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Lifestyle特集

中村倫也さん「俳優をやめたほうがいいんじゃないかと思ったこともあります」【インタビュー後編】

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中村倫也さん「しんどくて面白い。それが、この仕事の豊かさ」

――今回ミュージカルに出演されますが、中村さんは、普段から音楽をよく聴くほうですか?

運転したり、家事をしてる時は、だいたいラジオか音楽をかけてます。学生時代もずーっと音楽は聴いてたし、考えてみたら、小学校時代はお小遣いを貰うとCDを買っていたんですよ。その当時から結構音楽が好きだったんだなって思いますね。大人になってから気付いたことなんですけど、僕、昔聴いた曲の歌詞をすごく覚えているんですよ。小さい頃から、詞の世界や物語にフォーカスして音楽ってものに触れてた子だったんだなぁと思って。ジャンルはわりと何でも聴くほうで、今は懐メロを聴くことが多いです。たとえば、井上陽水さんとか、忌野清志郎さんの歌とか。何十年も前の曲なのに、歌詞の世界観にもサウンドにも全然古さを感じないなんて、本当にすげーなって思いますね。

――実在した偉大な作曲家を演じる面白さや難しさを、どうお感じですか?

そこは全然気にしてません。僕がやるベートーベンは、僕のフィルターが掛かった、僕がやるベートーベンでしかないですから。略歴とか彼が書いた遺書のことをネットでさらっと調べたり、今は博物館になっている生家をGoogleマップで見たりはしましたけど、あとはよく知らないっす(笑)。だって、今生きている誰もベートーベンに会ったことはないわけだし、過去の偉人というのはだいたいデフォルメされて伝わっているじゃないですか。漫画の実写版をやる時もそうなんですけど、僕はいつも台本をもとに掘り下げていくことしかしないです。あれこれ調べて寄せていくより、ここで集まったメンツでいいものを作った方がいいじゃんと思うので。

――確かにそうですよね。今現在、台本からどんなベートーベンを感じていますか?

たぶん彼は、自分の思う自分を体現できなかったり、超えられないでいることが何より気に障っていて、それがこの人のいちばんのストレスなんでしょうね。そこのジレンマとか業みたいなものを、すごく感じます。あと、今日の稽古では「この人、子どもじみた部分があるな」と感じました。ずば抜けた才能があるうえに、小さい頃から親父にほとんど虐待みたいな音楽教育を受けて育った彼には、常人とは共有できない感覚があって、いわゆる“普通の人”ではない、というのが大事な要素としてある気がします。そういう“圧倒的な何か”を持った人なんだろうなと。

――表現者として、彼が抱える葛藤や鬱屈した思いに共感する部分はあったりしますか?

才能、文化、時代……何もかも自分とは違う存在なので、イコールで噛み合うものは僕の中にはないです。でも、稽古初日の台本の読み合わせで、初めてセリフを声に出して喋った時、彼のしんどさが自分の中の何かと結びついたんだなっていう実感があって、「ちゃんとしんどいな」って感じたんです。彼に比べればすごくささやかなものでしょうけど、僕の人生経験の中にも絶望や挫折はあるので、そういうものを一生懸命拡大して結びつけていけば、彼の熱量に近づいていけるんじゃないかなと、何となく感じています。

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