第9回は、個性の違う兄弟の子育ての難しさに悩む読者さんのお悩みについてお伺いしました。
尾木ママ’sAnswer
「頭ではわかっているけれど、できない」そこがこの悩みの注目すべきところです。
本来はそれぞれの資質を見極めてきょうだいでも違う対応をすべきだとわかっているけれど、現実的にはなかなか難しいということで悩まれる方も多いですよね。でも、このお母さんのようにそのことに気づき、ご自分でそれを自覚されているというのはステキなことだと思います。
一般的な傾向として、上の子というのは何でも真面目に取り組み、大きな問題も起こさず手もかからない、いわゆる“いい子”が多く、進む道も、地道で安定的な職に就くタイプが多いとされています。
これは親にとっての第一子であることが大きく影響しているからです。親も初めての子育てで、一生懸命に無我夢中で、とても手をかけて育てます。
第二子以降は手を抜くということではないけれど、下の子ばかりに目をかけるわけにはいかなくなって、さらに第三子となってくると、一番上の子が下の子のお世話をしたりするという関係性も出てきます。つまり親の目が分散される分、いい意味で過干渉ではない環境で育つことになるのです。
きょうだいでも下の子の方が親のコントロール下におけず、反抗的だったり、予想外の行動に出たりする子が多いというのもそれが関係しているのでしょう。
実は親が干渉をしすぎない中で育ったことにより、自主性や自立心が育ち、将来的に思いも寄らない成功を遂げる人は下の子に多いんですよ。おもしろいですよね。
親はよく「きょうだいで同じように子育てしているのに育ち方が違う」と言います。教師をしていた時にもそのような悩みをよく相談されましたが、本当にそうかしら。先ほども述べましたが、初めての子でその子だけを見て、目をかけ手をかけて育てた第一子と、育児を経験し、上の子を育てながらの第二子の育児は違って当然です。きょうだいでも育っていく環境は随分違ってくるので、親としては同じように育てているつもりでも、現実的には同じ育て方になってはいないのです。大前提として、そのことを親も自覚しておく必要があるように思います。
このお悩みのご質問である「兄弟それぞれの個性を生かすために親として意識すべきこと」に対する提案として以下の2つのポイントを意識してみてください。
まず1つ目のポイントは
【比較はしても優劣をつけない】
きょうだいというのはどうしても比較されてしまいます。このお母さんも「比べるつもりはない」と言いながらも、実際は比べてしまっているのです。比較すること自体は悪いことだとは思いません。でも、気をつけなければならないのは、競争的な評価観で比較をしないということです。成績表の点数や、運動の順位のような数字だけを見て優劣をつけて比較することで子どもは「自分は兄より劣っている」という劣等感やコンプレックスが生まれ、自己肯定感の低い子になってしまいます。比べるのであれば、それぞれの優れている特徴点で比較をしてあげてください。「お兄ちゃんは運動がすごいけど、あなたは工作がとても上手ね。」とそれぞれの素敵なところを“比較”し、親がきょうだいを一緒ではなく「個」として尊重してあげることが大切です。またきょうだいがいる前で褒める時には結果だけを褒めるのではなく、プロセスやそれに向かう姿勢を褒めてあげる。そしてお兄ちゃんを褒めたら弟も褒めるということも意識してみるといいと思います。
2つ目のポイントは
【好きなことをやらせてあげる】
きょうだいで習い事が同じ方が、親として物理的にも経済的にも都合が良いこともあります。もちろん兄弟ともにサッカーが好きで、お兄ちゃんと同じことがしたいというのであればそれでいいのですが、実はそうではないということもあります。音楽が好きで楽器が思いがけず上手にできたり、レゴで何かを作っているときは何時間も集中できたり。その子が夢中になれることを見つけてあげてください。好きなことを続ければ続けるほど感性が研ぎ澄まされ、能力が高まります。それが才能になり、特性となるのです。子どもの好きなことを大事にする教育方針であれば、自ずときょうだいの育て方も違ってくるのではないでしょうか。
お母さんの中にはご自身がひとりっ子だったり、姉妹だったから男兄弟といのがどういうものかわからないから悩んでしまうという方も多いかと思います。兄弟がいるってこういう面白いことやトラブルが起きるんだなと気負わず楽しむ感覚でいいと思いますよ。上の2つのポイントを意識しながら、きょうだいでもそれぞれを「個」として見つめるということを大切にしてあげてください。
取材/小仲志帆