あわせて読みたい
専門家が教える、介護する若者「ヤングケアラー」とは
細尾 ちあきさん(47歳・東京都在住) NPO法人ぷるすあるは所属
絵本を通して子どもたちに
病気の正しい知識と生きる術を伝えたい。
大人へのアプローチも必要
病気の正しい知識と生きる術を伝えたい。
大人へのアプローチも必要
「落ち着かない家で育ったので、自立したい気持ちが強かったのかもしれない」と、高校卒業後に看護師を目指した細尾ちあきさん。多忙な精神科病棟での勤務経験を経て、地域の診療所で働き始めたとき、初めて患者さんを支える家族の存在に気付いたといいます。「親御さんが心配でついてくるお子さんや、一人でお留守番が難しいお子さんがたくさんいることに驚きました。でもよく考えれば家族がいるのは当然のことで、私自身も同じような幼少期を送っていたことを思い出しました」。子どもたちが来やすいよう、細尾さんが待合室に駄菓子や漫画を置くようになると自然と交流も生まれ、「ちあき」と呼び捨てされるほど頼られる存在に。 一緒に100均ショップへ赤白帽を買いに行くことや、家に行き、片付けやご飯の炊き方を教えることもありました。
その後、精神保健センターで行われた依存症の親を持つプログラムの一環で、同僚の精神科医と紙芝居を作ったことがきっかけで、絵本や情報コンテンツを通して子どもたちを応援する「NPO法人ぷるすあるは」を設立。「絵本どころか絵を描くのも初めてでしたが、当時家族の心の病気を子どもに伝える日本オリジナルの絵本がなかったので“ないなら作ろう”が大きな原動力になりました」と振り返ります。病
気の正しい知識と同じくらい細尾さんが伝えたい「夢や未来を諦めないで」という想いは、近著『生きる冒険地図』 に詰め込みました。「周りに頼れる大人がいない子どもたちに、ちょっとワクワクした気持ちを届けられたらいいなと思っています」。
近年「ヤングケアラー」という名前がつき注目が集まる一方で、ひと括りにされてしまうことに懸念もあります。「当たり前のこととしてやっている子や、ヤングケアラーと呼ばれたくない子、知られたくない子は支援から抜け落ちてしまうのではないかと心配です。また、子どもが相談できる窓口を開設している市町村もありますが、子どもから直接SOSを出すのは実際難しい。まずは大人へのアプローチが大事かなと思うんです。例えば子どもがケアをしていることがわかった時点で、親御さんと話すことができれば気付くことがあり、変わるかもしれません」。当 者以外の大人ができることとしては“変わらない声掛け”を細尾さんは提案します。「いつも気にかけてくれる大人の存在は、どれだけ心強いかわかりません。『こんにちは』たったひと言の変わらない声掛けが、子どもの安心感に繫がると思うんです」。
撮影/BOCO 取材/篠原亜由美 ※情報は2022年3月号掲載時のものです。