体だけでなく夫婦関係においても感じてしまう、40代のゆらぎ。それは夫婦のホルモンバランスの変化に起因する可能性も?ツライと感じる〝今〟と、その先に何が見えるのか? 小島慶子さんと高尾美穂先生の対談にその答えはあるのかもしれません。
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小島慶子さん / 高尾美穂先生 profile
<右>小島慶子さん
エッセイスト、タレント。1972年、オーストラリア生まれ。TBSアナウンサーを経て、現在は各種メディア出演、執筆・講演活動と精力的に活動中。著書多数。
<左>高尾美穂先生
産婦人科医。イーク表参道 副院長。ヨガ指導者としても活躍。stand.fm「高尾美穂からのリアルボイス」では多くの女性の体や心の悩みに答えている。
小島さんが経験した夫婦関係の変化と更年期との関係を、高尾先生がひもときます
小島さん
6年前、夫と「エア離婚」の約束をし、本来であれば次男が大学入学した今年、お別れをする予定だったのです。でも、夫の変化、そして私自身の心境の変化があり、一旦踏みとどまる決心をしました。
高尾先生
小島さんは、世の日本女性の1・5歩くらい先を行ってくれてますよね。「別に即刻離婚という選択だけじゃないよ、世の中にこういう可能性があるよ」と。そして、今さらに、その次を見せてくれている。
小島さん
この世代ならではの、夫婦関係の相談も多いのでしょうか?
高尾先生
初めは、更年期の相談で来られて、大体2回目までは家族の話もしてもらいます。そうすると、やはり同時に夫婦問題を抱えている方も多くて。例えばハラスメントや暴力、依存症など実害が出ている場合に、経済的に可能であれば、それはどうぞ離婚をとお話しすることも。話を聞いていて、なにか違うなと思った時には、時間を重ねていくと見えてくるものがあるのでは? というアドバイスはします。
小島さん
私たちも6年の月日がありました。
高尾先生
その6年間で起こることといえば、子どもが6歳大きくなって独立するとか親の手が必要なくなる、また子どもが意見を持つようにもなりますね。自分も夫も6つ年をとる。その中で社会的な状況、体調面、今回のように考えが変わることも。時間が経つということは一つの解決策になります。
小島さん
私自身はその間に更年期症状が悪化しました。今思うと、夫も更年期だったのか? と思う節も。
高尾先生
女性は大体50歳前後でみんなが経験するものですが、実は男性更年期に年齢は関係ありません。小島さんのパートナーは、ADHDと診断されて離職されたご経験があるので、自分の仕事がなく働けないこと自体が自信を失う理由になっていたかと。それ以前に大好きな慶子さんに嫌われるようなことをしてしまったと後から気づき、そのストレスにより、テストステロン数値が下がって男性更年期障害の状態になっていた可能性も考えられます。
小島さん
確かにその頃、彼と話していてメンタル落ちているなと……。私はすぐにカウンセリングを受けるので、夫にも受診を勧めたけど頑なに拒むんです。絶対に不調を認めない……呪われているみたい。
高尾先生
日本人男性みんながかかっていた呪い。強くあれ、泣くな、相談は「弱み」だと。世のイメージが彼らを救いのアクションに繫げられない。あとは男性更年期は性機能低下が含まれるので、社会で大きく指摘しづらい病名なのかもしれません。
◇ 何度話しても平行線だった夫婦関係が、動き出したあるきっかけとは……?
小島さん
そしてその6年の間にコロナ禍も。家族はオーストラリア、私は日本。初期は自分も死ぬかもしれないと恐れおののきましたし、もし誰かが罹患し命を落としてもお別れすら言えない状況。そこで初めて、やはり夫とは人生の良いことも悪いことも含めて共有しているものが大きく、彼を失うことは大きな喪失だと気づいたのです。
高尾先生
年の近い知り合いが余命2カ月と言われ本当に亡くなったばかりで……。毎日生きているといろんな悩みがあるけれど、それ以来、命がもしあと2カ月しかないのなら、もっと大事なことがあるでしょう? って答えが出るようになりました。小島さんがおっしゃる通り、コロナで死ぬかもしれないと命の終わりを考えた時に、では何を大事にしたいかが見えてきた。そこなんでしょうね。
小島さん
もし感染して死ぬとしたら、私の人生で一番尊かったものはなんだろう? って。それは子どもたちで、記憶を分かち合えるのも、彼らを同じくらい大事に思っているのも世界に夫一人しかいない。それが大きかった。同時に彼も変わったんです。それまでは、私がどんなに彼に意見を求めても、考えずに逃げたり平謝りだったのが、ある時から、問題に向き合い言葉を返すように。
高尾先生
それまではきっと、小島さんから投げかけられたことに対して何も答えが生まれてこないから、出せなかったのかもしれない。言語化のトレーニングもされていないし、そんなこと聞かれたことないしって感じだったのかも。
小島さん
彼自身、本心を言葉にすることを封じられてきた環境だったかも? とも思います。完全なる男社会で生きてきた人だから。絶対に変わらないだろうと思っていた人が、学んで変わるって、すごいなと。時間が解決って、先生おっしゃっていたけれど、彼にもその時間が必要だったのかと理解しました。
高尾先生
嬉しかったんですね。小島さん、以前お会いした時より、だいぶ浮上してる!
◇ 今、振り返って思うこと
小島さん
コロナ禍の更年期……辛かった。池の底に沈んでました。一人きりで認知も歪むし、周りのキラキラ夫婦と比較したり、命の危険も感じて……。自分は不幸、夫のせいでもう自分は棺桶の中だって!
高尾先生
小島さん十分輝いてますよ。キラキラ夫婦だって何か一つは表に出せない問題は絶対にある! 素敵な息子もいる、小島慶子もブランドだし、今までパートナーといろいろあったけれど夫婦の歯車が回り出して、これからが始まりじゃない?
小島さん
先生に言われるとそうかもと思う!
高尾先生
更年期は人と喋ったほうがいい。コロナ禍で始めた「リアルボイス」は、診療では拾えない訴えもフォローしています。女性の更年期の課題は、ホルモンの変動も勿論だけど、それ以外の要因もどんなに影響が大きいか気づいてもらうのも大事だと思っています。
小島さん
私にとっては睡眠も大切でしたね。あと気づいたのですが、底抜けに明るい夫も、私にとって更年期緩和に一役買っているのかも。「俺は便所の100ワット」って自分で言ってるぐらいで(笑)。私は根が陰気で穴の中に入っちゃうんだけど、穴の上に100ワットが来てガンガン照らすもんだから、ちょっと熱も伝わってくるし暖かい。
高尾先生
ベストカップルですね。あれ、もしかしたら私も自家発電タイプなので、「便所の100ワット」なのかもしれない(笑)。
小島さん
やはり! 先生といると暖かいです。更年期に大事なのは明るい存在をそばに置くことなんだと思いました。
高尾先生
夫婦で更年期の場合、距離を置くのも大事だし、うまく役割分担してどちらか調子のいいほうが能天気になりきるのも大事。そして男性の場合、筋トレで生まれるテストステロンで更年期を緩和できるんです。
小島さん
わ! 夫も筋トレしてました。
高尾先生
さすが自家発電! でも筋トレする元気もない時は受診も視野に入れて。
小島さん
子どもたちの手が離れたから、今年からまた最初に同棲した時みたいに夫と二人暮らしに……。ちょっと緊張します。
高尾先生
なかなかすぐには昔の感覚に戻れないけれど、小島さんは紆余曲折あったから、その気持ちになれる。その初々しさ、超ラッキーじゃない!
更年期は一つのフェーズ。そこで終了ではなくて……そこからよ!(高尾先生)
更年期に大事なのは明るい存在をそばに置くこと……夫、なのか(笑)?(小島さん)
小島さん:シャツ¥14,850(ルージュ・ヴィフ アンナ/ルージュ・ヴィフ ラクレ ルミネ有楽町店)スカート 参考商品(デザインワークス/デザインワークス 銀座店)ピアス¥49,500(ミチ ウィルウェイ/フォーティーン ショールーム)リング/本人私物
撮影/須藤敬一 ヘア・メイク/陶山恵実(ROI) スタイリスト/大碕ちほ 取材/竹永久美子 ※情報は2024年10月号掲載時のものです。