せっかく今まで取り組んできたスポーツを子どもが急に「やめる」と言い出した。これを乗り越えれば成長するかもしれないのに……。そんな時は、どうやって対処すればいいのか。若きアスリートの母たちに聞きました。
今回はバレーボール男子日本代表 髙橋 藍選手の母・小百合さんです。
「どうやったらバレーボールをやめられるん?」と言われた時期もありました
バレーボール男子日本代表 髙橋 藍選手(22歳)
2001年京都府生まれ。高校卒業後日本代表に初選出。現在、イタリアセリエAのモンツァで活躍中。
<母>髙橋小百合さん(49歳)主婦
父がアメリカ人、母が日本人のハーフ。中高時代は軟式テニス部。高校時代は近畿大会出場経験あり。
――パリオリンピック出場権獲得の試合では大活躍でした。藍さんは小さい頃からバレーボールに興味があった?
「いえ、全くありませんでした。むしろ、したくなかったぐらい(笑)。夫は高校球児だったので、夫婦2人ともにバレーボールを知りませんでした。兄の塁が近所のチームに加入して、藍もそこに連れて行っていましたが最初は見ていただけ。ところが、ある日、監督が藍に『メンバー足らんから来て。ポケモンカードあげるから』。それが始めたきっかけです(笑)。
もともと藍は何でもそつなくこなすタイプだったのですが、始めた頃は、ボールを1球打つごとに『いつまでやるん?』と言っていて、全くやる気がなかった。そして、塁が中学に入学してチームを抜けた時に『やめたい。なんで俺が行かなあかんの? どうやったらやめさせてくれるん? 土日も友達とゲームして遊びたい!』と、泣いて訴えてきたことがあります」。
――それでもやめさせなかったのは?
「もしやめたら、たぶん家でゲームばかりするようになる…と思い、その時は『ああ、わかった、わかった…』と曖昧に返していたことが良かったんでしょうか(笑)。その後ほどなくして、小学校の卒業文集には『プロになる!』と書き、さらに『中学でお兄ちゃんと一緒のバレー部に入る』と言い出して。驚きましたね。やはり、私より兄の存在が大きかったのかもしれません。藍は『今がいちばん楽しい』と言ってくれて嬉しい。あの時、やめさせないで良かったと本当に思います」。
○ 私なんかより、兄の存在が大きかったのかもしれません
取材/東 理恵 ※情報は2024年4月号掲載時のものです。