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Lifestyle「更年期」のクスリ

人気キャスター伊藤聡子さん、40代半ばの子宮筋腫、離婚…どん底期からの生還

人生、どんなときに何が起きるかわかりません。伊藤聡子さんは45歳のとき、子宮筋腫の手術を受けた際、感染症にかかり、生きて帰れるかも不明のどん底に。そんな逆境で変えることができた思考が更年期を乗り切る知恵とパワーになったと言います。

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○ 伊藤聡子さん(56歳・キャスター、コメンテーター、事業創造大学院大学客員教授)

1967年7月3日、新潟県生まれ。大学在学中からTBS「サンデーモーニング」やテレビ朝日「スーパーモーニング」などのキャスターを担当。2002年からニューヨークの大学に留学し、帰国後仕事を続けながら、事業創造大学院大学にてMBAを取得。現在、客員教授や企業の社外役員、「ひるおび」(TBS)はじめ情報番組のコメンテーターの他、講演会などでも活躍中。


どん底だった45歳からの生還と
ホルモン補充療法で更年期が穏やかに

一般的な更年期、45歳から55歳くらいという時期は過ぎている私ですが、更年期らしい症状はあまり感じずに過ごしてきました。自己分析すると、多分更年期が始まるとされる40代後半ですごく運動をしていたからじゃないかなと思います。朝起きてジムに行って筋トレしてからちょっと走って汗をかいてからマシーンを使って負荷をかけるトレーニングをしたり。

そこまでがむしゃらに体を動かしていたのも、45歳で心身ともに大きな転機があったから。もともと子宮内膜症など、女性ホルモンの働きがイレギュラーなことによって引き起こされる病気があったりして婦人科系が弱かったのですが、子宮筋腫が大きくなって手術をすることに。

腸に珍しい腫瘍も見つかって同時に取ったのですが、そんな経緯もあったのか、手術に7時間ほど要して、その後、感染症にかかってしまったんです。お腹が痛くて痛くて、何をどう処置しても一向に良くならない。あまりの体調の悪さに「私、ほんとに死んじゃうのかも」と覚悟しました。

実はちょうどそのとき、プライベートでも離婚という一大転機があり、体と心、両面からの打撃でまさに人生どん底という状態で、毎日痛みと闘いながら病室の白い天井を見つめていました。

— お昼の情報番組「ひるおび」の水曜コメンテーターとして、時事問題や世相について爽やかで明るい語り口で解説してくれる伊藤聡子さん。現在は客員教授や非常勤講師、企業役員など多彩な活動を展開している彼女にそんな苦しい時期があったとは驚きです

子宮筋腫だけなら1週間で退院できるはずが、1カ月に長引き、それも本当に回復するかどうかもわからない。不安と心細さに押しつぶされそうになり、遺書まで書いた私を救ってくれたのが、入院前にたまたま手に取った中村天風の『幸福なる人生』です。この本にどれほど勇気づけられ、背中を押されたことか。

一言で言えばとにかく、前向きに、ポジティブシンキング! なんです。「考えている暇があったら動け」ということ。人生というものは限りがある。生きている時間は当たり前じゃないことに改めて気づけたんです。

この後、退院できても仕事に復帰できるような体調に戻れるかどうかもわからない。生計を助けてくれる配偶者ももういない、自分一人で生きていくしかない中での健康不安で絶望しそうになる中、本を読んでは鏡を見て「絶対、負けない!」と自分を鼓舞し続けました。

もちろん、入院前もいただいたお仕事には最善を尽くしてきたつもりですが、「もし仕事に復帰できたら、頼まれることはなんでも引き受けてベストを尽くそう」と改めて決意しました。

◇ ホルモン補充パッチで症状をソフトランディング

— 予想外の感染症にかかり、たまたま持っていた本に助けられ、絶望の淵から生還した伊藤さん。病室で「何のために生まれて、生かされて、そして何をするべきなのか」を考え続けた時間の中で「やれることは後悔なくやろう」「生かされている人生、何でも楽しみながら全力でやり遂げよう」という思いに至ったと言います。

更年期症状は感じていないと言いましたが、「できることはやる」の一環として、お世話になり続けている婦人科のドクターからHRT(ホルモン補充療法)(*1)を勧められて、昨年から2日に1回、皮膚からエストロゲンを吸収させるパッチを貼り替えています

ドクター曰く「血液検査では女性ホルモンの値が急激に低下しているわけではないけれど、補充療法をした方が更年期をソフトランディングできるから」とのこと。骨密度キープのためにも効果が期待できるということもあり、今のところ調子がいいのでしばらく続けてみようかなと思っています。

【*1・HRT】 エストロゲンを補うHRT(ホルモン補充療法)にはいくつか種類があります。経口剤と経皮吸収型製剤(塗布剤、貼付剤)などがあり、伊藤さんが行っているのは下腹部などにシールを貼る療法。婦人科で処方されたものしか貼れないので、必ず受診して検査したうえで始めましょう。

◇ 凹み切った時期があったからこそ、悩む前に体を動かす習慣が定着

— 45歳で人生観が変わる経験をし、その後、考え方や働き方まで変わったと語る伊藤さん。多忙で休みが取れなくなっていく中で、〝ワーケーション〟(ワークとバケーションを組み合わせた造語で、働きながら休暇をとる過ごし方)を取り入れるようになります。

講演会なども多い仕事なので、自分でパワーポイント資料を作るのですが、自宅で作業していると煮詰まってしまうことも。どうせなら旅を楽しみながら、その地元ならではの美味しいものをいただきつつ、できれば温泉などにもつかって仕事できたら最高!(笑) ということで時間を見つけては日本各地のリゾート地や温泉に出かけて〝ワーケーション〟を実践しています。

特に好きなのは佐賀県の嬉野温泉や鹿児島県の霧島温泉。なんとなく九州のお湯が肌に合うような気がしてよく通っています。

また肌といえば、甘酒! 甘酒は「飲む点滴」と言われているほど栄養価が高いので、疲れたなと思ったときに少しだけでも飲むと元気が湧いてきます。肌の状態がいいと気分も上がり、自分のパフォーマンスがワンランクアップするような気がするのでチョコラBBドリンクも欠かせません

ワーケーションの楽しみの一つとして、食が挙げられると言いましたが、私にとって食べることから得られる元気もまた特別なもの。今もっとも気に入っているのが、横浜・みなとみらい地区にあるアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーの38階にあるKitchen MANE

私自身、数年前からお魚を意識してとるようにしようと三重県熊野市から市場で値がつかない旬の魚をお任せでお取り寄せしていて、休日に黙々とさばいて焼き魚用に冷凍したりしているのですが、Kitchen MANEも食の持続可能性に配慮したお料理を提供していて、シェフが同じところから送ってもらっているお魚を素敵に調理して出してくれるので勉強にもなります。レストランからの展望も素晴らしく、目も舌も満足、食の未来にも安心、全方位が満たされます

こういう自分の経験や思いを口にできるのは10年以上が経ったから。それまではなかなか口にできませんでした。当時のことは振り返ることも辛く、怖かったですから。

でも、どん底を味わってからはどんなこともありがたく思えてがむしゃらに進んできました。だからこそ仕事の幅が広がったり、キャリアが築けたりしたところもあるので、人生何がきっかけになるかわかりません。辛いことでも時間が経てば少しは笑って話せるようになるかもしれません。

人生に意味のないことは一つもない。プラスにするもマイナスにするも自分次第です。そしそしてもしも「何のために生まれてきたのかな」と考えることがあったら、興味が持てる、このために時間を使いたい、と思えるものを必死で探してみてほしいです。

迷っているならぜひ働いてもほしい。仕事を通じて人と出会って、関わってつながっていくものが人生を、自分の考えを豊かにすることもあると思いますから。考える暇があるなら動くこと。45歳、という、ちょうど更年期の入口でどん底を味わって刻まれた思考が、人生後半を助けてくれていることに今は感謝しかありません。

ライフワークとして取り組んでいる“ワーケーション”にぴったりな リニューアルした葉山ホテル音羽ノ森。海と富士山を見ながらの仕事ははかどります。

〈TOP写真〉ワンピース¥88,000イヤリング・靴(ともにスタイリスト私物)〈末尾写真〉プルオーバー¥39,600パンツ¥39,600ブローチ(参考商品)イヤリング・靴(ともにスタイリスト私物)(すべてポール・スチュアート/SANYO SHOKAI カスタマーサポート)

撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/櫻井由美子(ARTS) スタイリスト/荒木ゆうこ(プラニーAO)  取材/柏崎恵理 撮影協力/Kitchen MANE、葉山ホテル音羽ノ森 ※情報は2024年4月号掲載時のものです。

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