新緑が気持ちのいい季節!森の中の美術館で、森林浴とアート鑑賞を楽しむ休日はいかがでしょう。
「箱根の自然と美術の共生」がコンセプトのポーラ美術館では、開館20周年記念展「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」が開催中。館内外のあらゆる場所が展示空間となる、過去最大規模の超大型企画展です!

主要なテーマは「光」。印象派を筆頭に、光にまつわる作品を数多く収蔵するポーラ美術館。近年収集に力を入れている現代美術でも、光は重要な要素です。
第1部ではポーラ創業家・二代目の鈴木常司氏が戦後約40年かけて収集した従来のコレクションと、それを拡充するべく新収蔵した作品とを組み合わせて紹介。
第2部はほとんどが従来のコレクションにはない近代と現代を結ぶ作家たちの作品で、ポーラ美術館の新たな方向性を示す展示となっています。
まずは第1部、ポーラ美術館の看板娘・ルノワール《レースの帽子の少女》がお出迎え。バラエティ豊かな「女性像」が響き合うコレクションは、化粧品を扱うポーラのイメージとも重なります。
新収蔵のベルト・モリゾ《ベランダにて》は、いかにもポーラ美術館♡な光あふれる作品。近年再評価の高まる女性画家については今後も積極的に収集していくそうで、どんな作品が加わっていくのか楽しみです。
同じセーヌ河の「水辺の風景」を描いたモネ《セーヌ河の日没、冬》とシカゴ出身の女性画家ジョアン・ミッチェル《無題(ヴェトゥイユのセーヌ河の眺め)》も、こうしてみると不思議な共鳴を感じて。
新収蔵の《オリーブの木のある散歩道》は、マティスが「フォーヴ」と呼ばれる独自の表現を見出す転換期の作品です。
ほかにもセザンヌやピカソをはじめとする静物画など、ポーラ美術館が誇る名画がずらり。
大正期の洋画では村山槐多や関根正二、そしてもう一人の看板娘ともいえる、岸田劉生が麗子を描いた作品3つが並ぶコーナーも。モデルとして徐々にこなれていく麗子の微笑よ・・!
里見勝蔵と佐伯祐三、レオナール・フジタ、松本俊介、坂本繁二郎の作品も見どころです。
続いて第2部、ポーラ美術館の新しいコレクションの展開を見ていきます。
戦後復興期に独自の表現を獲得していった難波田龍起、山田正亮、猪熊弦一郎らを紹介する「戦後日本の抽象」。
「物質性の探求」ではジャン・デュビュッフェ、斎藤義重のほか、白髪一雄のアクションペインティング、中西夏之の洗濯バサミを用いた作品など、物質感を追求した作家たちに迫ります。
そしてハイライトは、従来コレクションの代表=モネ《睡蓮の池》と新収蔵した現代美術の代表=リヒター《抽象絵画(649-2)》が並ぶ「色彩と抽象」の展示室です。
現代最高峰の画家とも称されるゲルハルト・リヒターは、何層にも重なる絵具のレイヤーで「シャイン」(ドイツ語で「光」)を表現し続けているアーティスト。こうして2つの作品を引き合わせてみると、リヒターの抽象画に、木々の茂みの向こうに仄かな光をたたえた水面が見えてくるような・・!
別の部屋ではリヒターのフォト・ペインティング作品と、室内画の画家として知られるデンマークのヴィルヘルム・ハマスホイの作品を展示する「絵画と窓、そして光」も。ハマスホイとリヒターの作品に通底する、仄かな光が差し込む静謐な世界を感じることができます。
地下まで自然光が入る広々とした吹き抜けでは、巨大なネオン管を用いたケリス・ウィン・エヴァンスによる光の彫刻が建物空間と呼応しつつ存在感を放ちます。
ロビー階のアトリウムギャラリーに並ぶのは、今年90歳にして国際的評価が年々増している現代美術家・三島喜美代の作品です。
休憩したあとはぜひ、館外にひろがる森の遊歩道へ!鳥のさえずり、葉っぱが風にそよぐ音。やわらかい光の中、ちょっとだけマスクをとって深呼吸・・。
幻想的に響くスーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーション、周囲の自然を映し出しながら光を宿すロニ・ホーンのガラスの彫刻。森の静寂に溶け込んだ作品にうっとり。
いつ訪れても、何度訪れても、素晴らしい空間に心が潤うポーラ美術館。現代美術を収蔵する新たな施設の計画も進んでいるそうで、今後も期待しかありません。
パワースポットでありヒーリングスポットでもある箱根。自然とアートで感性を刺激する、豊かな時間をぜひ!
【 展覧会情報 】
ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に
会場:ポーラ美術館 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
会期:2022年4月9日(土)〜9月6日(火) 会期中無休
開館時間:9:00~17:00 ※最終入館は16:30
※最新情報は公式サイトでご確認ください。