「私たちのCHALLENGE STORY」を担当しているライターの孫 理奈です。今月号のテーマは児童虐待。私は、母子家庭の貧困問題などを研究している神戸親和女子大学講師の芦田麗子さんを取材しました。芦田さんは’15年、大阪社会保障推進協議会の寺内順子さんとともに「シンママ大阪応援団」を立ち上げました。「時間的にも経済的にも余裕がないシングルマザーが大人ひとりで子どもを育てる環境下では、子どもを愛していても子どもにあたって暴言を吐いてしまうなど、実際に虐待に近いことも見られることがある」と芦田さんは言います。
「シンママ大阪応援団」のモットーは“ママが幸せなら子どもが幸せ”。月1回、スペシャルボックスというお米やお菓子を送る活動も行っています。「それがとてもありがたいんです」と言う声も実際に聞かれます。さらに身内には頼れない方々のために「Zikka」と呼ぶマンションの1室を親族の拠り所のような居場所としても提供していて、料理好きな寺内さんが振る舞う料理を囲みながらいろいろな話をするそう。芦田さんはこう分析します。「貧困は人間関係の貧困ともイコールで、余裕がないため友達からの誘いを断るうちに孤独になってしまうんです」。
撮影で訪れた日はシングルマザー達が集まり、思いきり学んで語れる場「ママたちの学校」が開かれていました。離婚、借金、生活保護など、ひとりでは解決できない問題を専門家に繋げるサポートも行われており、「ここに来たら仲間がたくさんいて心強かった。すごい力になってくれます」「安心できました」という参加者の生の声が実際に聞けて、笑顔も見られました。
生活保護申請に同行することも「シンママ大阪応援団」の活動のひとつ。働いても最低賃金しかもらえず、育てることに精一杯で困窮しているから申請に訪れるにもかかわらず、1日4時間相談して3回目の訪問でようやく申請ができたという人もいるほど申請を通すことは難しいそう。中には生活保護は権利ではなくて恩恵だと思わされ、「施しは受けたくない」と諦めてしまったケースもあると芦田さんは言います。「でも交渉スキルがある寺内が同行すると『相談ですよね?』『いえ、申請です』と切り返せるので何人もの申請が通り、安定した生活を送れるようになった人も少なくありません」。
芦田さんと寺内さんは、シングルマザーのリアルな体験などが書かれた『シングルマザーをひとりぼっちにしないために』という本を出版しました。ずっと仕事ばかりで余裕がないシングルマザーの「旅行をしてみたい」という希望から、本の印税や支援者の方々からの寄付金などで総勢40名の京都旅行も実現させました。芦田さんは「子ども達ともよく遊ぶので子どもの顔つきが変わり、口数も増えていっているのがわかります」と言います。
「シンママ大阪応援団」に繋がれば、同時に安心に繋がる。撮影を通して私も感じました。孤独を感じているママがひとりでも多く、気持ちを吐き出して気持ちが軽くなれるよう、こういう団体が増えていったらいいなと思います。
シンママ大阪応援団 http://shinmama-osaka.com/
撮影/前川政明