ライター秋元恵美です。
芸術に造詣のある人ってカッコいいなと憧れるのですが、美術にも音楽にもさほど関心がなくて。そんな私の世界を広げてくれたのが、今回ご紹介する恩田陸さんの『蜂蜜と遠雷』(幻冬舎)です。直木賞受賞作なんですね。
舞台は日本の地方都市で開催される国際ピアノコンクール。かつては天才少女としてジュニアコンクールを制覇し、大きな舞台に立ちながら、母が亡くなって以来、クラシックピアノと遠ざかっていた音大生・亜夜。養蜂家の父とともに各地を転々とし、自宅にピアノを持たない15歳の少年・塵。名門ジュリアード音楽院のマサル。その他多くの才能を持ったピアニストたちが、長い予選を戦うなかで、観客を音楽の世界へとぐんぐん巻き込んでいきながら、音楽的にも人間的にも大きく成長していく姿が描かれています。
子供が小さいときに、浜松に住んでいたことがあったのですが、浜松はピアノの町で、妊婦さんは子供が生まれるより前に音楽の先生を予約するというほど、音楽家を目指す人の多い町でした。周囲には、ピアノやバイオリンのレッスンのために、東京に通っている子もたくさんいたほど。それでも、プロの音楽家になれるのは本当に一握りです。物語の中には、たくさんのありえないほどの天才がいて、ちょっとマンガチックではありますが、それでも、誰が一番か、定義のない世界で、表現のの高みを目指す姿勢には、青春のひたむきさを熱く感じました。
お話の中に登場する音楽をいちいち検索して、聞きながら読んだのですが、コンサートホールで生の演奏をぜひ聞いてみたいという気持ちにさせてくれる作品でした。
ぜひ、あなたも、音楽を聴きながら、読んでみてくださいね。