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Lifestyle「更年期」のクスリ

高橋尚子さん「更年期にも人生にも、無駄な時間はありません」

「忙しさに紛れているせいか、更年期症状は特に感じない」と言う方がいる一方で今も多忙を極める超一流アスリートの方々が揃って言うのが「体に敏感でいることが仕事だから不調にすぐに気づいた」ということ。自分自身の体の専門家だからこそ、症状があれば即座に改善する習慣が当然のようです。

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○ 高橋尚子さん(51歳・オリンピック金メダリスト、スポーツキャスター)

1972年5月6日、岐阜県生まれ。2000年、シドニーオリンピック・女子マラソンの金メダリストであり、女子スポーツ界で初の国民栄誉賞を受賞。現役引退後はスポーツキャスター、マラソン解説者、マラソンイベントなどのゲストランナーとして日本はもちろん世界を飛び回る生活。


日々真剣に体の声を聞いているからこそ
更年期の不調に気づけました

50歳になる前くらいでしょうか。普段はほとんど汗をかかない私ですが、突然脇の汗が急激に増えた(*1)時期がありました。顔や背中などはかかないのですが、脇だけ汗が止まらず、汗が目立ちそうな服を着るときは脇汗パッドが欠かせませんでした。

それと同時期くらいの48歳前後では、デリケートゾーンのかゆみ(*2)が3年ほど続いて、かなり悩みました。総合病院に行っても原因はハッキリせず、塗り薬をいただいてかゆみを抑えていましたが、それから肩などに赤い斑点ができるほどの乾燥も始まって。今考えると更年期症状の一つだったのでは? と思います。また、足の裏だけが熱くて、寝るときは足だけ布団から出しているほど。足裏のほてりもよくある症状の一つだと知って驚いたものです。

【*1・局所的な汗】 最近「原発性局所多汗症」とも言われ、注目されている症状の一つ。更年期で女性ホルモンの減少による自律神経の乱れからくるものとは別物とも言われますが、気になる人は婦人科でホルモン量のチェックを受けてみるのもおすすめ。
【*2・ デリケートゾーンのかゆみ】 女性ホルモンには月経を起こす以外にもさまざまな作用があります。その一つに、陰部・デリケートゾーンの潤いの維持があるそう。 そのため、更年期に女性ホルモン分泌が減ることにより、デリケートゾーンの潤いが減少し、乾燥しやすくなって、かゆみを伴うのだとか。臭いの悩みも含め、市販薬で一時的にかゆみを抑えても根本的な解決にはならないので、婦人科を受診してみて。

◇ さまざまな症状も悪化する前に対処できました

— 2000年、シドニーオリンピック・女子マラソンの金メダリストであり、Qちゃんの愛称で親しまれている高橋尚子さん。更年期にはエストロゲンの低下により、局所的に汗をかいたり、乾燥によるかゆみなどが起こることもあります。ともすると見逃しそうな不調も、たえず自身の体と向き合って対話しているからこそ違和感にいち早く気づけたと言います。

私はマラソンの現役時代はもちろん、今も体の声を聞くことが大切な仕事と捉えています。食べる・寝る・運動という3つの柱を中心にして、いかに自身の体を知り、普段と違うところがあれば即座に対処するかがパフォーマンスを高めていく基本。長年、誰よりも「自分専門家」として細かく健康観察してきたので違和感の発見が早かったのだと思います。

とはいえ、胃腸にポリープができやすい体質で、以前、大腸ポリープを6〜8個ほど取ったことがあるので、2年に1回の胃カメラと大腸の内視鏡検査だけはしっかり行います。でも実は婦人科へは一度も行ったことがなく、そろそろちゃんと検診にも行かなくてはと思っています。

更年期はもちろん、日々時間を重ねて変化していく体とメンタルを調子良く保つために意識しているのは「観察」。自分の体の声を丁寧に細やかに聴くことはアスリートにとって最も大切な意識です。

それと同時に大事にしているのがオンとオフの切り替え。そのスイッチングを特別なものにしてくれているのが、5年ほど前からよく利用させていただいている渋谷区南平台町にあるイタリアンレストラン・アンジェパティオ。陸上の桐生祥秀選手や鈴木亜由子選手など大切な友人とゆっくりお話しする際によく訪れています。

南イタリアのREGIONALE(地方郷土料理)をアレンジしたお料理の美味しさはもちろん、インテリアも本場から取り寄せたレンガや床タイルなどを使っていて、まるで本当に南イタリアのレストランにいるよう。お店の方のホスピタリティも素晴らしいんです。

アンジェパティオさんに行くときは私が友人を招く側なので、もてなす側の私が安心してお任せできるような接客をしてくださって毎回感激しています。実は昨夜も田中希実選手と食事していたので「泊まったほうがいいのでは?」と言っていただいたほど(笑)。

食べることに関連しますが、体に入れるものを吟味するという意味では、サプリメントも厳選しています。現役時代は試合と生理が被らないようにピルを飲んで調整する選手もいましたが、私は一度アメリカでのトレーニング中、病院で処方されたピルを1錠飲んだだけで翌日、誰にも私だと気づかれないほど顔がむくんでしまったので、薬には抵抗がありますし、コントロールしてきた結果、効きすぎる体質なので滅多なサプリメントは飲めません。

唯一摂取しているのがニッピコラーゲン100。靭帯を強化し損傷の予防や回復を早めたり、骨や爪を丈夫にしたり、関節痛を改善する効果があるそう。もともとは膝をずっと痛めていた私のパートナーがこちらを飲んでから膝の調子が良くなったのを知って2年前から飲み始めました。飲み方は簡単。熱いものでも冷たいものでもよく溶けて、味も変わらないので、毎朝飲むコーヒーやお味噌汁などに入れています。

また、元気ポイントとしては愛犬ラッピーと過ごす時間も大切。17歳になるラッピーが家族になってから2020年まで年に3回、アメリカ・コロラド州のボルダーに一緒に行き過ごした時間はかけがえのないものでした。2020年以降はコロナ禍とラッピーが高齢になったため渡米できなくなりましたが、今も一緒にいる時間は私の癒しです。

そしてもちろん、走ることも私の健康の主軸。現役後は日本全国のマラソンのゲストランナーとしてお招きいただいています。例えば7時間という時間制限のあるマラソン大会だと、最後尾からスタートして「頑張って!」と叫びながら前半は皆さんと一緒に走ります。次に後半地点に行って先頭の方からまたハイタッチ。1万人規模の大会だと2万回以上はハイタッチすることもあります。大会によって20㎞〜30㎞は走りますが、脚力よりも声のほうが先に潰れそうになることもしばしば(笑)。でも、今までいただいた応援を今度は私が皆さんにお返しする番だと思うと、逆に私のほうが元気をもらえます。

◇ 更年期にも人生にも、ムダな経験はありません

— 自分専門家として常に自分の体に寄り添っている高橋さんですが「体を知るのに難しいテクニックはなくていい」のだそう。

例えば、1日1回、アキレス腱をゆっくり片足ずつ伸ばして「今日は強張ってるな」「ふくらはぎがつりそうだな」という、違いを感じるだけでも大丈夫。ちょっとした不調を感じ取れれば、全身に注意を払うことに繫がり、結果的に「気」を全身に巡らせることができます。

またメンタルケアも大事。私の場合は、何を言っても言わなくても(笑)、いろんなことを取り沙汰される時期があったおかげでポジティブ変換が得意になりました。凹みもしましたが、あるとき「走るだけが練習じゃないんだ」「この経験は強い精神を持てというメッセージなのかも」と思えてからは、何事もマイナスで終わらせない思考の転換ができるようになりました

元々は心配性で弱い選手。20歳くらいまでは全くの無名選手で、努力が足りなかったら弱い自分に戻ってしまう恐怖が常にありました。そのため戻りたくないと、強くなる工夫と努力を続けていました。もちろん今も同じです。気を抜かず、ストレスは溜めず、自分のペースで健康に向き合いたい。と言っても決してストイックではなく、特に食に関しては我慢せずに食べるのがマイルール。夜中の2時に突然カップラーメンを食べ始めてパートナーに驚かれることも(笑)。でも、食べ物でストレスは感じたくないんです。食べたら動けばいいんですから。

そうやって適度に肩の力を抜きながら、更年期という約10年間の谷間を乗り越えた後も続く人生というコースを軽やかに走り抜きたいですね。

走れるときは90分以上を目標に、“探検ラン”と称して、いろんな道を探検しながら走っています。

〈TOP写真〉ワンピース¥31,900(POM AMSTERDAM)〈末尾写真〉トレーニングウェア(衣装協力/アシックス)

撮影/田頭拓人 へア・メーク/高城裕子 スタイリスト/森 美幸(監物事務所)取材/柏崎恵理 撮影協力/アンジェパティオ ※情報は2024年3号掲載時のものです。

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