元サッカー日本代表として活躍し、現在は株式会社AuBの代表取締役を務める鈴木啓太さん。現役時代とはまた違う魅力をまとい、そのかっこよさは年齢を重ねるごとに深みを増しています。
派手さではなく、静かな自信と凛とした佇まい。その清潔感のある雰囲気は、どこから生まれているのでしょうか。前編では、その思考の原点を紐解きます。
▼後編
元サッカー日本代表・鈴木啓太さん(44)「目的が明確になると、人は自然と行動が変わる」鈴木流〈整え方〉
▼特別カット集
【特別カット集】元サッカー日本代表・鈴木啓太さん(44)スタッフが思わず見惚れた「揺るがない存在感」
引退はある意味“ひとつの死”だと思っていた
これまでを振り返ると、自分の中では人生を「前半戦」と「後半戦」に分けて考えてきました。「前半戦」は、子どもの頃から30代半ばくらいまで。つまり、サッカー選手として生きる時間です。
サッカー選手になりたいと思ったときから、ずっと頭のどこかにあったのは、「サッカーを辞める自分は必ずいる」ということでした。だから、サッカーをやって頑張る自分と、その後の人生。僕は現役のころから割とこの二つを分けて考えていたんです。
今でこそ言語化できますが、振り返るとそれは、ある種の“死生観”だったのかなと思っています。
例えば、人生80年と考えたときに、80歳から見た“死”をどう捉えるか、という考え方がありますよね。それと少し似ていて、自分の場合はそれがサッカー選手でした。
ずっとなりたくてやってきたものから離れる瞬間が必ず来る。サッカー選手にとっての引退は、ある意味でひとつの“死”だと思っていて。
だからこそ、「いつか終わりが来る」という前提で、前半戦はサッカーに100%向き合うと決めていました。
キャリアという言葉が指すのは“人生そのもの”
ただ、サッカーをやりながらも、その先に何をするのかを考えていたのも事実です。前半戦と後半戦が、完全に別の人生かというと、そうではない。
同じ一人の人間として、人生は地続きでつながっているものだと思っています。それを表す言葉が、“キャリア”なんじゃないかと。
キャリアというと仕事のことだけを指すように思われがちですが、自分にとっては、人生そのものがキャリアです。
そう考えたときに、どんな人生を歩むことが幸せなのか。どんなキャリアを進んでいくことに意味があるのか。そんなことを、ずっと考えてきました。
サッカーで学んできたことを活かす道ももちろんある。ただ一方で、サッカーを辞めたあとに、あえてその世界から一度離れたときに、自分にはどんなチャレンジができるのか。それを考えながら、現役時代を過ごしていました。
もともと自分の中には不安もあって、「日本代表に行きたい」という夢を見る自分と、「本当に大丈夫か」「30歳までできればいい」という現実的な自分、その両方がいたんです。でも、そのどちらもいていいと思っていて。
人はそんなに強くないし、不安になるのも当たり前。だからこそ、不安や怖さを受け入れたうえで、「サッカーがダメでも生きていける選択肢」を持っておく。人とのつながりや可能性を広げておく。いわゆるプランB、Cのようなものを、なんとなく考えていたんだと思います。
当時はここまで言語化できていませんでしたが、振り返ると、「正解を選ぶ」というより、自分がやりたいと思う方向に、進んできた感覚に近いですね。
“好きなことが続けられる人生”をつくりたい
引退後のキャリアとして叶えたかったこと。それは、「ファンやサポーターの方々に、いつまでも元気にスタジアムに通ってもらいたい」という思いです。
スポーツに限らず、自分の好きなことを、ずっと続けられる人生っていいなと思っています。ただ実際には、「年齢とともに体調が悪くなって、好きなことができなくなった」という声も多くて。
それを聞いたときに、アスリートとしてコンディショニングを整えてきた自分が、向き合うべき課題だと感じました。そこから、「健康を支える仕事がしたい」という思いが生まれて…。
その背景には、母の存在があります。もともと母親が健康に対する意識がとても高くて、「人間は腸が一番大事」と子どもの頃から言われていたんです。食事やサプリメントなど、あらゆる方法で家族の健康を支えてくれていて、いわゆる健康オタクのような存在でした。
その影響もあって、自分自身も学生時代から腸内環境を意識していて。サプリメントを飲むとコンディションが良くなる実感もありました。
引退前に、腸内細菌と健康の関係が科学的にも明らかになってきたこともあり、「ああ、やっぱりここが大事なんだ」と腑に落ちたんです。
そこから、今の事業へとつながっていきました。
※衣装は全てご本人の私服
撮影/野呂 知功(TRIVAL) ヘア・メーク/Rico (M-rep by MONDO artist-group) 取材/日野 珠希
現役引退後は、腸内環境に着目したヘルスケア事業を展開するAuB株式会社を設立し、代表取締役として活動。アスリートとして培ったコンディショニングの知見を活かし、「すべての人をベストコンディションに導く」ことを目指している。





























