株式会社しろばら百藝社
約10年ぶりに再演される『結の空間』糸電話の原理
一本の糸が、人と人を結び、地域を結び、文化を未来へつないでいく–。
滋賀県長浜市木之本で受け継がれてきた箏(こと)の絹糸づくりと、京都を代表する手芸用糸メーカーの技術。その「糸」が、現代音楽と融合し、京都コンサートホール全体を巨大な楽器へと変える文化プロジェクト「結の空間」が、2026年10月31日(土)に開催されます。
本プロジェクトは、地域に受け継がれてきた「糸」の技術と、現代音楽の新しい表現を融合させることで、日本のものづくりと芸術の可能性を広く発信する新たな挑戦です。会場全体に張り巡らされた数十本の糸が音の振動を伝え、来場者は「空間そのものが楽器になる」という、世界でも類を見ない音響体験を味わいます。


ホール全体に数十本の糸を張り巡らせ、空間全体が一つの楽器となる「結の空間」のイメージ図
■ 地域産業が支える、日本ならではの「糸」の文化
今回の公演で使用される絹糸は、滋賀県長浜市木之本に拠点を置く丸三ハシモト株式会社が製造する伝統的な箏絃です。
また、京都市に本社を構える国内最大級の手芸用品メーカー・ハマナカ株式会社の手芸糸も使用されます。
楽器に使われる絹糸と、人々の暮らしに寄り添ってきた手芸糸。
異なる歴史を歩んできた二つの「糸」が一つの空間で出会い、音楽を通して新たな価値を生み出します。

約400種類の和楽器糸を生み出す丸三ハシモト株式会社の工房。120年以上受け継がれる職人の手仕事が「結の空間」の音を支えています。提供:丸三ハシモト株式会社
■ 芸術と産業が出会い、「体験する伝統文化」を創る
これまで伝統産業は「見る」「知る」機会はあっても、「体験する」機会は限られていました。
本プロジェクトでは、糸そのものが音を伝える役割を担います。
来場者は、ホール全体に張り巡らされた糸を通して音の振動を体感し、伝統産業の技術が現代アートと融合する瞬間を五感で味わうことができます。
これは、地域産業と芸術を結び付ける新しい文化発信の形です。
■ 世界にも類を見ない「空間そのものを楽器にする」発想
本プロジェクトの中心となる作品『散乱系』は、作曲家・山本和智氏が東日本大震災後、「電気を使わずに特別な音響空間を生み出せないか」という問いから生み出した作品です。
音をスピーカーで増幅するのではなく、「糸電話」の原理を応用し、糸そのものが音の振動を伝える仕組みを採用。ホール全体を一つの楽器として機能させるという、世界でも極めて珍しい音響表現を実現しました。
2015年に京都コンサートホールで初演され、2018年には神奈川県立音楽堂で再演されるなど高い評価を受けたこの作品が、約10年ぶりに初演の地・京都へ帰ってきます。
■クラウドファンディングにも挑戦
本公演の実現に向け、クラウドファンディングプラットフォーム「MOTION GALLERY」にて支援を募集しています。
支援者には、本公演ならではのオリジナルグッズや、地域産業と連携した返礼品などを用意。公演当日だけでなく、多くの方にプロジェクトへ参加していただける機会を創出しています。
MOTION GALLERY「結の空間」
https://motion-gallery.net/projects/yui_no_kukan

返礼品の一部:水引をモチーフにしたアクセサリー
■ このプロジェクトの3つのポイント

1.400種類以上の和楽器糸が支える、日本の伝統技術を「体験」として未来へ本公演で使用される和楽器糸は、滋賀県長浜市木之本で120年以上にわたり和楽器絃を製造してきた丸三ハシモト株式会社が手掛けています。同社では、楽器の種類や用途、糸の太さ、品質などに応じて400種類以上もの和楽器糸を製造。その一本一本は約12工程(細かくは19工程)のほとんどを手作業で仕上げ、習得に約10年を要する「独楽撚り」など、熟練職人の技術によって支えられています。
本プロジェクトでは、その伝統技術を単なる「素材」としてではなく、音を伝える主役として舞台に取り入れます。地域に受け継がれてきたものづくりを、芸術を通じて体感し、その価値を未来へつないでいく新たな文化発信です。
2.世界でも類を見ない「空間そのものを楽器にする」コンサート
会場全体に数十本の糸を張り巡らせ、その糸が音の振動を伝えることで、ホール全体を一つの巨大な楽器へと変える。本公演は、「糸電話」の原理を応用した独創的な音響作品《散乱系》を中心に展開されます。東日本大震災を契機に、「電気を使わずに豊かな音響空間を生み出せないか」という問いから生まれたこの作品は、音響機器に頼るのではなく、糸が持つ物理的な振動を活用する世界でも極めて珍しい表現です。観客は演奏を「聴く」だけでなく、空間全体で音を「感じる」という唯一無二の体験を味わいます。

2023年10月8日 浦安市文化会館の公演 撮影:東間嶺
3.約10年ぶりの京都再演。国内外で活躍する演奏家が集結2015年に京都コンサートホールで初演された《散乱系》は、その独創性から「再演が極めて困難」とも言われながら、2018年の再演では各紙や音楽評論家から高い評価を受けました。そして2026年、初演から約10年以上を経て、初演の地・京都で待望の再演が実現します。
さらに本公演には、箏奏者のマクイーン時田深山氏、日原暢子氏、木村麻耶氏、笙奏者・中村華子氏、指揮者・浦部雪氏、京都室内合奏団など、日本を代表する演奏家が集結。地域産業と現代音楽、伝統と革新、国内外で活躍する音楽家たちが一堂に会する、文化的にも希少性の高いプロジェクトです。
■国内外で活躍する演奏家が京都に集結
本公演には、日本の伝統音楽と現代音楽の第一線で活躍する演奏家が集います。
箏奏者のマクイーン時田深山氏、日原暢子氏、木村麻耶氏をはじめ、笙奏者の中村華子氏、指揮者の浦部雪氏、そして独自の活動で注目を集める京都室内合奏団が出演。国内だけでなく海外でも演奏活動や国際音楽祭への出演実績を持つ音楽家たちが、「結の空間」のために京都へ集結します。
邦楽器と室内オーケストラが織りなす音楽、そして会場全体を包み込む糸の振動による音響空間は、この公演でしか体験できない特別な時間となります。
■芸術・産業・地域を結ぶ、新しい文化プロジェクト
「結の空間」は、一つのコンサートにとどまらず、地域産業、伝統文化、現代芸術が連携して新たな価値を創出する文化プロジェクトです。
滋賀県の伝統的な和楽器糸、京都の手芸文化、国内外で活躍する音楽家、そして京都コンサートホールという文化拠点。それぞれが持つ技術や歴史、人の想いを一本の「糸」で結び、新しい文化体験として発信します。
「結」というタイトルには、人と人、人と地域、人と文化を結ぶという願いが込められています。
■ 開催概要

■ 地域産業と芸術が出会い、新たな文化を創造する
今回のプロジェクトは、単に一つのコンサートや作曲家の作品を紹介することが目的ではありません。 しろばら百藝社 代表 鐘ケ江織代は2006年から2013年までの約7年間を京都・滋賀で過ごし、多くの演奏家や職人、文化に携わる方々とのご縁をいただきました。十数年が経った今、その土地で培われてきた技術や文化、人とのつながりを一つに束ね、「その土地だからこそ生まれる表現」を形にしたいと考え、この企画を立ち上げました。 芸術や伝統文化は、必ずしも大きな市場性や訴求力を持つものではありません。しかし、文化とは、受け継ぎ、育み、次の世代へとつないでいく営みそのものだと私は考えています。そして、その営みは演奏家や作曲家だけで成り立つものではなく、職人、技術者、会場、地域、そして共感し支えてくださる企業や個人など、多くの人々の存在によって支えられています。 今回の公演では、日本の伝統的な技術に支えられた楽器や素材、世界に誇る演奏家や創作者、地域に根差した文化資源が一つの舞台に集まります。音楽を楽しんでいただくだけでなく、その背景にある「人の手によって創られる価値」や、「一つの文化は多くの人によって支えられている」ということにも目を向けていただけたら嬉しいです。 このプロジェクトを継続可能な形で実現することは、一度きりの公演を成功させることではなく、地域に根差した文化や伝統技術、そして新しい創造が社会とつながる仕組みを育て、世界にも発信したいと考えています。 AIをはじめとする技術が急速に進化する時代だからこそ、人にしか生み出せない想像と創造、そしてその価値を社会に届け続けることが、これからの文化や伝統芸術の未来にとってますます重要になると信じています。
■ 作曲家 山本和智 コメント
東日本大震災を原点に、「シンプルなものの強さ」を問い直す
東日本大震災をきっかけに、「電気を使わずに音を届けることはできないか」という問いから、この作品は生まれました。
糸電話は、とても単純な仕組みです。しかし、そのシンプルさゆえに確実に音を伝えます。一方で、現代社会は複雑なシステムの上に成り立っています。便利である反面、一つのトラブルが全体に影響を及ぼす脆さも抱えています。
《散乱系》では、37本もの糸電話が空間を巡り、それぞれが確実に音の振動を伝えます。もし同じことを37台のスピーカーとコンピューター制御で実現しようとすれば、設備や予算、トラブルへの対応など、多くの課題が生じるでしょう。
私はこの作品を通して、「複雑さ」ではなく「シンプルさ」が持つ強さや豊かさについて、改めて考えるきっかけを届けたいと考えています。
人の手だからこそ生み出せる体験を届けたい。
このコンサートでまず感じていただきたいのは、日常では味わえない「非日常」の体験です。
会場を巡る糸は、職人の手によって紡がれたものです。その糸を使った音響空間も、人の知恵と技術によって生まれています。そして演奏も、作曲も、すべて人の手による営みです。
さらに、この音響空間は、実際にその場へ足を運ばなければ体験することができません。録音や映像では再現できない、空間全体で音を感じる体験があります。
AIをはじめとする技術が急速に進化する今だからこそ、人の手が生み出す技術や感性、そしてその場を共有することの価値を、改めて見つめ直す機会になればと願っています。
「結の空間」は、最新技術を否定するものではありません。便利さを追い求める時代だからこそ、人の手によって紡がれた技術や、シンプルな仕組みが持つ本質的な強さ、そして人間にしか生み出せない創造性を見つめ直す機会を社会へ提案する文化プロジェクトです。
■ プロフィール

Photo by Jorgen Axelvall
山本和智(作曲)
独学で作曲を学ぶ。オーケストラ、室内楽、アンサンブル、合唱、独奏曲、映画音楽など作曲活動は広範にわたり、2006年モリナーリ国際作曲賞第1位(カ ナダ)、2007年AIC / Mostly Modern 国際作曲コンクール第1位(アイルラン ド)、2009年度武満徹作曲賞第2位、2010年第5回JFC作曲賞など、国内外で高く評価されている。
和光大学表現学部総合文化学科非常勤講師。

Photo by Atsuko Ito (Studio LASP)
浦部 雪(指揮)
東京芸術大学作曲科卒業後ミラノ国立音楽院作曲科、ミラノ市立音楽院指揮科、 ミュンヘン音楽大学作曲科にて学ぶ。指揮者として日本をはじめ、イタリア、ベルギー他様々な場所で新作初演等に携わる。2021年サントリーホールサマーフェスティバルにおいてマティアス・ピンチャー氏のアシスタントを務める。

Photo by Masanori Yoshie
マクイーン時田深山(箏)
即興、現代音楽、オリジナル作品を軸に国内外で活動。日本フィルハーモニー、バンクーバー交響楽団、Australian Art Orchestraと共演し、東京JAZZ、 MOERSフェスティバル等に出演。2019年ACCフェローシップでNY滞在。2020 年ソロアルバム『SONOBE』発表。小田村さつき、沢井一恵に師事。東京藝術大学大学院修了。

日原暢子(箏)
東京藝術大学邦楽科卒業、同大学大学院音楽研究科修了。在学中、アカンサス音楽賞及び同声会賞受賞。宮内庁皇居桃華楽堂にて御前演奏、ウィーンフィルメンバーとの共演や北京中央音楽院民族音楽祭開幕式にて⼆十五絃箏独奏を務める。令和4年度文化庁芸術祭新人賞受賞。

Photo by 浅井章文
木村麻耶(箏)
橋本はるみ、野坂惠子氏に師事。幼少よりコンクール等優勝歴多数。北海道新聞社賞、釧路奨励教育長賞、平成24年度別海町文化奨励賞、第54回釧新郷土 芸術賞など受賞。「この音とまれ!」CD録音、TV、ラジオ出演など多岐にわたる。多くの国際公演より招請され審査員を務める。木村麻耶CD《光る空》、《赤い月》をKミュージック・ストアより好リリース。

Photo by ハガ タカシ
中村華子(笙)
国立音楽大学音楽学学科卒業。笙を宮田まゆみ、多忠輝、雅楽合奏を芝祐靖の各氏に師事。2006年度文化庁新進芸術家国内研修員。「伶楽舎」メンバーとして活動する他、「Shogirls 」「雅楽三昧中村さんち」などのユニットでの活動や、東儀秀樹のサポートメンバー(秀樹組)として参加。また笙のソロ作品やアンサンブル作品の初演や他ジャンルの芸術とのコラボレーションなど幅広い。

京都室内合奏団
京都にゆかりのある若手演奏家によって2020年に旗揚げされた。指揮者を置かずに各奏者の能動的なアンサンブルによって演奏することをモットーとしており、定期演奏会を中心に活動を展開している。小編成のアンサンブルから、弦楽オーケストラ、室内楽など、編成が柔軟に変化するのが特徴で、こだわりの強いプログラムを実現している。定期演奏会においては、マーラーの交響曲やストラヴィンスキー作曲「火の鳥」といった大曲にも指揮者なしで挑戦し、15名の奏者による演奏は好評を博した。
■ プロジェクト関係団体

株式会社しろばら百藝社芸術文化を通じて、人・地域・社会を結ぶ企画プロデュース会社
東京を拠点に、コンサートや舞台芸術の企画・制作、文化事業のプロデュースを手掛ける。本公演「結の空間」の主催者として、作曲家・演奏家・地域企業・文化施設を結び、伝統産業と現代音楽が融合する新たな文化プロジェクトを企画・運営しています。

丸三ハシモト株式会社(滋賀県長浜市)120年以上受け継がれる和楽器絃づくりの技術
1908年(明治41年)創業。滋賀県長浜市木之本町を拠点に、箏・三味線・琵琶などに使用される和楽器絃を製造。約400種類に及ぶ和楽器糸を手掛け、12工程(細かくは19工程)のほとんどを職人の手仕事で仕上げています。伝統技法「独楽撚り」をはじめとする高度な技術を継承し、日本の伝統音楽を支え続けています。本プロジェクトでは、会場全体を巡る音の振動を伝える重要な素材として和楽器絃を提供しています。

ハマナカ株式会社(京都市)手芸文化を支え続ける国内トップクラスの手芸用品メーカー
1940年創業。京都市に本社を置く手芸用品メーカー。「世界中に手づくりの楽しさを届ける」を理念に、毛糸や手芸糸、編み物・手芸用品の企画・製造・販売を展開しています。本プロジェクトでは、伝統的な和楽器絃とともに手芸糸を提供し、地域産業と現代芸術を結ぶ文化プロジェクトを支えています。
■メディアの皆様へ
取材ポイント
・ 世界でも類を見ない 37本の糸電話による音響空間
・ 約400種類の和楽器糸を製造する 丸三ハシモトの技術
・ 東日本大震災から生まれた 「電気を使わない音」
・ 日本を代表する演奏家へのインタビュー
・ 会場設営・リハーサル撮影
■取材対応
取材・撮影・インタビューは事前予約制で対応いたします。
■本件のお問い合わせ先

株式会社しろばら百藝社担当:鐘ケ江
電話:03-6265-1926
メール:info@shirobara-artisan.com
Web:https://shirobara-artisan.com















