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『アクトレス~女たちの舞台~』で向き合う、過ぎた年月。

20年前『マローヤの蛇』の主演シグリット役で一気にスターダムへと駆け上ったマリア(ジュリエット・ビノシュ)に、舞台のリメイク版のオファーがくる。しかし依頼されたのはかつて演じた20歳のシグリットではなく、若く魅力的なヒロインに翻弄される40歳のヘレナ役だ。シグリット役にはハリウッドで活躍中のお騒がせ女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)が決まっているという。不服ながらもヘレナ役を引き受けたマリアだが―――。

 

 

大女優としての確固たる地位を築きながらも、自分の老いを受け入れられずにいるマリア。自分は今でも40歳のヘレナより20歳のシグリット役の方がふさわしいとすら思っている。でももちろん、全盛期から長い年月が過ぎたことは誰の目にも明らかだ。昔自分を口説いてきた男優も、誘うそぶりは見せたものの結局連絡はこないまま(相手ももういい歳だから、酔っぱらって寝ちゃったんだとは思うけど・・・)。自分の知らない有名人の名前が出ると、ウィキペディアで経歴を調べるよりも、まずは画像検索。マリアの容姿に対する執着が見て取れる。そんな彼女の内なる不安定さは、マネージャーであるヴァレンティン(クリステン・ スチュワート)を時に苛立たせる。

 

何度も繰り返される、マリアがヴァレンティンを相手にセリフの練習をするシーンでは、私たちが見ているのは劇中のマリアなのか、それとも劇中劇のヘレナなのか、はたまたジュリエット・ビノシュ自身なのか、次第にわからなくなってくる。対するヴァレンティンのほうも、シグリットのセリフを読んでいるだけなのか、彼女自身の言葉なのか、こんがらがってくる。その緊迫した台詞劇が絶妙!

セルフパロディや劇中劇は今年アカデミー賞4冠を獲得した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でも重要な要素でしたが、男と女では苦悩や葛藤の表れかたが全く違っていて、それもまた興味深いところ。テイストは全く違う映画ですが、そんな視点で比べてみるのも面白いかもしれません。

 

男でも女でも、過去の栄光にすがり、世代交代の時期がきているということをいつまでも認めようとしない人っていますよね。若い頃はそんなご年配の方々を見て「ああはなるまい!」と思ったものだけれど。気づけば自分もこっち側。いろいろと気をつけたいものです・・・。

若さの特権―――向こう見ずな奔放さ、浅はかな自信、無垢ゆえの残酷さ―――は、まぶしく見えるもの。でもそれは若いからこそ許される、まさに「特権」。歳とともに手放していってこそ、次のステージに立てるのでしょう。

ラストシーンのマリアの凛とした表情。何を諦め、その代わりに何を手にしたのか。覚悟を決めて新たな女優人生をスタートさせた彼女が演じるヘレナを、観てみたかったなあ。

 

原題の「シルス・マリア」はスイスの山岳リゾート地にある村の名前で、初秋の早朝に発生する、山の谷間を這うように進む雲のことを「マローヤの蛇」と呼ぶそう。スクリーンに映し出される壮大なアルプスの景観も見どころのひとつ。特に、大好きなヘンデルの「ラルゴ」が流れる中での大自然のシーンは素晴らしかった!

 

そしてもうひとつ、ヴァレンティンの「深刻な映画だけが真実を描くわけじゃない」という言葉も印象深かったです。映画だって本だって人だって、本当にそうだなあと思って。

 

 

10代の頃の私にとって特別な女優だった、ジュリエット・ビノシュ。人生で最も衝撃を受けた映画のひとつである『汚れた血』のビノシュの愛くるしさといったら(だって撮ってるのは当時の恋人レオス・カラックスだし)! 久しぶりに映画館で観た彼女はすっかりおばちゃん体型で、あの頃私が憧れた輝きはもうないけれど。でもやっぱり、素敵な女優さんだなあと改めて。今の私には、50歳を過ぎた今のビノシュの魅力のほうが、ぐっとくる。 

 

豪華三大女優の華麗なる競演を、皆さんもぜひ映画館で!

 

中林直美
FROM中林直美 渋谷の映画館でもぎりをしつつミニシアターブームに傾倒した学生時代。大学卒業後は大手映画会社で約10年勤務。映画と旅が好き。 https://www.instagram.com/naomi_nm_/
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