――小池さんが演じるのは、ドラァグクイーンのローラと出会い、工場再建のためにドラァグクイーン用のブーツを作ろうと思い立つチャーリー。初演時から役にぴったりハマっていた印象があります。
僕もです(笑)。チャーリーは、ほぼ出ずっぱりだし、舞台袖にはけたと思ったら一瞬で衣裳チェンジをしたりして、結構スタミナと技術が要る役なんです。その分、やりがいを感じますし、何より僕が「チャーリーは自分に向いている役だな」と思ったのは、演じていると「みんな、ローラを見て!」という気持ちになるんですよ。もちろん、ストーリーを進めていく主人公はチャーリーだし、人間ドラマの部分も見て欲しいんですけど、この作品で、お客さんにいちばん楽しんでもらえるのは、何といってもローラのパフォーマンスだと僕は思っていて。「ローラ、最高だったよね」って言われることが、最高に嬉しい作品なんです。
――さすが、座長。チャーリーとローラの友情をどう捉えていますか?
育った環境や生き方は違いますが、チャーリーもローラも父親との関係で葛藤した過去があります。そんな二人だからこそ、心を通わせて、わかり合えた瞬間、お互いに“見た目もキャラも全然違うんだけど、心の蓋を開けたら同じ形をしていた”みたいな繋がりを感じて、一緒にブーツを作っていこう!と思えたんでしょうね。それを表現した1幕後半のナンバーが、僕は本当に好きで。心が温かくなって広がっていくような感覚があります。
――小池さんご自身は、出会いによって運命が大きく変わった経験はありますか?
人ではなくて、言葉だったらあります。僕がこの業界に入ったきっかけは、うちの母親の一言だったりするので。高校1年生の時に、たまたま新聞で「大阪で映画のオーディションがあります。履歴書も要りません」みたいな広告を見つけた母親に、「あんたこれ、行ってきたら」といわれたんです。それで何となく、家から近いホールだし、行ってみようと思って。その人生初のオーディションには最終選考で落ちてしまったんですけど、その時に、夢を持って頑張る人達にとてつもない刺激をもらって、この業界に興味を持つようになりました。今思うと、昔から映画とか、アニメや漫画が好きだったので、母親の言葉に導かれたようなところもあるかもしれないです。
――現在、36歳。40代に向けて、どんなイメージをお持ちですか?
まだ何年かありますけど、家庭を持ったという大きな変化もあって、30代がめちゃくちゃ楽しかったんですね。なので40代に対しては、30代で作ったベースに、どんなスパイスをかけて最高の料理にしていこうかな、みたいなイメージがあります。この仕事が大好きで、今までずっと仕事人間で生きてきましたけど、ちゃんと休みも取って、子ども達ともたくさん遊びたいです。あっという間に大きくなってしまうので(笑)。