だいぶジェンダー平等が進んできた現代、でも、今「セレブな専業主婦」に憧れる娘もいるとか。これからの時代を生き抜いてもらうためにどう伝えていくべきか、「女性学」のパイオニア・上野千鶴子さんに子供たちからの質問に答えていただきました。
◯ 上野千鶴子さん
1948年富山県生まれ。社会学者。京都大学大学院修了、東京大学名誉教授。東大退職後、現在、NPOウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長として活動中。女性学、ジェンダー研究の第一人者。
2019年東大入学式での祝辞が大きな話題に。ベストセラー『おひとりさまの老後』や『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。
<娘たちの言葉 >
◇ 「女らしい」はバカらしい 「女装」は楽しんで
――高校生の娘さんたちの中には、「女らしい」は褒め言葉としてうれしいと感じる人もいるようですが、どう思いますか?
〔上野さん〕
「女らしい」と言われて喜ぶのはちょっと待った。「いい女」とは「オレサマにつごうのいい女」の別名。つつましくでしゃばらず、一生ナンバー2に甘んじます、という宣言みたいなもの。
「女らしく夫や家族のために料理するのが好き」といっても、それが毎日の義務になったらどう? そのために何かを犠牲にしたり、損をしているかも。毎日一定の時間に子どもにご飯を食べさせるために仕事を続けられなかったり、昇進をあきらめなければならないってことが起きてるんじゃないかしら。
――では逆に、損をしたり、犠牲に思ってないのであればいいということですか?
損や犠牲をしなければいいけど、今の日本はそうなっていない。
――損や犠牲にしない範囲で楽しむならいいですか?
〔上野さん〕
義務じゃなく楽しみでやる家事や育児は女も男も楽しんでやったらいいと思う。
――STORYではキーワードで「女らしい」「女性らしい服」というコーディネートをします。そんな服を楽しむ人たちはどう思いますか?
〔上野さん〕
女子学生がゆるふわルックで大学へ来るときには「今日はデート?」「合コン?」と聞くと、ほぼ当たりました。男目線でひかえめに見えるのが「女性らしい服」。自己主張する服や個性的な服装ではありません。好きな恰好をできないのは不自由です。
でも不自由な服装でも「女装」として楽しんだらいいのでは。私も時々「女装」します(笑)。 私の場合、〝最強の女装〟は「和服」。がんじがらめに紐で縛りあげて、なんて不自由でイヤな服装だろうと思うけど、実は和装好きなんですよ。和服の時は、みんなに「今日は女装で来ました!」って、周りの反応も楽しむの。伝統衣装だし、一応みんな褒めてくれるし(笑)。「素敵ですね」って言われたら、「首から下がね」って返します(笑)。
――この場所にこの「女装」で行こうと思うことはありますか?
〔上野さん〕
昔はおじさんがたくさんいる場所に、フリルのついた服を着て行って、それであえてエグイことを言うとか、見かけと言ってることのギャップを大きくするパフォーマンスをやってた(笑)。
撮影/吉澤健太 取材/東 理恵 ※情報は2021年8月号掲載時のものです。