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「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」──共鳴は時空を超えて。

上野の東京都美術館では「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が開催中です。

世界的な評価と人気で誰もが知る画家ゴッホ、けれど名声を得たのはその死後のこと。
本展では、ゴッホ作品をいち早く評価し、世界最大のゴッホの個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレクションを中心に、ゴッホの初期から晩年までの画業を追っていきます。

  • アンリ・ファンタン=ラトゥール《静物(プリムローズ、洋梨、ザクロ)》1866年 クレラー=ミュラー美術館
  • ピエール=オーギュスト・ルノワール《カフェにて》1877年頃 クレラー=ミュラー美術
  • オディロン・ルドン《キュクロプス》1914年頃 クレラー=ミュラー美術館
  • ピート・モンドリアン《グリッドのあるコンポジション5:菱形、色彩のコンポジション》1919年 クレラー=ミュラー美術館

ヘレーネが芸術に目覚めたのは30代後半になってからのこと。
裕福な資産家の夫と4人の子ども、傍目には申し分のない人生を送っていたヘレーネですが、思索家で向学心旺盛な彼女の内面が満たされることはありませんでした。
そんな折、娘の美術教師ヘンク・ブレマーの講義を受けたヘレーネは、芸術によって呼び起こされる精神性に深く傾倒していきます。

作品の収集を始めた早い時期から、自らの心の支えとなった芸術を一般に公開し、後世にまで伝えていくというビジョンを持っていたヘレーネ。
この章では彼女が愛した芸術家たちのコレクションを通して、写実主義から印象派、新印象派、象徴主義、抽象主義までの近代絵画の流れをたどることができます。

  • フィンセント・ファン・ゴッホ《森のはずれ》1883年8–9月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《砂地の木の根》1882年4-5月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《籠に腰掛けて嘆く女》1883年2-3月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《白い帽子を被った女の顔》1884年11月–1885年5月 クレラー=ミュラー美術館

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品に高い精神性と人間性を感じ取ったヘレーネは、当時まだ評価の定まっていなかったゴッホ作品を熱心に収集。その動きは市場の注目を集め、ゴッホの価値を高めるきっかけとなりました。

このコーナーでは1908年にヘレーネが最初に手に入れたゴッホ作品《森のはずれ》をはじめ、27歳で画家として生きる決意をしたゴッホのオランダ時代の作品が並びます。
父と同じ聖職者の道を志すも早々に挫折し、親との確執があったゴッホ。ヘレーネもまた幼い頃より信仰心が厚く、それゆえ教会主義的な家庭の空気に反感を持っていました。
だからこそヘレーネはゴッホの作品に、宗教では得られなかった救いと慰めを見たのかもしれません。

1913年、ヘレーネは一般市民も入れる常設展示場を公開。まとまったゴッホ作品の展示などなかった時代に、人々が実際に作品を観て評価する場をつくりました。その後も「美術館の設立」というさらなる目標に向け、ヘレーネはいっそう注力していきます。

  • 展示風景
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《草地》1887年4-6月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《レストランの内部》1887年夏 クレラー=ミュラー美術館

ゴッホは32歳のとき、弟テオの暮らすパリに移り住みました。印象派や浮世絵などの新しい表現に触れ、若き芸術家たちと交流を持つことで、彼の作風は大きく変化していきます。

色調はぐっと明るくなり、さまざまな技法を実験的に取り入れることで、新たなスタイルを模索していったゴッホ。《レストランの内部》は新印象派の点描技法を試みたことがよくわかる作品です。

  • 展示風景
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《黄色い家(通り)》1888年9月 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《サント=マリー=ド=ラ=メールの海景》1888年6月 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)

本展では特別出品として、世界最大のゴッホ・コレクションを持つアムステルダムのファン・ゴッホ美術館から貸し出された油彩画4点も展示されています。

経済面でも精神面でも全力でゴッホを支え続けた弟テオ。しかし兄の死から半年後、後を追うようにテオも亡くなってしまいます。
コレクションを引き継いだのは、テオの妻ヨーと息子フィンセント。ヨーは相続した作品を管理するとともに、展覧会への作品貸出しや書簡集の出版など、ゴッホの芸術を広める偉大な大使として献身しました。

ファン・ゴッホ家とヘレーネの間に交流はなかったものの、両者はともに素晴らしいゴッホ・コレクションを築き上げ、継承し続けています。

  • フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888年6月17-28日頃 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《レモンの籠と瓶》1888年5月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《夕暮れの刈り込まれた柳》1888年3月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《サント=マリー=ド=ラ=メールの眺め》1888年6月1-3日 クレラー=ミュラー美術館

パリで約2年を過ごした後、ゴッホは明るい陽光を求め南仏アルルに移りました。
この地で芸術家の共同体を築くことを夢見た彼は、精力的に創作活動を続け、独自の表現を確立させていきます。

アルルでゴッホが熱心に取り組んだのが、空の青と太陽の黄色の組み合わせ。
強烈な補色の対比に挑んだ《種まく人》は、自然の恵みと農民の営みに、まばゆい生命のサイクルを感じる作品。
《レモンの籠と瓶》では同系色の中で無限の変化を生み出すべく、様々なニュアンスの黄色を試しています。

  • フィンセント・ファン・ゴッホ《サン=レミの療養院の庭》1889年5月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《麦束のある月の出の風景》1889年7月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《悲しむ老人(「永遠の門にて」)》1890年5月 クレラー=ミュラー美術館
  • フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲くマロニエの木》1890年5月22–23日 クレラー=ミュラー美術館

〈黄色い家〉での仲間との共同生活という夢に破れたゴッホは、精神のバランスを崩しサン=レミの療養院に入院。症状は一進一退しながらも、平穏なときには再び制作に励みました。

目の前の事実を観察に基づいて描くというこれまでのスタイルにこだわることなく、記憶と想像力で描くことにも挑戦したゴッホ。《麦束のある月の出の風景》もそうして生まれた作品のひとつです。
《悲しむ老人(「永遠の門にて」)》は、先日新たにゴッホのものと認められニュースとなった「《疲れ果てて》の習作」と同構図の版画をもとに制作されました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のプロヴァンスの田舎道》1890年5月12-15日頃 クレラー=ミュラー美術館

サン=レミで最も重要なモティーフとなったのが〈糸杉〉。
今回16年ぶりの来日を果たした《夜のプロヴァンスの田舎道》は、南仏滞在の最後の数日に制作されたもので、〈糸杉〉シリーズの傑作といわれています。

前年に描かれた《糸杉》に比べると渦を巻くような筆触は抑えられながらも、作品全体から巻き起こる大きなうねりは飲み込まれそうなほど。緑の色調は黒に近いものから鮮やかなエメラルドグリーンまで、よりいっそう豊かに重ねられています。
死の象徴とも解釈される糸杉ですが、この作品から私が感じるのは生死も超越したような、渦巻く深淵なエネルギー。ゴッホにはこの世界がどんなふうに見えていたのでしょう──。

フローリス・フェルステル《ヘレーネ・クレラー=ミュラーの肖像》1910年 クレラー=ミュラー美術館

第一次世界大戦と世界恐慌、会社の破産による資金難などの困難を乗り越え、1938年、オランダ・オッテルローの森の中にクレラー=ミュラー美術館が開館。ヘレーネは初代館長に就任します。
開館を見届けた翌年、ヘレーネは70歳で永眠。埋葬の前夜、ヘレーネの棺はゴッホの作品の前に置かれました。
ゴッホの作品が死後高く評価されたように、ヘレーネのコレクションが世間に評価されたのもその死後のことでした。

「100年後を生きる人々の心にも残る作品を残したい」と情熱を燃やしたゴッホと、「100年後に文化的モニュメントとなる美術館を残す」ために情熱を注いだヘレーネ。
生前には出会うことのなかったふたりの魂が響きあい、その波動は時空を超えて、今ここにいる私たちをも震わせる──そのことに驚きと喜びを覚えずにはいられません。

……

音声ガイドには、本展アンバサダーの浜辺美波さんと音声ガイドナビゲーターの鈴木拡樹さんによる詳しい解説と、大橋トリオさんによる本展テーマ曲もボーナストラックとして一部収録。
もちろんオリジナルグッズも充実のラインナップです。(青山デカーボ「ゴッホ缶」の可愛さよ♡)
深まる芸術の秋、ゴッホに会えるこの貴重な機会を、皆さまどうぞお見逃しなく!!

【 展覧会情報 】
ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
会期:開催中~2021.12.12(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
開室時間:9:30~17:30(最終入室17:00)
休室日:月曜日(ただし11月8日、22日、29日は開室)
問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
※本展は日時指定予約制です。詳細は展覧会公式サイト(https://gogh-2021.jp)をご覧ください。
※福岡市美術館(2021年12月23日(木) ~ 2022年2月13日(日))、名古屋市美術館(2022年2月23日(水・祝) ~ 4月10日(日))に巡回予定。

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