身の心身とうまく付き合いながら50代、60代を過ごしていきたいと言います。
いろんな経験から学んだのは、自分だけではどうにもならないことがある、ということ。更年期はみんなが通る道。おかしいなと思ったら周囲に助けてとSOSを出せたらいいですね。状況をシェアして助けてと言えること。どれだけ甘え上手になって周りを頼れるか、自分に合った情報をキャッチできるかが大事なのではないでしょうか。
それには自分をよく知っておくことも大切。まだホルモンバランスが安定している40代のうちに自分自身と向き合って自分のトリセツ作りに取り組み(笑)、周囲に甘えられる環境作りをしておく。それが何よりも更年期のクスリになるかもしれません。
〈TOP画像〉トップス¥66,000(エフ)カーゴパンツ¥19,800(ARMY TWILL/ジャーナル スタンダード 自由が丘店)バッグ¥9,350(レイジースーザン)サンダル¥23,100(ドクターマーチン)イヤリング¥39,600チャーム¥17,600時計¥77,000ブレスレット¥19,800(すべてアガット)リング¥15,400(シルバースプーン/アガット)〈末尾画像〉トップス¥39,600 (45R/フォーティファイブアールピーエムスタジオ) バッグ¥23,100(ジャーナル スタンダード 自由が丘店)イヤリング¥26,400時計¥77,000ブレスレット¥19,800(すべてアガット)リング¥15,400(シルバースプーン/アガット)
撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/藤尾明日香(kichi.inc) スタイリスト/河原アンナ 取材/柏崎恵理 撮影協力/POINT ET LIGNE 東京ミッドタウン八重洲店、グリーンショップ 音ノ葉 ※情報は2023年8月号掲載時のものです。