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【更年期のリスク】「卵子と精子」は「せんべいと生クリーム」のようなものです。だから……〈対談〉産婦人科医・高尾美穂先生×STORYライター柏崎恵理 Vol.5

親しみやすく明快な語り口で大反響の産婦人科医・高尾美穂先生とSTORYの連載ページ「更年期のクスリ」を長年担当してきたライター柏崎との対談連載。

ぼんやり知っているつもりだけれど「実はよく分からない」更年期のあれこれについて、柏崎が高尾先生に直球質問。今さら聞けない基本の「キ」にも丁寧に答えてくださり、なんとなく信じ込んでいた思い違いはバシッと斬ってくださる高尾先生のお話は胸がすく思い!

【更年期のリスク】〈対談〉vol.4 更年期になる前から婦人科のかかりつけ医を持っておくべき理由

イーク表参道 副院長 高尾美穂先生 産婦人科医。またヨガ指導者としても活躍。stand.fmで毎日更新される番組『高尾美穂からのリアルボイス』の気さくな語り口も大人気。
STORYライター 柏崎恵理 本誌STORYの連載ページ【更年期のクスリ】担当歴8年。この対談で高尾先生から睡眠不足を指摘され、生活改善を断行し6キロのダイエットに成功。

卵子の数は胎児のときが最も多い。その後は加齢とともにどんどん減っていく

高尾 卵子は、女の子がお母さんの体内にいる胎児のときに、既に作られているんです。妊娠20週あたりまでに急激に増えて700万個ほど。生まれてくるときには、それから減っていて200万個と言われています。

柏崎 お腹の中で半分以下に!

高尾 そうなんです。100万~200万個ほど持って生まれてくるけれど、さらにどんどん数が減っていって、思春期には20万個から30万個ほどになっている。

柏崎 えっ、増えることはなくて下降線の一途?

高尾 そうですよ。生まれてから一個たりとも増えない。まだ生理が来ていなくて、排卵がない幼児の頃も減る一方です。

柏崎 うわ……。

高尾 思春期ですらピーク時から3割以上に減っているのに、30歳なんていったらもう2割以下よ。

柏崎 本当に知らなかった……。

高尾 卵子がなくなっていくのは時間依存性なんです。ピルで20年間排卵を止めていたという人の卵子も着実に減っていく。例えば、あわ立てた石鹸みたいな感じ。時間とともにすーっと消えていく。

柏崎 石鹸の泡! わかりやすい。

高尾 だから20代の卵子と40代の卵子では、当然ですが、数も違えば鮮度も違う。これが男性の場合だと、精子は毎日新しく作り出されるわけです。

お菓子でたとえるなら、卵子は〈工場で作ったせんべいが時間の経過とともに湿気ってしまう〉というイメージ。一方で精子は〈毎日新鮮な生クリームを泡立てています〉という感じ。

柏崎 せんべいと生クリーム。なかなかシビアですね。

高尾 とにかく卵子は1日でも早いほうが若いのよ。

柏崎 女性が若いと子孫を残せる可能性が上がるわけですから、そう考えると男性が若い女性を求める理由にも納得がいくような……。でも、この事実、日本の女性は知らなすぎませんか?

高尾 本当は社会に出るくらいのタイミングで、一度、これからの人生設計を考えるといいんですよ。女性の妊娠出産にはタイムリミットがあるでしょ? あなたの今の話とは逆に、例えば同級生と付き合っているカップルで、彼のほうはまだ結婚したくないけど彼女は早く結婚したいという場合は、動物学的に考えると当たり前の話。35歳を過ぎると明らかに妊娠しにくくなるのは、生物学的に仕方がないんです。

私たちは娘世代に事実を伝え、環境を改善していく役割を担っている

高尾 前にも言いましたが、平均寿命はすごい勢いで延びたけれども、閉経年齢は変わっていない。つまり卵巣の機能、卵巣の寿命は変わっていない。人間は、長生きするようになって初めて「生殖能力がなくなっても生きるんだ!」という現実にぶちあたったわけです。でも、まれに生殖能力を持っていないのに生きている生物もいるんです。働きバチとかね。

柏崎 働きバチ?

高尾 働きバチ自身には生殖能力がないんですよ。では、彼らが生きている意味は何なのか? それは女王蜂が良い形で生殖できるための環境作りです。それが働きバチの役割なんです。

だから、私たちも閉経を迎えたら、周りのために環境を整えてあげよう、次に行こう、ということなんです。若い世代が良いかたちで妊娠出産できるような環境整備をしていくのが役割なんじゃないかな。

柏﨑 働きバチだと考えると、やや辛いですが……(笑)。こういう女性の体の仕組みは、ちゃんと子どもたちに伝えていきたいですね

高尾 そうですよ。

柏崎 私たちの世代は情報がオープンではない時代に育って、もしくは積極的に生物学的なことを知ろうとしないまま、運よく妊娠できて出産に至った人もいれば、たまたまタイミングを逃して気づいたら妊娠しづらい状況に陥った人などさまざまです。

高尾 よくわからないから、概念や常識、通例、みたいな曖昧なものに縛られてきた部分もありますからね。

柏崎 私たち世代の親も、子どもの学生時代には男女交際に厳しくて、勉強のことばかり言ってきたのに、社会人になった途端に「いつ結婚するの?」「子どもを産むなら早いうちがいい」なんて口出ししてきたりして。

高尾 あはは……。

柏崎 今思い出してもムカつくけど(笑)、彼らは彼らで女性の体の仕組みについて無知で、性教育にも消極的だったからですよね。きちんと就職できるまでは性に関することは触れないでおこう、寝た子を起こすな、的な。

高尾 私たちのお母さん世代は仕方ないですよ。

柏崎 私たち世代からは変えていきたいですよね。

高尾 そうですよ。女性の長い人生における設計図を娘に描いてもらうために母親ができるのは「子どもがほしいのであれば、なるべく人生を前倒しに考える」と伝えることです。人生において期限があるイベントは、妊娠、出産と親孝行くらいですから。

柏崎 確かに!

高尾
 妊娠、出産にはタイムリミットがある。生まれてからどんどん卵子が減っていき、その卵子も経年劣化していく。その事実を正しく娘に、もしくは息子に伝えておくべきではないでしょうか。

柏崎
 親からそんなふうに言ってもらえば、どうして結婚適齢期というものがあるのか理論的に納得できますね。私は息子しかいませんが、できる限り伝えていきたいです。親が子どもにできる大事な教育のひとつですね。

高尾 「そんなの知らなかった……」と“後の祭り”にならないようにね!

撮影/西あかり 取材・文/柏崎恵理

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