何者にもなれる、そう言い切りたくなるほどの驚異的な演技力。親近感をありながらも、ひときわ際立つ透明感と凜とした愛らしさをあわせ持ち、他の誰とも重ならない新しいタイプの俳優として注目を集めているキム・ミンハ。
出演作に“外れなし”と評されるほど、目の肥えたドラマファンからも厚い信頼を寄せられる存在です。作品ごとにまったく異なる顔を見せながら、確実に爪痕を残していくその実力と唯一無二の存在感。
今回は、そんなキム・ミンハの魅力に迫ります。
★ キム・ミンハの魅力全開、お勧めドラマ4選
★ 一躍時の人となった出世作Apple TV『Pachinko パチンコ』シーズン1~2
★ ミステリアスな展開が話題になった『照明店の客人たち』
★ 今精一杯生きる勇気をくれる『私が死ぬ一週間前』
★ 気持ちを奮い立たせてくれる人生ドラマ『テプン商事』
キム・ミンハってどんな俳優?
1995年生まれ。ソウル特別市江南区出身。元々、音楽が大好きで歌手になりたかったというキム・ミンハ。ミュージカル俳優を夢みていた頃、実家の隣に住んでいて両親とも仲がよかった名俳優ソル・ギョングに、俳優になることを薦められたそう。時は、高校3年生の冬。親に言い出せなかった夢を、ソル・ギョング俳優が親を説得してくれたことで漢陽大学 演劇映画学科に進学、俳優として歩き始めます。
主演作Apple TV『Pachinko パチンコ』で注目を集めた時は、彗星のごとく現れた時代のニューヒロインとして話題になっていましたが、実は苦労人の彼女。2016年ドラマ『これが人生! ケ・セラ・セ』でデビューしますが、19歳から26歳でApple TV『Pachinko パチンコ』のオーディションに受かるまでは、1日も休まず、356日オーディションを受け続けたそう。インディーズ映画、短編映画、webドラマ、舞台、そしてどんな小さな役でもいいから経験を積みたいと挑戦し続け、ドラマ『二人の女性 シーズン2』『ちょっと敏感でも大丈夫』『私のIDは江南美人』などに出演しながらも、最終段階で不合格が続き、希望が見いだせなくなってしまったことも。
ついには、美術学士の資格をとりニューヨークに留学することを決意。準備を整え、留学する直前でコロナウィルスによるパンデミックが到来してしまいます。留学もキャンセルになり途方に暮れていた26歳の時に、以前受けた映画『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』のオーディション動画がキャスティング担当者の目にとまり、Apple TV『Pachinko パチンコ』のオーディションの誘いを受けます。そして、所属事務所がないなか8次までに及ぶオーディションを勝ち抜き、見事Apple TV『Pachinko パチンコ』のヒロイン・ソンジャ役に大抜擢! 同作品はアメリカの第28回クリティスク・チョイス・アワードで最優秀外国語シリーズに選ばれ、たぐいまれなる演技力と存在感で、韓国の俳優の中でも異彩を放つ存在として世界的にも注目を集めブレイクしました。
そして、実はかなりの歌唱力の持ち主。そのふんわりとした柔らかい雰囲気とは一線を画す、強く芯の通った歌声は、 デビュー前にSandFactory Acdemyというヴォーカルアカデミーで披露した映像が残っていて、たびたび話題になることも!
遅咲きで急いで色々な作品に出た方がいいとアドバイスされても、自分のペースを大事にしてきたという彼女。出演作は必ず“良作”と評される、そんな信頼を確立し、その勢いは、次回作でもとどまることを知りません。
新たに出演が発表されたのは、Netflixオリジナルドラマ『楽バイト(仮)』。共演にはイ・ジェウク、コ・ミンシ、イ・ヒジュンと実力派が顔をそろえます。時給が高く“楽”なアルバイトだけを紹介する怪しげな人材紹介所を舞台にした、ミステリー×ホラー×ファンタジーという異色作。キム・ミンハがどんな新境地を見せてくれるのか、早くも注目が集まっています。
さらに、Apple TV『Pachinko パチンコ』で共演したノ・サンヒョンと再タッグを組む、Netflixオリジナル映画『Messily Ever After(仮)』への出演も決定。今度はロマンス作品での再共演とあって、ファンの期待は高まるばかりです。
2026年もまた、その確かな演技力で私たちの心を揺さぶってくれるはず。キム・ミンハの躍進から、ますます目が離せません。
キム・ミンハの魅力全開、お勧めドラマ4選
一躍時の人となった出世作Apple TV『Pachinko パチンコ』シーズン1~2
原作は大ベストセラーとなったミン・ジン・リー著/池田真紀子翻訳の歴史小説『パチンコ』(文藝春秋)。ハリウッドが制作を手がけたApple TVオリジナルシリーズで、関東大震災前の日本、関東大震災の様子、バブル期の日本を、カナダでセットを創り上げ、シーズン1だけで約100億円の製作費が投入されたほどの、超大作。スタッフも豪華で、シーズン2の6~8話は、あの映画『国宝』の監督李相日さんが担当しています。キム・ミンハも「役を通して何があっても前に進む勇気をもらえた」というソンジャは、韓国が植民地時代から日本の大阪に渡り、第二次世界大戦をも乗り越え時代に翻弄されながらも不屈の精神で運命を切り開いていく役柄。1910年代からバブル期という70年という年月を描いた激動の時代背景、人種差別、移民問題、男女ともにらしさをしいられることへの生きづらさ、そして親から子への期待と自己犠牲、期待に負けてしまう子供など、現代にも続く普遍的な社会問題は見る者の心を揺さぶり涙なくしては見られません。
ミステリアスな展開が話題になった『照明店の客人たち』
2024年のモンスターヒットドラマ『ムービング』の制作陣が再び結集。監督は『ミセン~未生~』の俳優・キム・ヒウォン。チュ・ジフン、パク・ボヨン、イ・ジョンウン、オム・テグ、ソリョン、と豪華キャスト陣のなか、キム・ミンハは、シナリオライターのソンヘという、引越し先の家で背筋の凍る不可解な出来事が起きていく役。センシティブな役どころを、偏ることなくその選択肢も理解できると視聴者を納得させるような繊細な演技力が光ります。ホラーと言うべきか、サスペンスと言うべきか、ヒューマンと言うべきか。1~4話と、5~8話と物語が展開していくほどに、ジャンルが変化していくユニークな作品。そして、ラストはハンカチの用意をお勧めします!
今精一杯生きる勇気をくれる『私が死ぬ一週間前』
米TIME誌が選ぶ「2025年ベスト韓国ドラマ10選」で第2位に輝いた青春ファンタジードラマ。全6話というコンパクトな構成ながら、物足りなさは一切なし。限られた話数の中で、きらめく青春の瞬間と、生と死に向き合う切実な想いが丁寧に描かれています。物語が深みを増していく後半、とりわけラスト3話は涙なしでは観られないはず。ハンカチ必携で臨みたい、心を大きく揺さぶる一作です。このドラマではクラスメイトのラムに恋する不器用でアクティブなヒワンを高校生時代から熱演したキム・ミンハ。チャーミングでフレッシュなムードで違和感はゼロ。キム・ミンハのあまりの愛らしさは、このドラマを見るべき理由の1つと言えるほどの好演です。(共演のコンミョンはあまりのか可愛さに「こんなに可愛かったら、こういう役回りしかこなくなるよ」と伝えたそう。)高校時代と大学生になった現在を交互に描いていく時間の中で浮かび上がるのは、好きな相手に素直になれない淡く甘酸っぱい想い、かけがえのない友情、包み込むような家族の愛、そして避けられない喪失感。過去と現在が交互に描かれることで過去の答えが切なく響き、まるで自分も登場人物の一員になったかのように胸に迫ってきます。きっと、観終えたあとも長く心に残り続け、そして前を向けるドラマです。
気持ちを奮い立たせてくれる人生ドラマ『テプン商事』
アジア通貨危機という困難に直面しながらも、働くということの責任感、仲間との絆、そして時々ロマンスを通して、チャラチャラしていたテプンが強くたくましく成長していく姿に共感しながらも勇気づけられる人生ドラマ。このドラマの魅力はなんと言っても、個性豊かな社員たちと、その絆の尊さ。キム・ミンハは社員の1人で、家族のために夢を諦めて働くミソン。経理としての才覚に優れ、一生懸命で人一倍責任感が強い性格。テプンからの愛情で自分の価値を見いだして人として成長していく役柄で、新たなキム・ミンハの魅力を垣間見られます。人は人の力になり、支え合うことで強くなれる。ひとりでは越えられない壁も、大切な人とならきっと乗り越えられる。という、社会の中で生きる私たちにとって当たり前でありながら、ともすれば見失いがちな大切なメッセージ。そんなシンプルで尊い真実を、まっすぐに、そして力強く伝えてくれる物語です。前を向くことさえ難しいと感じるときにこそ観てほしい、心を奮い立たせてくれるパワフルなドラマです。
味澤彩子
韓国ドラマだけでなくファッション、皇室、美容、カルチャーとさまざまなジャンルを担当するライター。1度ハマるととことん突き詰める生まれながらのオタク気質で、感動する作品に出合うと、スタッフ、俳優、関連する作品を芋づる式に鑑賞し、寝る暇も惜しんで韓流ドラマ三昧。気がついたら、ビジュアル、内容、演出、文化面多方面から語るようになり、韓ドラの1人おすぎとピーコと言われるように。好きな俳優はチュ・ジフン、カン・ハヌル、ソン・ソック。好きな脚本家はイム・サンチュン作家。
















