今年度の中学入試も今週末をもって、その大半が終了します。6年生のお母様方、本当にお疲れ様でした。
東京・神奈川入試は2月1日から午前・午後という具合に受験日程が組まれますが、複数回受験が可能な学校では2月5日または6日を最終日とする学校が多いです。
後半日程(最近は短期決戦と言われておりまして、2月3日までに受験を終了させるご家庭が多くなっております)に受験するということは、逆に言えば、苦しい戦いを強いられているということの裏返しでもあるので、長期戦に突入されたご家庭の胸中、察するに余りあります。
昨年の話ですが、近年、人気が急上昇している、ある学校の先生がこんなことを教えてくれました。
私学の先生方の多くが、何度も学校に出向いてくれるご家庭や複数回受験をする子どもの名前と顔を把握しているとおっしゃいます。できることならば、学校を本当に愛してくれている家庭に門戸を開きたいと願ってらっしゃる先生ばかりです。ただ、中学受験はその日の高得点順に合否が決定する、極めてシンプルでフェアな入試。「愛する気持ち」順に扉が開くといいんですが、入試は時に残酷ですよね・・・。
その先生は、続けて、こうおっしゃいました。
先生方も、希望する子には全員、合格証書をあげたいという気持ちで一杯です。お子さんと共に戦い抜いた母であれば、尚更でしょう。でも、望んでいたことと正反対の結果が出た時に、それを我が子と自分のために、どう考えていくことができるかによっても、これからの道が違ってきます。
そういう意味でも「子どもは自立する時が来る。それが【今】」と言い切ったお母様のの発言はアッパレです。
中学受験は母をも成長させてくれるものなので、そこも含めて、例えどんな結果であろうとすごくいいもの。親は子が生まれてからの12年間で、子が生きるに必要な力を家庭で付けていないといけませんが、中学受験を体験した子は間違いなく、社会で生きていけるだけの基礎の体力と知力を身に付けています。個人的には結果が伴わない経験は間違いなく人を大きくさせると思っています。
しかし、これを母が考えられるようになるのは、もっと先。今すぐ、急に気持ちを切り替えるなんて高等テクは必要ないです。今年も激戦となった学校が多いので、想定外の事態に放心状態になられているご家庭の方が多いでしょう。
親子で、ひとつの目標に向かって共に歩んできた日々がありますので、その“夢”が破れてしまった直後では、何も考えられないことの方がむしろ普通。受験を終了したばかりの母たち、どうか、ひとりきりの時には「母として明るく!」とか「どんな時も笑顔で!」と自分の気持ちに蓋をしないであげてください。
母が「精一杯やったのだから、これで良かった」と自らの心に折り合いを付けられるようになるには意外と長い“時間薬”の服用が必要。そうでなくとも、受験期間中は「笑顔作り」を頑張ったんですから!今は、無理矢理、笑顔を作らなくていいですからね。ちょっとずつ、ちょっとずつですが、必ず「明るい未来」を感じる日が来ますから、今しばらくはボーっとしていることの方をむしろお勧めします。
どのみち、どう頑張っても子育ては残り6年しかありません。18歳はもう大人ですから。ボーっとすることにも飽きた頃、子どもの自立に向けて何が必要かを頭の隅で考えながら、残り6年となった子育てをどう楽しもうかとシフトできるようになりますから、期待していてください。
すべての中学受験6年生母の皆さん、お疲れ様でした。
もう少し経ったら、春の式典に備えるべく、ファッションチェックをしていきましょうね。
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香