ウェディングプランナーとして第一線で活躍し、そのハイセンスなライフスタイルにも注目が集まる黒沢祐子さん。43歳で離婚を経験し、その後導かれるように鎌倉へ移住。移住先で自分を見つめ直したら、そこで待っていたのは運命の出会いでした。離婚から再婚に至るまでの道のりや、大人婚の秘訣について、赤裸々に語っていただきました。
○話してくれたのは...黒沢祐子さん(48歳)
新卒で自動車メーカーに就職後、ウェディングプランナーに転身。2008年より、フリーランスのウェディングプランナーとして独立。2016年には(株)YUKOWEDDINGを設立し、これまでにおよそ1000組ものカップルのウェディングを手がける。現在はウェディング・ライフスタイルプロデューサーとして、ウェディングのみならず、インテリアコーディネートや洋服のディレクションまで幅広く活動中。
自然の中に身を置いたら、自分を丸ごと受け入れられた
鎌倉に移住したのは、仲の良い友人が鎌倉に住んでいたことがきっかけ。当時、コロナ禍でリモートワークが常態化して移住者も増え、鎌倉周辺は大人気だったんです。紹介してもらった地元の不動産屋さんに、一軒家で陽が入る場所がいいと伝えたら1軒だけあると言われて。内見をしたところ、入った瞬間に一目惚れ! オーナーさんがこだわりを持って建てられたのが伝わり、直感的に「ここだ!」と即決でした。
絶対にここに住みたい! と思った私は、”なぜ鎌倉に住みたいのか”という理由をお手紙にしたためました。離婚してシングルになって、改めてどう生きるかを考えていたタイミングでこの場所に惹かれ…と思いを書き綴り、気づけば4〜5枚の長文に(笑)。結局倍率は20倍だったそうなのですが、運命的な出会いで無事に住むことが決まり、鎌倉生活がスタート。
ライフスタイルの変化に伴って、マインド面もガラッと変わりましたね。移住して自分自身が変化していなければ、今の夫にも出会っていなかったと思います。ずっと仕事に没頭して駆け抜けてきた私にとっては、都会から離れた鎌倉での暮らしが、自分を見つめ直すきっかけになった。誰にも会わずに1日が終わることもあるくらいでしたし、常に自分と向き合わざるを得ない環境だったんです。
人と会わない分、海をお散歩しながら、朝日が昇って夕陽が沈むのを見たり、満月を眺めながら波の音を聴いたり…そんな風にいつも自然と触れ合っている環境だったので、雑念も浄化されていきました。大自然の流れに身を任せることで、無駄なものが削ぎ落とされるような感覚でしたね。生活もバイオリズムに合わせて朝日と共に目覚め、お香を炊いて丁寧にお茶を淹れて、朝ごはんをゆっくり食べる。
日常の中でシンプルに自分と向き合えたので、自分の機嫌は自分でとるし、ダメな自分も認められるようになりました。やっぱり「自分なんて」と思ってしまうと、素敵な人に出会っていても気付けなかったり、心を開けなかったりすると思うんです。人間なので、ネガティブになってしまう瞬間はあると思うけれど、できるだけ楽しいことや描きたい未来をイメージしていくと、それが形になっていくはず。私は自分をまるごと愛することができたからこそ、彼に出会えたと改めて思います。
余裕を持って相手の気持ちに寄り添えるのも、大人婚だからこそ
私たちには子どもがいないということもあり、いつも新鮮な気持ちでいられるのは、大人婚の良さかもしれません。結婚しても恋人の延長線上にいるような感覚。あとは大人だからこそ、感情でぶつかる瞬間が若い頃よりも圧倒的に減りました。きちんとディスカッションして、足並みを揃えて物事を決めていけるのは、一緒に人生を歩む上ですごく重要だと思います。お互いに経験値がある分、相手を理解しようとする姿勢や包容力も、昔よりありますよね。
思い起こせば最初の結婚の時は、夫の姓で呼ばれることに少し違和感があったんです。だから仕事はずっと自分の姓で続けていました。今回はそんなこだわりは皆無。大人になると心に余裕もあるので、変なこだわりが解けていきました。”港区の鎧”を脱いだというか(笑)。「こうあるべき」という凝り固まった考えから、「こうすればいいじゃん」という軽やかな考え方に変わって、相手に自然と寄り添えるように。
港区に住んでいた時は、波があってアップダウンが激しい生活だったんです。だからこそ鎌倉に引っ越す時に、”凪”の生活をしたいと思っていました。実際に越してみると、凪の生活を送ること自体が実はトレーニングで(笑)。以前はすごく感情的だったので、鎌倉へ来てフラットでいるためには「怒らない」とか「落ち込まない」という感情のコントロールが必要でした。でも大自然に囲まれていると、「自分はなんてちっぽけな存在なんだろう」と気づくことができた。自然を前にすれば不思議と穏やかになって、感情の起伏も無くなっていました。
東京って情報も多いからこそ、他者との比較を無意識にしちゃうじゃないですか。隣の芝生は絶対に青く見えるんですよね。その点、大自然の中にいると、比較なんて無意味だなあと。鎌倉という環境が、「他と比べないで、自分を受け止めること」を後押ししてくれたように感じています。
婚活がうまくいく秘訣は、"自分を丸ごと愛すること"
結婚したい、婚活しなくちゃと思っている人こそ、まずは”自分のことを愛せているか”ということを考えてみてほしいです。それは”自分に自信があるかどうか”ではなくて、”どんな自分でも愛せているか”ということ。色々あったけど、「よく頑張ったね」と自分を労えるかどうか。それができる人って魅力的だと思うんです。婚活がうまくいってない人は、周りと比べたりネガティブになっているところがあるのかなと思います。そうなると、魅力を最大限に発揮するのは難しいですよね。
誰にだって悩みはあるから、そんな中で笑顔でいることも大切。絶対に「笑う門には福来る」と思っているので、笑顔になれる選択をしていけたら良いですよね。落ちこんだ時にどうしたら気持ちを上げられるのか、いくつかパターンを持っておくのも大事です。私は美味しいご飯とお酒が好きなので、料理をしてお酒を飲んだり、好きなお店で食事ができたら、それだけでもう幸せ(笑)。器にもこだわって、今日「食べたい!」と心から思えるものをいただくことがエネルギーチャージです。
結婚してからも、「人と一緒にいる」ということにおいては努力はつきもの。やっぱり他人同士だから気はつかうし、怒るポイントとか喜ぶポイントとか、相手の特性に気づくのにも努力が必要なんです。でも自分のことで精一杯だと相手の気持ちにも気づけないし、寄り添えない。だから自分の土台をまず作って、心の余裕を持つことが必要かなと思います。
彼は都内に住んでいたので、私は鎌倉と彼の家を行き来する二拠点生活を送っていました。でももっと2人の時間を大切にしようと、多忙な彼に合わせて鎌倉での暮らしを手放すことに。彼も「ずっと1人がいい」と思っていた人だったのに、出来るだけ一緒に居たいという思いに変わったらしく…。昔の私なら、「鎌倉を離れたくない!」と自分ファーストになっていたと思いますが、彼の気持ちを受け止めつつ、自然に歩み寄れるようになりましたね。
今は目の前に緑が広がる都内の家に引っ越し、ひとつ屋根の下で穏やかに暮らしています。ずっと全力で走り続けてきた仕事は、夫と一緒に住み始めたことを機に、できる範囲でのんびりやっていこうと思うようになりました。
当面のビジョンは、山梨に移住して一から家を建てること。友人が住んでいたり、美味しいレストランもあるので、夫婦揃って山梨が大好きで。空気がぴりっと澄んでいる場所はやっぱり気持ちいいですよね。お花も育てたいし、お野菜も栽培してみたい。自分たちが飲む分のワインをつくるのも面白いよねと話していて、夢が膨らんでいます。そんな風に、これから2人で描く未来がすごく楽しみですね。
撮影/沼尾翔平 取材/渡部夕子