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Lifestyle私たちのチャレンジSTORY

「近くに介護をしている人がいたら、一言かけたり、話を聞くだけでも救われます」

高齢化に伴って介護を必要とする人の数は急速に増え、家族介護者数は、2001年の470万人から、2016年には 699万人に増加しています。そこで、介護にあたるうえでの心構えや、上手に負担を軽減する方法を体験者の方に語っていただきました。

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田中亜紀子さん(59歳・神奈川県在住) フリーライター

プロに頼りながら、
できることの範囲で精一杯やる。
自分なりの発散の仕方を
持っておくことも大事です

86歳になる認知症の父親を介護する田中亜紀子さん。「父は7割がピック病、3割がアルツハイマーの症状です。近時記憶の混乱、決まった時間に決まった行動をしないと落ち着かない、怒りっぽくなるなどの症状が見られます」。

最初に苦労したことは、車の運転をやめてもらうことでした。道を忘れていたり、車の傷が増え、万が一のことがあってはと説得を試みるも、全く受け入れず言い争いに。また、転倒して大きな傷を負い、垂れた皮膚を自分で何とかしようとしてハサミで整え、額の骨がむき出しになるほどの大怪我をしたこともありました。

現在は看護小規模多機能型居宅介護と契約。「決まった時間に決まった場所に通うことが、父親のピック病の症状とあっているようです。私の外出の際は、家に見回りに来てくれるのも助かっています」。

それでも困ったことをした時に言うことを聞いてくれなかったり、今までできたことが急にできなくなると、落ち込んでしまうそう。「切羽詰まる前に、何人かの友人に話を聞いてもらいます。1人に全部を聞いてもらうのは荷が重いかなって」。

また、日々の感情や出来事を書き出すことで気持ちが整理されるといいます。「誰かに見せるためではなくても、自分の今の気持ちを書き出すことですっきりします。私の場合は、何か事件があっても、“あ、これは記事のネタにしよう”と思うようになりました」。

また、自分の介護方針や考えと似ている医師や、細かく話ができるケアマネさんを探すことも介護の負担を減らすコツと田中さん。「介護の日々は細かい悩み、悲しみ、情けなさなどが積もってきます。都度共有できる家族がいればいいけれど、現実的には難しい。また、追いつめられるほど、助けを求める気力はなくなっていく。だから家族にしても友人にしても、近くに介護をしている人がいたら、一言声をかけたり、話を聞くだけでもこちら側は救われるんです」。

  • 滑り止め付きの靴下に変更したところ、自宅での転倒がなくなりました
  • スムージーで野菜を摂取。
  • これさえ飲んでいれば、栄養の心配をしなくてもいいと思えて気分が楽に。
  • 著書『お父さんは認知症 父と娘の事件簿』では、診断されるまでの格闘や、介護の苦労話をコミカルに綴っている。「原稿を書くことで気持ちが整理されて、気力が回復しました」。

母親は既に他界し、認知症の父親と猫と暮らす田中さん。多忙な日々の合間に、友人との会話やフィギュアスケート観戦が息抜き。

<編集後記>書き出して発散!どんな状況でも使えるかも 〝できることが増えていく〟子育てとは逆で、認知症の介護は〝できないことが増えていく〟という話が印象的でした。そのため、お互いが生活しやすいように日々試行錯誤の繰り返しだとか。コロナ禍で様々なストレスを抱えている昨今。田中さん流発散方法の〝書くこと〟は、介護に限らずどんな悩みでもすぐに実践できますね。(ライター・星 花絵)

撮影/BOCO 取材/星 花絵 ※情報は2022年10月号掲載時のものです。

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