ツインエンジン
手塚治虫が描いた名作漫画『リボンの騎士』を原案とするNetflix映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』。ティザービジュアル解禁時にはYahoo!トレンドで1位、X(旧Twitter)で国内トレンド3位にランクインするなど、大きな反響を呼んだ。さらに、国内外問わず期待を集め、世界最大のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭2026」でのアヌシー・プレゼンツ部門公式上映とパネルディスカッションへの監督登壇が行われた。
監督を務めたのは、業界屈指の多才なアニメーターとして知られる五十嵐祐貴。『呪術廻戦 第1期』のエンディング映像では、1人で原画を手がけた洗練されたアニメーションで注目を集め、初監督作『スター・ウォーズ:ビジョンズ「のらうさロップと緋桜お蝶」』では、丁寧な物語描写と迫力あるアクションシーンで国内外から高い評価を得た。本作は、そんな五十嵐が満を持して世に送り出す、初の長編監督作品となる。
キャラクター原案は、『Fate/Grand Order』『刀剣乱舞ONLINE』など、数々のゲームで人気キャラクターのデザインを手がけてきた望月けい。さらに、キャラクター原案協力として、『サイバーパンク:エッジランナーズ』や『LAZARUS ラザロ』のエンディング監督を務めた米山舞が名を連ねる。加えて、アニメーションキャラクターデザインを新垣一成、アートディレクターをセドリック・エロールが担当。
アニメーション制作は、監督・五十嵐率いるOUTLINE(アウトライン)。魅力的なキャラクターづくりや、ケレン味あふれる圧倒的な作画力を強みとするスタジオだ。実力派のクリエイター陣が集結し、過酷な運命に抗うことを決めた一人のヒーローの物語を、繊細な世界観と洗練されたアクションで描き出す。
昨日8月8日(土)にNetflixでの世界独占配信が始まった本作より、豪華オフィシャルインタビュー2本が一挙解禁となった。
監督を務めた五十嵐祐貴のソロインタビュー記事では、初の長編監督作品である本作の誕生秘話やキャスト起用の背景、原案『リボンの騎士』への思いを語っている。手塚作品をオマージュしたシーンの解説にも注目だ。
さらに対談インタビューを記事&YouTubeで公開!五十嵐祐貴監督と、本作のキャラクター原案を担当した望月けいが、新生サファイア誕生の経緯やキャラクターデザインへのこだわり、演出の狙いなど、制作秘話を語った。
五十嵐祐貴監督ソロインタビュー
「手塚治虫と新しい世代を繋げたかった」
-『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』誕生の経緯-
僕の元にオファーが舞い込んだのは、2021年に発表した『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の一編『のらうさロップと緋桜お蝶』の中に手塚治虫へのオマージュ要素があったからだと思います。手塚治虫は大好きな作家ですが、『リボンの騎士』は少女漫画である事から自分にとっては距離のある存在でした。改めて原作を読んでみると、手塚作品の中でも例外的に明るい作品であり、宝塚歌劇団へのノスタルジーも感じて。当時の少女漫画としては画期的で新しく重要な作品だと感じました。その反面、令和の時代にこれをどのようにアップデートすればいいのか悩みました。それでもやろうと思ったのは、手塚治虫という古典的かつ、マンガ史的にもアニメ史的にも最重要である作家と、新しい世代を繋げる仕事をしてみたいと思ったからです。
「何を持って現代の『リボンの騎士』とするのか」
-ストーリーを生み出す難しさ-
一番の壁は「何を以って現代の『リボンの騎士』とするのか」という問いでした。脚本協力の香村純子さんとも毎回その話になりました。『リボンの騎士』の主人公・サファイアは男装の麗人として固定化した価値観を破壊する、いわばトリックスターのような存在です。ただ原作にある設定・男装の麗人が現代の価値観を破壊できるとは思わなかったので、その要素はオミットして大きな社会の中で現実と向き合いながら戦うヒーローの物語を目指しました。
「コロナ禍のようなアンコントローラブルな世界で生きるために」
-道を切り拓くサファイア。物語の着想はどこから-
2020年のコロナ禍以降ずっとそうですが、アンコントローラブルな今の世界で安心安全に生きるためには「強大な力」が必要だと多くの人が感じていると思います。実際にそういう人にお金も権力も集中するわけです。そのような状況は力のない若い世代からやる気を失わせます。辛い現実を良く生きるためにはどうすればいいのか。そんな現代性を反映した世界観の中でリボンの騎士になるサファイアの物語を描くことが出来れば、たとえファンタジーであったとしても共感を得られるのではないかと。今の社会的な気分を取り入れる事は、手塚先生が他の作品でも繰り返し描いていたことでもあるので、そこは避けて通れないだろうと思いました。
「強大な力と戦う孤高のヒーローというイメージにピッタリ」
-サファイア役・サーヤ(ラランド)起用の理由-
サファイアをコメディアン的な才能のある人にしようというのは初期から決めていました。笑いやエンタメのようなものが現実の停滞感を解除させる、そんなコミュニケーション能力を持った人間がヒーローとして今の社会の中で求められている印象があるからです。サーヤさんの決め手は声の印象ですが、サーヤさんが独立事務所で活動されていることも「強大な力と戦う孤高のヒーロー」というイメージにピッタリでした。サファイアの中にある「怒り」「笑い」「繊細さ」がサーヤさんの演技によって引き出された感じもします。



「随所に手塚作品らしさを」
-手塚治虫作品へのオマージュ-
オマージュはかなり意識しました。本作が手塚イズムを引き継いだうえで新しい事をしている作品だとアピールするためには、手塚治虫スピリットを作品に埋め込むのは不可欠です。手塚先生の考えていた事をいかにトレースできるか。作品を視聴した方が後々ネットでネタ元を調べて原典を手に取って、知らなかった手塚ワールドに触れる機会を作る。先人の仕事を新しい世代に引き継ぐのは重要な仕事だと思ったので、ストーリーは新しいものになっていたとしても、随所に手塚作品らしさを入れ込みました。


「『リボンの騎士』の続編に登場する生き物と」
-視覚的にオマージュした箇所-
サファイアの故郷シルバーランドの城や兵士の造形やデザイン、色彩は原作から拾っています。城内の扉近くにある柱の上にある石像は無責任天使チンクの雰囲気で作りました。サファイアが白鳥に姿を変えるのは原作にもありますし、サファイアを襲う獣のデザインは『リボンの騎士』の続編にあたる『双子の騎士』に登場する巨大なヤマネコのような生き物と、手塚先生がよく描くオオカミをミックスしています。



「次世代に手塚治虫をどう引き継ぐのか」
-作品完成後の心境-
今回の作品での僕の役割は少々スピリチュアルな言い方になりますが、手塚治虫という神を降ろす巫女のようなもの。各セクションのスタッフに予言を与えるようなイメージで制作していきました。「次世代に手塚治虫をどう引き継ぐのか」ということが本作における最大のミッションだったので、自分色をできるだけ減らそうと考えていました。それを出してしまうと『リボンの騎士』ではなくなってしまいそうな気がしたからです。その中でオリジナル要素の強い物語を作らないといけない企画だったので、難易度の高い仕事を乗り越えたなと思っています。配信後の反応を得て考える事もあるとは思いますが、ひとまず「最後まで作り切れて良かった!」というのが率直な心境です。
※記事全文(追加質問9つ含)
https://www.theribbonhero.com/special/detail.html?id=423
五十嵐祐貴(監督)×望月けい(キャラクター原案)対談
「可愛くもあり男性が見てもカッコいいと思える女性キャラクターを作れる」
-キャラクター原案として望月けいさんを起用した理由-
五十嵐祐貴監督:手塚治虫による不朽の名作『リボンの騎士』を新しく作り直す上で考えたのは、今の時代の主人公としてサファイアをどのように描き直すのかという事でした。原作は男装の麗人であるサファイアが剣を持って戦うという点にフレッシュさがあったわけですが、時代の進化によって女性の価値観も変化しています。そんな現代で男装の麗人を踏襲しても仕方がないので、僕の作るサファイアは「可愛い」と「カッコいい」を併せ持ったキャラクターにしたいと思いました。その塩梅を上手く表現できる人は誰かと考えた時に名前が挙がったのが望月さんです。可愛くもあり男性が見てもカッコいいと思える女性キャラクターを作れる望月さんならば『リボンの騎士』をアップデートできるのではないかと思いました。
望月けい:お話を頂いた時はお受けするか正直かなり悩みました。原案があまりにも名作過ぎるからです。でも私も手塚治虫先生の漫画が元々好きだったことと、打ち合わせを重ねる中で、五十嵐監督の手塚先生に対する深い知識とリスペクトを感じました。手塚先生が漫画史に残した偉業と『リボンの騎士』という作品を次の世代にどのように継承していくのか。そこに五十嵐監督は熱い思いをお持ちでした。私もクリエイターとして先人へのリスペクトは大切にしたいと常々思っているので、その共感が今回の挑戦への背中を押してくれました。
「サファイアのビジュアルを変えるか否か」
-キャラクターが生まれるまで-
五十嵐監督:脚本開発とキャラクター開発はほぼ同時進行でした。原作をどこまで残してどこまで新しくするのかは明確に決まっていたわけではなかったので、望月さんには大まかなプロットをお渡しして「とりあえず自由に描いてください!」と(笑)。望月さんは手で考える人だと感じたので「自由に」とオーダーしてもガシガシと描いていただけるだろうと思って。望月さんから上がって来たイラストを見て僕は「こう来たか…。ならば脚本では…」という形で物語を探っていきました。
望月:それぞれのキャラクターについて最初から細かな事が決まっていたわけではなく、まさに「自由に作ってください!」というオーダーでした。題材が題材なのにその上で自由にやって欲しいと言っていただき…。有り難い状況でもあり、すごいプレッシャーでもある中で挑ませていただきました。
五十嵐監督:サファイアのビジュアルに原作から変えるか否かは、今回の作品においては大きな岐路でしたね。
望月:歴史ある人気作品のキャラクターですから、そこはかなり悩みました。原作に忠実なサファイア案も最初の頃はありました。でも手塚先生の偉業は、色々なものに影響されながら常に新しいものを作り続けてきたところにある。手塚先生は「人間という存在は何なのか」を突き詰め、そこから派生して「命とは」「幸福とは」など様々な問いを描き続けてきた漫画家です。ならば私もそのスピリットにリスペクトを込めて、手塚先生が生み出したサファイアの良さを継承しながらも自分だからこその新しいサファイアを描こうと決めました。
「サファイアの帽子がなくなって、その代わりに」
-新生サファイア誕生秘話-
五十嵐監督:最初に上がって来たのは、変身後のサファイアの姿でした。原作にあるサファイアの帽子がなくなって、その代わりに大きなリボンが…驚きました。でもこれぞ本作の核になるものなのではないかと納得出来たんです。そこから「リボン」には一体何が象徴されているのだろうか?と考えながら脚本開発を進めました。漫画誕生当時のリボンは女性の「可愛らしさ」を象徴するものだったけれども、今の時代は「カッコイイ」という感覚もあるのではないかと捉えたりして。リボンに対する意味をアップデートしていったことで、リボンの物語という土台が出来上がりました。
望月:『リボンの騎士』のサファイアは女の心と男の心を同時に持っていること、それによって表紙には大きな帽子をかぶった男装が特徴ですが、私のデザインした変身後のサファイアの姿には「解放」をイメージしました。自分を解放した姿であるならば、このサファイアには男装の象徴である帽子を押し付ける必要はないのではないかと。『リボンの騎士』のサファイアの魅力は人間としての強さ、優しさ、芯の通った正義感にあるわけで、性別が何であろうがサファイアは、ただサファイアとして輝いている。それをリボンの方で表現しようと思いました。手塚先生は漫画の中で大きなリボンをアイコニックに描くことが多いので、今回の作品においてはリボンを大きく描いて、それ以外は引き算で省いていきました。


▲左・サファイア初期キャラクター原案、右・サファイアキャラクター原案
五十嵐監督:色彩案もいくつかありましたね。
望月:変身後のサファイアは本作を象徴する存在です。原作と同じ色にするべきか悩みましたが、騎士という事と私自身が引き算で絵を描くタイプなので、入り混じるよりは一色の方が良いだろうと。白か黒か、途中で黒案もありましたが、自分を解放する色のイメージで白をキーカラーに据えました。原作だとマントも象徴的なので黒色に裏地に赤を入れてシルエットの見栄えも活かしました。
五十嵐監督:サファイアのキーカラーが黒だったら、対になる存在のベルベットは白になっていた可能性もあったかもしれませんね。

▲サファイア・パイン・ベルベットキャラクター原案
「望月さんの描くキャラクターを動かすために」
-予想を超える新たな作品へ-
望月:私のキャラクターデザインは、比較的線の多い絵だと思います。アニメとして表現する上で大変ではありませんでしたか?
五十嵐監督:線が多い少ない以前に、望月さんの絵をアニメで再現するには特殊なスキルが要求されます。望月さんが描くキャラクターは、おでこが広かったり、腰の位置が高かったり、手足が長かったり。プロポーションのバランスやシルエットの美しさを優先したデザインです。立体的正しさではなく、絵としての気持ち良さのバランスとでも言うのでしょうか。その気持ち良さのバランスは角度によって変わってくるので、そこを理解しながら動かしていかないと望月さんの雰囲気は出せません。
望月:バトルシーンで赤いリボンが四方八方に飛び散る演出は視覚的に素晴らしかったです。

五十嵐監督:あれは望月さんのデザインからインスパイアされたものです。
望月:あんなにカッコいい表現が自分のデザイン発信だったとは…。私のデザインへのリスペクトを感じる画面作りが随所にあったので、完成版を拝見した時は本当に嬉しかったです。アニメーターさんたちに苦労させてしまったとは思いつつも、「自由に」という言葉を頂いたおかげで細かい事を気にせず、好きに自分のデザインが描けた事への満足感があります。私のアニメ人生のスタートが本作で良かったと思っています。
五十嵐監督:表現に制限を付けてしまうと望月さんにお願いした意味がないですから。今回の作品は収まる事を良しとしないというか、思いがけない形で外へ外へと広がっていけばと思っていたので、いつもの望月さんのセンスで大正解でした。手塚×望月という絵柄の違うクリエイターを掛け合わせた結果、予想を遥かに超える新しい作品になりました。これがどのように受け取られるのかドキドキではありますが…。
望月:配信後の反響に対して緊張はありますが、今の時代に作る意味のある作品になっていればいいなと祈っています。刺さる人には思い切り突き刺さる作品だと思うし、私はそのような作品こそ大好きです。そして新しいものを作ろうと全力を注ぐクリエイターが大好きです。『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』を愛してくれる人が1人でも多くいたら嬉しいです。
※記事全文(追加質問4つ含)
https://www.theribbonhero.com/special/detail.html?id=483
※対談動画URL(ツインエンジンYouTubeチャンネルで公開中)
https://www.youtube.com/@TWINENGINE
作品情報
■作品名
『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』
■イントロダクション
失われた王国の王女、サファイア。
災厄”ネルガル”に故郷シルバーランドのすべてを奪われ、絶望の果てにゴールドランドへとたどり着く。
過去を抱えながらも、人々の優しさに触れ、ささやかな希望を見出し始めた彼女。
しかし、平和な日常を嘲笑うかのように、再び災厄”ネルガル”が現れる。
かつて故郷を灰燼に帰した絶望が、今また、この場所から光を奪おうとしている。
もう、何も失わない。誰にも失わせない。
悲しみの涙を振り払い、少女は剣を取る。
これは、リボンを結び、運命に抗うことを決めた、一人のヒーローの物語。
■キャスト
サファイア:サーヤ(ラランド)
パイン:小林星蘭/ベルベット:内山昂輝/ジルコ:新谷真弓/教皇:壤 晴彦
ロック:細谷佳正/ヘケート:月ノ美兎/チョロギ:手塚祐介/チック:ルンルン/タック:でびでび・でびる
■スタッフ
監督:五十嵐祐貴/原案:手塚治虫『リボンの騎士』より/脚本協力:香村純子
キャラクター原案:望月けい/キャラクター原案協力:米山 舞
アニメーションキャラクターデザイン:新垣一成/アートディレクター:セドリック・エロール
ネルガルデザイン:okama/美術監督:野村正信/色彩設計:渡部夏美
CGディレクター:長嶺明音/撮影監督:福田 光/編集:植松淳一
音楽:神前 暁(MONACA) 高田龍一(MONACA)/音響監督:三好慶一郎/音響制作:東北新社
製作:ツインエンジン/制作:OUTLINE
■主題歌
「Reborn」 Girls Archives.
■各種URL
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