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NEWSの加藤シゲアキさんの文章が上手すぎてビックリ!|大久保佳代子のあけすけ書評

俯瞰力のある描写、端整な構成力ある極上の旅エッセイで おうち時間に想像の翼を授けてくれます

読み終わった感想は「上手い! 心地いい! 旅行へ行きたい!」。ジャニーズの方々とは、バラエティ番組などで共演することが多々あります。その度に、彼らが単に歌って踊れるイケメンではなくて、多才なエンターティナーだということは重々承知していたつもりだったのですが。このエッセイ、想定外の面白さ。

今まではエッセイと言うと女性著者の作品ばかりを選び、女性ならではの意地悪な切り口に「わかるわかる」と共感できるものが好きだったのですが、男性でしかも若い著者のエッセイでここまで楽しめるとは。旅のエッセイでは、高校時代から憧れたキューバや、ジェフリー・バワの建築に興味を持ち、訪れたスリランカ、パリやNY、自分のルーツがある岡山など様々ですが、その土地特有の空気感や生活感、匂いまでもが感じとれるような描写の連続で、その地に降り立ったような感覚となりワクワクします。

著者の顔を知っているから想像もしやすくて。著者が日差しの強いキューバにて、ラムをストレートで呷りつつ、ヘミングウェイの『日はまた昇る』を読んでいる姿なんて素敵すぎませんか。エッセイでありながら小説のような世界観も見事で、『岡山』では、登場人物の心情を想像すると泣けてきます。そして、どのエッセイもラストの結びがこれまた秀逸。下手したら鼻につくキザな言い回しなのに、不思議とサラッとカッコよくて。キザなんだけど言葉自体が軽くないんです。「手を離して捨て去るなんて出来ないことばかりなのだから、だったら手を取ってしっかり引き連れていこうぜ」とか心に響きまくりです。

加藤さん、当たり前ですが顔だけじゃないんです。『浄土』という章で父親のような存在であるジャニー喜多川さんの話が出てきます。「どうして僕を選んだの?」の問いに「顔」と即答されたエピソード。このことで「自分には顔しかない」というコンプレックスを持ち続け、トップアイドルになっても自信が持てず、自分の武器を見つけだそうと悩んでもがき続けて。結果、その葛藤がこんなに深イイエッセイが書ける作家を生み出したのですが。イケメンであることを消費する、させられるアイドルという仕事だからこそ自分の価値に焦り、居場所の不確かさの不安ゆえに必死で生きて書き続けたからこそ生まれた作品。

あと、エッセイの間に挟まれた3編の短編小説もいいです。私が、アメリカの小説家で唯一ハマったレイモンド・カーヴァーの作品を思い出しました。泥臭いけどカッコ良いみたいな。世の中の状況が落ち着き海外へ行けるようになったら、まずはスリランカを訪れたいです。ココナッツとスパイスの香るその国でバワのホテルのバルコニーから猿と出会えたら最高です。

『できることならスティードで』 加藤シゲアキ 朝日新聞出版 ¥1,300 「ベストエッセイ2018」に収録された『岡山』を含むエッセイ15編と書き下ろし短編小説などが編まれた加藤シゲアキ初のエッセイ集。ちなみにタイトルにある「スティード」はHONDAのバイクの名前。

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おおくぼかよこ/ ’71年、愛知県生まれ。千葉大学文学部文学科卒。’92年、幼なじみの光浦靖子と大学のお笑いサークルでコンビ「オアシズ」を結成。現在は「ゴゴスマ」 (TBS系)をはじめ、数多くのバラエティ番組、情報番組などで活躍中。女性の本音や赤裸々トークで、女性たちから絶大な支持を得ている。

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取材・文/柏崎恵理 ※情報は2020年8月号掲載時のものです

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