“江口のりこさんが出るなら絶対面白い!”エキセントリックな役から等身大の役まで、ありとあらゆる役柄をこなし、STORY読者に絶大な人気を誇る江口のりこさん。8月公開の江口さんの主演映画「愛に乱暴」では、STORY世代サレ妻を熱演されました。作品に対する思い、そして、主人公桃子へのメッセージまで、江口のりこさんのインタビューをお届けします。(第3回/全3回)
− 主人公、桃子はまさしく、40代“ゆらぎ”真っ只中と感じました。桃子を演じるにあたって、共感できたこと、自分とは違うと思ったことはありましたか?
自分とは全然違う人間ですね、桃子は。ただ原作を読んだ時に、桃子の気持ちに寄り添って読めたので、桃子のことは理解できました。私だけでなく、割とこの年代の女性だったら、(ああっ)って理解できるのではないかな。共感……というか、自分とは全然違うキャラクターですけれど、わからなくはないという感じです。桃子とは、状況というのか、抱えているものが全然違います。桃子は主婦ですしね。
− STORY世代、不倫ネタは男女ともに上がってきます。2人の関係に関して江口さんの率直なご意見を聞かせてください。ちなみに、真守役・小泉孝太郎さんの面白エピソードは?
桃子と真守の夫婦2人にも歴史があって、最初から、ああではなかったと思う。最初はもっと自分のことを必要としてくれていたし、でも、時間が経ち、いろいろあって、もう自分は完全に求められていないと、桃子はどこかでわかっているんだけど……わかっているんだけど、いつものように生活しているわけですよね。真守役の孝太郎さん。今回の役柄だったり映像で見る雰囲気が、今までにない孝太郎さんのイメージですよね。この旦那さん役を孝太郎さんがやられるって聞いた時は驚きました。一緒に芝居していて楽しかったし、面白い方です。孝太郎さんのおもしろいところは、なんかすっとんきょうなところ。あと、変な人です。ゴルフは控えてくださいって言われているのに、行ってしまう。撮影があるのに、どんどん(日焼けして)真っ黒になっていくので、カメラマンさんが、画がつながらなくなるのでは? と心配されていました。それでもゴルフに行くんですよ(笑)。そういう彼の子どもっぽいところがチャーミングですよね。
− 自分の居場所がなくなることに関して、江口さんも共感するような経験をされたことはありますか?40代女性がその状況に陥った時、どうするべきと思いますか?
居場所を奪われるっていうのは、私は経験ないかな。あったものが奪われるというのは、絶対に辛いですよね。奪われたらどうするか……。違うことをするしかないですよね、全部捨ててね。奪われてしまったら、しょうがない。
− 桃子が途中から、振り切った行動に出るようになり、どんどん苦しさが募っていきます。演じた時の江口さんのご感想をお聞かせください。
大体順番に撮ってもらっていて、最初はゴミを捨て、お母さんと少し話をして、夫を送り出してっていう、そういう日常が何日か続く。桃子は他の誰にも会わないわけです。でも撮影中盤になると、石鹸教室で元上司や後輩に会ったり、後半あたりでは、夫の不倫相手に会って。人と会うことによって、桃子の中で物語が動き出す、そうすると桃子の中の感情も大きく動くし、その中で、畳をめくってチェーンソーのシーン。監督がうまく軌道に乗せてくれたなと思います。それが監督の戦略というか、順番に撮って行った方が芝居が乗っていくだろうということで、そういうふうにしてくれたんだと思います。ほとんどのシーンを、ワンシーンワンカットで撮っているんですよ。撮影もフィルムを使っているため、なんテイクも撮れないんです。だから、カメラマンさんの緊張もすごく伝わってくる。その緊張は、全然邪魔にはならず、私にもいい刺激を与えてくれましたね。みんなでそのシーンを作っているって感じがして、本当にいい現場でした。
− ラストシーン。江口さんがこの桃子を演じる時に大切にしたことはなんでしょう?
ラストのあの言葉……それがきっかけで、ああいう状態になったわけだから、絶対に聞き逃しちゃいけない! って思いました。全部振り切って、季節も変わって、設定では秋になって、夏にあった出来事を、ちょっと距離を置いて“あの時の自分を見ている”みたいな感じが出ればいいなと思って演じました。
− 最後に、映画の見どころと、“隠れ桃子”にメッセージを!
見どころかー……とにかく見てほしいですね。私からは、メッセージは特になく、監督はそういうのをお持ちなんでしょうけど、とにかく見てほしい。
アラフォーママたち、もしかしたら、桃子みたいな方もいますか? 自分の居場所探しのために、子どものお受験、夫に尽くすなど……。そういう方達に向けて、ある意味、“桃子”に一言かけるとしたら……ですか? そうですね、映画館に行って、美味しいものを食べて、デパートや街をぶらっとするのはどうでしょう? それだけでも気分が変わると思います。大きなことは言えないですけどね、私。ほんと自分を大切にしてください。それだけです。
徐々に平穏を失っていく主人公・桃子を江口さんが演じ、夫・真守を小泉孝太郎さん、真守の母・照子を風吹ジュンさん、真守の不倫相手・奈央を馬場ふみかさんが演じた。監督は『おじいちゃん、死んじゃったって。』『さんかく窓の外側は夜』の森ガキ侑大氏。8月30日ロードショー。
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衣装協力:シャツ¥170,500スカート¥171,600シューズ¥68,200/すべてMame Kurogouchi
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撮影/河内彩 ヘア・メーク/鈴木彩 スタイリスト/清水奈緒美 取材/竹永久美子